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第2話 前途多難

それにしても、貫いたゴブリン共の灰化が進み始めてきたな。魔石しかないから焼くのも有りだが……草原でそんなことをしたら、火事になる可能性があるからやっぱ無しだな。てか、現地の人とやっと会話できたけど、この名前の付き方ってLECと同じなら…


「フィン? ということは、あなた貴族の」

「はい。私は一応、貴族の娘です。三女ですけど」

「…彼ら二人も、もしかして……」

「彼らも貴族ですよ。私と同じ継承権の無い三男ですけど」

「…継承権がないとはいえ、何で冒険者みたいなことを?」

「みたいじゃなくて、冒険者です! 一貴族として、領民を守れるぐらいの力が無いといけないから、冒険者として修業を兼ねた資金稼ぎをしてるんです!」


…意識が高いな! 俺より年下だよな? この世界の貴族ってこんなに立派なのか?

それにしても、ゴブリンの数が多いとはいえ…


「何で、アンガーボムを使ったんだ?」

「アンガーボム? 何ですかそれ?」


……は?今、この子は……今何て言ったんだ!?

自分たちが死ぬかもしれない危機的状況の中で、あのアイテムの効果も知らずに使ったのか!? 無謀を通り越して……


「さっき使った攻撃用アイテムだ! 知らないのか!!」

「ひぅ!? ご…ごめんなさい」

「おい! 助けてもらったのには感謝してるけど、そんなに怒ることないだろ! ゴブリン共にダメージを与えたのは、リースのアイテムなんだぞ!」

「待ってください。僕たちと違い、この人はアイテムの名称まで知っています。もしかしたら、効果も知っていて怒っているのかもしれません」

「そこもあるが! 命がかかっている場面で、知らないアイテムを使うのは危険だろ! 命が惜しくないのか!!」


この世界…ゲーム時代でもこんなバカな奴ら少なかったぞ!?

LECだとダメージによるものが現実に近いように作られている。そのおかげで慎重な奴の方が多いぐらいだったし。LECだと出血多量のバッドステータスや、それこそ怪我が元で感染症や病気が起こるから、出来るだけ長く戦闘するために、常にうちのギルドだと最低最悪を想定して、回復アイテムと攻撃アイテムを揃えていたし。それを考えたら、自分たちが所持しているアイテムの効果を調べるのは当たり前だぞ? もしかして、製作アイテムじゃなくて、購入したものなのか? それなら、正確な効果が分からない…?詐欺に引っ掛かたのか?いや、彼らが分からなくても、鑑定スキルの高い人に頼めばいい話だし……やっぱり準備不足? それとも、ゲームの時でも痛みを無視する特攻プレイヤーがいたけど……でもシャイーラの話だと、復活系統の加護は無くなっているはずだぞ? やっぱり理解不能だ。


「仕方ないだろ!? 俺たちが受けたギルドからの依頼は、あくまで偵察だったんだ! それも、多少ゴブリンより上のミドルゴブリンが一匹いたって目撃情報だったんだ。ギルドだって、俺たちのランクなら問題ないと判断したんだぞ!」

「ミドル? あそこにいたのはミドルよりワンランク上のホブですよ?」

「な!? 嘘だろ! ギルドの情報と違うじゃねえか!?」


こいつら…鑑定鍛えてないのか! 鑑定を使えば敵の名前ぐらいは最低でもわかるだろ。

鑑定スキルを使えば、アイテムの詳細なデータや、視認した生物のステータスの確認は、スキルレベル次第で出来るのはこっちに来てから確認したぞ?


「……どおりで僕たちの攻撃が効きづらい訳です。僕たちが相手していたのは、ゴブリンではなくミドル。そして、ミドルだと思っていたのはホブという事ですか」

「…マルク。これって、まずいのかな? ホブがいるってことは」


まずい? ああ…そういえば、ゴブリンが進化すると軍団を作り始める傾向がある。それを警戒してるのか? 現実(ここ)でも変わらないんだとしても……


「問題はありませんよ。あのホブは進化が近かったからこそ、ここまでの大きさの軍団を作れたのですし」

「何でそのようなことが分かるんですか?」

「ゴブリンの軍団の長になる個体には、額に変な文様が浮かぶんですよ。あのホブそうでしたが、そいつも倒したから問題ありません」

「……良かった」

「良くないですよ。さっきのアイテムの件といい、今回の依頼に対する楽観的な姿勢といい。これじゃごっこ遊びと言われても仕方ありません。そのうち死にますよ?」


本当に死にかねない…油断して事前準備を怠った奴ほど早く死ぬからな。

アイテムの情報不足、事前情報の調査不足、パーティー構成の問題…てか、探知系のスキル所持者がいないパーティーなんて……


「…さっきのアイテムって、まずいものなんですか?」

「さっきのアイテムはアンガーボムと言って、主にダメージとノックバック…吹っ飛ばす力は強いのです。しかし、攻撃した敵の攻撃力をアイテム内の火の魔力で上げてしまい、冷静な思考ができない状態にする。使った状態であのまま逃げれば、奴らは町に多くの兵隊がいようとも関係なく町に突っ込んでいましたよ。普通のゴブリンならともかく、今回はホブ筆頭のミドルゴブの群れでしたからね。より危険だと思いますよ?」

「…そんなアイテムだったの!?」

「マジかよ…」

「驚きですね…しかし、使用用途が理解できた気がします。少なくとも、僕たちよりベテランの方が使えば良いものだったんですね」


ちょっとの情報で気付くあたり、このメガネの少年…マルク君?は頭がいいな。

彼の言うとおり、あのアイテムは、ルーキーよりも少し上達し始めたプレイヤーにとっては有効的な使い道がある。まあ、失敗する馬鹿もいるけど。


「どういうことだよ?」

「良いですか? 僕の推測ですが、先ほどのアイテムは、対象の冷静な判断力を奪う事が出来ます。例え相手が逃げようとしていても…です。つまり、相手の逃走しようとする行動も潰せる可能性が考えられます。まあ、森の中で利用したら、火事になるので使えないと思いますが」


……ちょっと惜しい。ほぼ正解だが、鑑定を鍛えてないせいか、あの爆発を勘違いしている所がある。少し訂正すれば、彼のような頭のいい子なら、より良い運用方法に気付くだろう。


「まあ、相手も傷つけ過ぎたら効果に関係なく逃げますがね。生存本能の方が勝りますから。ついでに言えば、このアイテムは火属性ではないから、森内で爆発させても木に引火したりしないのもメリットですね」

「…なるほど…しかし、聞いたところによると魔具関係のアイテムですよね?」

「ん? そうですが?」

「あ? おかしくねえか、それ!?」

「何がおかしいんですか?」

「リースがこのアイテムを作れたことがですよ」

「……珍しくないでしょう? 魔具職人の低レベルの者でも作れるアイテムですよ?」


ついでに言えば、このアイテム以外にも属性付与型の攻撃アイテムなら簡単に魔具職人…マジックアイテム専門の生産職の奴なら簡単に作れる。あれは、自身の魔力と素材内の魔力を混ぜ合わせて作るものだからな。


「彼女は、特殊職に当たる者なんですよ」

「……なるほど…疑問は分かりますが…作れますよ?」

「え? そうなんですか!?」

「特殊職って『錬金術師』ですね、リースさん」

「…はい…そうですけど」


何で暗いんだ、この子?

特殊職とは、LECにおける大前提…戦闘職と生産職を二つ同時に取れるという枠組みから外れる、例外の一つだ。その特性故に最初は誰も錬金術師の有用性に気付かなかったんだよな。


「錬金術師は、自身のレベルと技量に見合わないアイテムでも、極まれに作れることがあります」

「そうなんですか…驚きです」

「ただし、品質は最低ランクなのでスキルを上げて作れるようにした方がいいですけどね」

「でも…可能性があれば、治療系のアイテムも作れるってことですよね!?」

「作れますよ。ただし、難易度が高ければ高いほどより出来る可能性は低くなります」

「…頑張って錬金術のスキルレベルをあげてみます! 色々買い揃えたいから、早く帰ってギルドで今回のクエストの報酬もらわないと!」

「落ち着きましょう、リースさん。まあ、今回のクエスト内容はゴブリンの状況確認であった以上、僕達は報酬をもらう事はできますね。その報酬については大丈夫だと思います。……どうでしょう、アルト殿。アルト殿が討伐したゴブリンの報酬の証である魔石の回収を手伝いますので、町まで一緒に来てくれませんか? あいにく、逃走中に回復用のポーションを全部使い切ってしまったので、ここから先に魔物やモンスターに出くわすとまずいのです」


……彼らのレベルなら仕方ないか? まあ、ゴブリンの軍団に襲われて望みを捨てずに生き残ったんだからこれ以上の小言は言うとへこみそうだし…何よりこの子達がやる気を出してるなら、それを応援したいしな。


「構いませんよ? 私も町に行きたかったからちょうどいいですしね」

「こんだけ強い人が一緒なら心強いな!」

「ジョン、私もそう思うけどちょっと図々しすぎる?…そういえば、アルトさんは冒険者なのですか?」

「私? ……どちらかと言えば、生産職よりの戦闘が出来る研究者? かな?」

「え? そんなに強いのに生産職よりなのですか?」

「自分で研究したりするのにいちいち他人にお願いするのも面倒ですからね。自分で取りに行った方がどこの部位が絶対必要かもわかるから都合がいいので」

「……なるほど、ある程度のレベルの高い戦闘職の方々は、より高みを目指す為に自身の生産職を鍛えるそうですから…アルト殿もそのようにして強くなったんですね」


てか、LECのゲーム時代は戦闘職と生産職のレベルを同時進行で上げるのが当たり前だったんだが、2000年後では違うのか? いや、スキル内容に違いがないし。シャイーラからもそんなことを言われなかった。これは、この時代の育成方法の間違いの可能性が高いな。


「まあね…ところで君たちの中で転移の術を使える子は…?いないですね」

「転移!? あれは上級ランクの魔法系冒険者の方々クラスでなければ使えませんよ!?」


…こいつら、転移術の話を聞いたら顔を背けたぞ? マジか? LECでは、転移術が込められたアイテム何て、魔具職人もしくはゲーム時代のNPC…ノンプレイヤーキャラクターのショップでは常備されてるものだぞ? まあ、一つのギルドが買占めして他のプレイヤーに回らなくなったな。そういえばあのギルド多くのプレイヤーに叩かれたよな。あの事件を切っ掛けに、プレイヤー側でも作る方法を模索した結果、低レベルの魔法職や魔具職人でも、イベントこなすだけで簡単に作成出来るようになったのに…本当にシャイーラの言う通り、一度文明が滅んだことによる衰退がひどいな。


「出来ないなら仕方ない。それでは誰か町の風景…そうですね、門から少しだけ離れたあたりをイメージしてください。あと方角も教えてください」

「町の風景ですか? それに何で方角を?」

「良いから。早く」

「……わかりました」


俺はとりあえず、持っている杖をエルドールさんの頭の上にかざして解析のスキルと魔法の両方を発動することにした。この魔法は、鑑定のように既知のものを見てその情報を引き出すのではなく。未知の情報を引き出すことに特化させたものだ。ただし、自身の能力以下の対象にしか効果が無く。TPもしくはMPのどちらかを大幅に消耗するから、それ専門の解析班か装飾品を持っていることが前提だ。大ギルドの場合は、装飾品よりも解析班を結成するが、俺の所属するギルドのように人数が少なければ、アイテムを作るしか方法が無い。

といっても、相手の能力が自身との差が大きければ大きいほど、消耗は少なくなるから、今回のMP消費はほぼほぼ無いと言っても過言じゃないけどな。

さて、エルドールさんの町のイメージ、やっと読み取れたけど……案外デカいな! これは、大都市…程じゃないにしても、規模はかなりのもんじゃないのか? この子たちが貴族である以上、この子たちの親の街だと思うんだが…まあ、今はどうでもいいか。


「問題ないな。じゃあ飛ぶぞ」

「え? 飛ぶって…?」

次元門(ゲート)起動!」


俺は術を形成して、その陣の中に俺とエルドールさんたち3人を入るようにした。

こうして俺たち四人は街まで転移した。


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