044
千里から戻って俺はいろいろ考えて木材の加工機械を作る事にした。
付近に木材加工所があったので加工機を借りてきた。もちろん借用書を置いてきたよ。
まずはレールの上を電動のこぎりが動くタイプだ。
全部分解してからミスリルでコピーして組立する。
駆動部は2ヶ所か、洗濯機の回転機構で置き換え可能だな。
ちょっと駆動部が大きくなったが動くぞ。
ダンジョンの木で試したが動きは問題無いな。
次は幅を揃える機械だ。
同じ様に分解、置き換え、組立で構造を理解する。
これは駆動が1ヶ所で場所も下にあり駆動部の置き換えは簡単だ。
最後は厚みを揃える機械だ。
これも1か所、すぐに終わる。
さて、ダンジョンで木を切っても運べないよな、どうするか・・・
1階層に木のフロアを作れば人力でも可能かな。新しいダンジョンを出して設定する。
とりあえず3人組を呼んで使い方を教えるかな。今年の仕事にしよう。
大工だけあって木の扱いは上手だ。
刃物はミスリルなので木では研ぐ必要もないだろう。
「必要ならダンジョンから切出して使って。」
「分かりました。」
午後からは部屋で次に作る物を考える。
何が必要かな。今は思いつかない。食べ物は食べたい物があるけどな。
食堂に行けばカシャカシャと機織りの音が聞こえる。
5台の機織り機は全部使ってる。叶井さんが暇そうだ。
「家の裏に製材機を出したので、叶井さんも木材加工、手伝って下さいね。」
嬉しそうに走っていった。何か欲しい物があるのだろうか。
「勅使瓦さん、お見合いの話は進んでますか?」
坂野奈々美ちゃんだ、一番積極的だな。
「あれ?山守さんから話は無いの?」
「まだ裾野から返事が無いそうです。」
「そうか、隊長さんは千里で一緒だったから、進んでないかもしれないね。」
「そうなんですか!期待してるのに。」
ダンジョンで訓練をしている山守さんのところに行ってみる。
ファイヤーイーグル6羽と2人が戦っている。
戦いが終わり入口に戻ってくる。人数が少ないから1回ごとに入口は、いい判断だ。
「お疲れ様。」
「勅使瓦さん、どうかしましたか?」
山守さんにお見合いの事を聞いてみる。
「ここでの生活希望なので、隊員との調整が進んでないようです。」
「そう、ここで生活したいのか・・・」
「裾野も男性が多いので、不安もあるのでしょうね。」
そうか、山守さんも考える事が多いな。
総理に言えば対応してくれそうだけど、隊長も勝手に人員を動かされるとこまるよな。
「指名の入っている2名ですが、隊の戦力を考えると厳しいかと。」
「指名?」
「舘下と幡垣を希望している方が2名居ますよ。」
あの2人か・・・でも舘下君と幡垣君は貴重な戦力だよな。
「もう少し待ってもらおうか・・・」
「お願いします。訓練に戻ります。」
3人は中に入っていった。
食堂で確認してみる。
「裾野に移るならお見合いも早くなりそうだけど、どうする?」
「ここではダメですか?」坂野さん
「いや、ダメではないけど。」
「ここ以外に行くならお見合いはいいです。」
「分かった、もう一度話してみるからもう少し待っててね。
中西ちゃんと田川ちゃん、希望してる2名が難しいらしい。」
「どうしてですか?私、嫌われてますか?」中西ちゃん
「あの2人は隊員の中でも期待されている人なので、ここでの生活は厳しいって事だよ。」
「週末婚でもいいですよ。」
そこまでか、山守さんに伝えよう。
「山守さんと相談するからね。」
「私が直接山守さんと話をします!」
「私も!」
中西ちゃんと田川ちゃんが言う。
「それと”ちゃん”は止めて下さい。流石に20超えてるので。他の若い人と一緒にされると・・・」
「・・・そうだっけ?そんな年だったか。これからは注意するから。」
「そんな年って・・・」
機織りの傍らでそんな会話をしていた。
「ミシンもあると便利なのだけど。」
響子さんだ。
「そうね、ミシンは欲しいわね。」
友梨佳さんが相槌を打つ。
若い娘達も頷いているな。そうだよな、皆同じ服だからな。
俺がユニークで借りて?きた洋服しかない。
3人がダンジョンから出てくる。
ダンジョン娘が近寄っていく。
「明日から私達も訓練に加えて下さい!」重田さん
「お願いします」
全員で頭を下げる。
3人は俺を見る。
「風魔法は使えるから、訓練に加えて下さい。」沢田さん
3人は俺を見る。俺は嫌だ、嫌な予感しかしないからね。
「私達の訓練が終わってないの、ごめんなさいね。」山守さん
「レベルはいくつを目指しているのですか?」江頭さん
「そうね、100は超えておきたいわね。」多門さん
「ブラックベアは120だから150よ!」真畑さん
男4人組は唖然としている。だから目標だって。
全員で俺を見るな。俺は嫌だ。首を横に振る。
「さあさあ、食事よ。」
のぶえさんの一言で食事が始まる。
食事当番は4班に分かれて分担しているが、奥様方は常駐している感じだ。
翌日はミシンを探しに行き、家電量販店でミシンの機構を確認する。
最近のミシンは機構が複雑だったので止めた。
その後、骨とう品店やリサイクル店を廻り足踏み式ミシンを探した。
一軒目のリサイクル店にあったので、分解して確認すると部品点数も少ないし、面倒な機構もなくシンプルだ。
これに決めて部屋に戻る。
金属部品は魔鋼だと錆びるからミスリルだな、あとはベルト、蜘蛛の糸を使って作る。
足踏みの回転機構は魔法の回転機構に変更しよう、回転数はレバー式だ。
よし、完成!
送り量と針の動きは別々に制御できないが、縫い合わせるだけなら大丈夫だろう。
食堂に行ってミシンを出す。
「ありがとう、これで洋服が縫えるわ。」
響子さんが喜んでくれる。
「装備もこれで作れるのですか?」
倉田さんが聞いてくるが、
「装備は錬金術で作ってるからね。」
熊皮を出して
「これは針で縫うことは無理かな。」
剣できろうとするが切れない。ミノタウルスの角だからね。
そんな残念そうな顔をしないでくれ。
ドラゴンの角を針にして刺してみるが魔力を通さないと無理だった。熊皮強いな。
やっと諦めてくれた。
「何を作りたかったの?」
「自分の装備を作ってみたかったのよ。」倉田さん
「それなら蜘蛛の糸も結構強いよ。普通の鋏だと切れないから。」
機織り機に向かって行き糸を引っ張る、それでは切れないよ。
「魔法耐性と攻撃耐性が中だから、結構な強さだよ。」
「えっ!そんなに強い糸なのですか?」
昼食に戻っていた山守さんが驚いている。出来上がった少しの布を触って、
「装備の下に着る肌着を作って下さい、お願いします。」
土下座しそうな勢いだ。
「どうしたのよ、急に。」
響子さんが問いかける。
「これを触って下さい。この皮、肌に悪いですよ!」多門さん
皆で熊皮に触る。
「下には何も着ないの?」
響子さんの素朴な疑問だ。
「下に着ていると黒くなって、使えなくなるんです!」真畑さん
「勅使瓦さんはどうしてるの?」山守さん
「俺は気にしないから、そのままだよ。
最近は装備を着てないから、忘れていたよ。」
「魔法耐性と攻撃耐性があるなら、擦れて穴あきが減ります!」多門さん
「下は直接だから、すぐに穴があいて捨てる事になるんですよ・・・お気に入りも無くなりました・・・」真畑さん
3人は言いたい事を言ってダンジョンに去っていった。嵐だな。
次は4人組だ。
「製材する場所をお願いします。」
トシ君が頭を下げる。そうか、家の裏に置いただけだったな。
しかし、材木の出し入れを考えると、壁で囲う事はできないな。
「作るけど、食堂のような建物にはならないよ、壁があると長い木材の出し入れできないし。」
「少しでも風が防げればいいです。寒くて・・・」
了解、早々に作ろう。
大きさは食堂と同じでいいだろう。長手の一面を開放して作っていく。
本当は君たちが作るんだよ、その為の製材機械だからね。
やはり4人の考えは甘いな・・・
下層で漆黒樹を使い素材の加工と組み立てを行う。
2時間で簡単に作り、外に設置して終わり。
窓は無いよ。開放型だから。
「「「「ありがとうございます。」」」」
「お前ら、自分で建てろよ!大工だろうが!」
叶井さんが怒ってる。俺も同じだよ。
「材料から切出して、自分達の好きなように作れば経験にもなったのにな!」
そう言って叶井さんは食堂に戻っていった。
中に機材を移し、レールを50mに伸ばしておく。
「何を作るか、皆に相談してきなよ。」
作る物が決まっていなかったな。
「春になったら倉庫にある花を植えたいのでプランターがいいわね。」
光希子さんが提案する。
「花を植えるなた私もプランターが欲しいです。」
長谷法子ちゃんが嬉しそうだ。
土は固めてあるので植えられないからね。ごめんよ。
ちょっと物足りなそうだが、4人はどうやって作るか話を始める。
「ちゃんと水抜きとか考えて作れよ。」
叶井さんの言葉だ。彼らは四角に作って終わりだっただろうな。
4人は製材所に向かった。
俺は収納から残っている種をだしておく。
池のオイカワも生きてるな。産卵したのか、分からないが当分はこのままだな。
敷地内を見回り、ある事を思い出す。
汚物層だ。
余裕はあるが溜まっていた。深く掘って正解だったな。
俺は加熱を見守る。水がジュージュー音をたてて蒸発する。
残った汚物も炭となっていた。仕上げに火魔法で灰を更に加熱する。
よし、終了だ。中は臭かったが、今は匂いもなくなり清潔だな。
醤油工房、味噌工房、製材所と建物も増えたな。
家も独身用5棟、世帯用が20棟か、敷地の余裕はあるから工房も増やせる。
そういえば大工道具はどうなってるのだろうか?
製材所に行って聞いてみた。
「道具はどうしてるの?」
「ここに持ち込んだ道具があるので問題ないですよ。」
「そう、壊れる前に一度貸してくれるかな?コピーしておきたいから。」
「今でもいいですよ、道具は複数持ってるので。」
俺はカンナやノミ、鋸といった道具を借りて漆黒樹とミスリルで作っていく。
できあがった道具の具合を確認してもらうと
「よく切れますね。今までより軽いし、助かります。ありがとうございます。」
トシ君が嬉しそうに道具を使いながら言ってくる。
「叶井さんの道具はあるの?」
「部屋に置いてあると思いますよ。」
カズナリ君だ。後でミスリルにするか確認してみよう。
俺は彼らの作業を ボーっと見ていた。
上手だな。鋸で切って寸法が合うなんて信じられない。
暗くなってきたので声をかけて食堂に向かう。
食事の時間前に暗くなる季節だな。雪が降る時期だ。
そういえば牛と鶏、どうするか。一度探しに行ってみるか。
食事前に3人がダンジョンから戻ってきた。
「お疲れ様、鳥はどう? 攻略できた?」
「2対6は本日終わりました。」
「そう、よかったよ、次はどうするの?」
「1対6で訓練予定です。」
「その後は俺が考えておくね。そろそろ次のレベル目指さないとね。」
「「「・・・」」」
そんな表情、子どもに見せるのはダメだぞ、もっと嬉しそうにしないと。
今の畑ダンジョン、多いwダンジョンだが、下層は使っていないな。
25階層から下を初期状態にすればゴーレムからだったな。うん、そうしよう。
まだ、内緒にしておこう。
「プランターは作れそうなの?」
節美さんの問いに
「まだ始めたなかりなので、何とも言えないですね・・・」
トシ君が答える。
「判らない事があったら聞きに来いよ。」叶井さん
「ありがとうございます。」トシ君
「ここをお花で飾れたら素敵よね。」
米沢さんが楽しそうに言う。
3人、その目、ギラついた目はダメだって言われただろう。
「くーさんは何していたの?」
チーちゃんが俺をくーさんと呼んだ、人前だは初めてだ。
「今日は製材所を作ったり、汚物層の掃除したり、だったよ。」
「「「「汚物層?」」」」
「そう、汚物層、知らなかった?ここの排水溝は一か所に集めて焼却するんだよ。」
あれ、話してなかったか? そうか3家族は知ってるけど、後から来た人は知らないか。
「街の排水システムを使っていると思ってました。」有國さん
「私もですよ。」鈴木典和さん
「魔法で焼却ですか?」古湊さん
「そうですよ、魔法だと10分で終わります。加熱消毒もできるので便利ですよ。」
「くーさんって・・・仲基さんはくーさんって呼んでるんですか!?」沢田さん
「そうよ、最近だけどね。」
「お付き合いしているんだから当然よね。」優香子さん
ダンジョン娘8名は絶句している。言ってないからな。
「そうだよ、付き合っているからね。」
俺が一応、宣言みたいな事を言っておく。
隊員3名は渋い顔してるな。
夜はチーちゃんと共に過ごしていた。
ダンジョン娘8人は1軒の家で話をしていた。
「やっぱ付き合ってましたね。」重田さん
「そうね、でもチャンスはあるわ。」井本さん
「あの3人には負けられないわよ。」坂東さん
「当たり前よ、おばさんには負けないわ!」松木さん
「そうよね、若さなら負けないわ。」高沢さん
3名の隊員達は
「とうとう宣言したわね。」山守さん
「そうね、でも想定内よ、遅かれ早かれ周囲へは知れ渡るのだから。」多門さん
「妊娠してからが勝負よ。誰が見染められるか、全員か1人か・・・」真畑さん
「・・・ガッ・・山里地区、聞こえますか。・・ガッガガッ・・山里地区、聞こえていたら応答して下さい・・」
無線から声が聞こえてきた。
俺は
「チーちゃん、皆の前で宣言しちゃったね。」
「ふふっそうね、宣言したね。嫌だった?」
「いや、嬉しかったよ、くーさんて呼んでくれてさ。」
「よかった、いや「ドンドンドン!!勅使瓦さん!」」
ドアを叩く、山守さんの声だ。
「どうしたの?」
俺はドアを開けて尋ねる。
「隊長以下、16名の隊員と連絡が取れなくなりました。
" 隊は杉島の拠点に向かい今朝出立したのですが、定時連絡の時間になっても応答がありま
せん。"
今晩は途中の分屯地で野営予定でした。
可能であれば捜索に協力をお願いしたいのですが、可能でしょうか。」
「可能も何も行くに決まってるでしょ。
装備を整えて装甲車に行くから、待っていて。」
「了解しました。」
俺は装備に着替えていく。
「チーちゃん、ちょっと行ってくるよ。」
「気をつけてね。」
俺は3人が待つ装甲車まで行く。
「装甲車に乗って!そのまま飛ばすから!」
3人が乗り込むのを確認して空刃を装甲車の下に入れ浮かび上がらせる。
そのまま飛んで千里に向かった。




