043
元旦の食堂は16時まで閉店になった。
各家庭にパンとおにぎり、カップラーメンが渡され、女性陣の休養だ。
俺はダンジョンで設備作りをしていた。北関東の拠点作りも大切だからね。
午後に外にでると暇な人は食堂にいた、独身達だ。
「勅使瓦さん、お年玉ってどうしますか?」コウ君
おっと忘れていたよ、お年玉・・・
「どうしようか・・・お金あるけど使えないしね。」俺
「現金にしませんか。将来、使えるかもしれないし。」山守さん
「そうだね、将来には使えるようにしたいって事で現金でいこう。」
「ポチ袋ありますか?かわいいやつ。」多門さん
「倉庫は?」
「かわいくなかったです。」真畑さん
「あそこ以外無いな。・・・集めた時期が悪かったよ。」
「でも無いよりマシですよ。取ってきますね。」昌君
「まって!中学生以下は7人だけど、全員が全員に渡す?」真畑さん
「俺と昌で渡します、去年もそうだったから。」コウ君
「こっちは3名でいくわ。勅使瓦さんは1人ですけど、お願いします。」山守さん
「了解。」
「行きます!」昌君
金額なんかも示し合わせて解散する。
部屋に戻らずダンジョンで家をコピーする。
簡単な家だったな、あの時は忙しかったから今なら窓も付けるだろうな。
だけど、付けない。他と違うと面倒事になるからな。内装は自分達でやってもらおう。
高級魔鋼の釘と金槌を増やせば内装も手を入れられる。
ミスリルでも釘と金槌を作り、漆黒樹に打込んでみる。入った!
俺は釘を大量にコピーした。1軒に500本だから、400万本でいいか。
金槌は500個くらいかな、使いまわしてもらおう。
その頃、3名の家では
「今年が勝負よ!」多門さん
「いえ、1月が勝負よ。」山守さん
「もうすぐで30でしたね。」真畑さん
「29!29!29よ、間違わないで!」山守さん
「そ、そうでしたね、すいません。」真畑さん
「勅使瓦さんはどう考えたのかな?」多門さん
「何も言ってこないって事は決まっていないと思うわ。」山守さん
「そうですね、決まれば伝えてくれますよね。」真畑さん
「果報は寝て待てとはよく言ったものね。」山守さん
「何ですかそれ?古くないですか?」真畑さん
「古くない!」山守さん
「そこは年の功よ、言わないの。」多門さん
「くっ!子供に格言の一つも教えられないと母親にはなれないわよ!」山守さん
「「!!」」
家と合わせて作り終わり食堂に向かう。
「16時まで閉店だけど、食事はもっと後よ。」友梨佳さん
俺は子供たちにお年玉を配って歩く。
「おじさん、ありがとう。」
皆の笑顔が大人はお年玉だな。
「今日は酒はないのか?」
叶井さんが言うので空いてるスペースに全部だしてみる。
「これが全てですよ。どうします?飲みますか?」
缶ビールが100本程度、日本酒は一升瓶で16本だ。
「日本酒は調理に使うからダメよ。」
真希絵さんが言うと奥様方が運んでいってしまった。
「今日は止めておくか・・・」
悲しそうに叶井さんが言うが、酒作り、頼んだよ。
今日はお節料理とマグロの刺身、天ぷらだ。
白米とパン、お餅は自由選択だ。
俺は白米とお節料理でお腹を満たして早めに食堂を後にした。
夜はチーちゃんと過ごす。
「チーちゃん、子ども作ろうよ。」
「んん~あの娘達に弟か妹かぁ~・・・」
「悩んでるの?」
「何も言わずに避けていたのに、急にどうしたのかなって。何か悩んでる?
この間からくーさんへんだよ?」
「悩んでないけど・・・」
「教えてくれないならダメ!今日は戻るね。」
家に戻ってしまった・・・勘がいいな、俺が下手なだけか。
1月2日、今日も16時まで閉店だ。
暇だけど作る物もない。食堂で本でも読むか。誰も居ないな。皆、部屋でまったりか・・・
この本は世界遺産の紹介か、今なら誰も居ないからゆっくり見れるかな?
おっ!製糸場が近いな。
そういえば機織り機を使ってないな。10台分コピーしてあったな。車庫で組み立ててみよう。
1台分の機織り機を出して組み立てを始める。マニュアルがあるので簡単だ。あとは使い方か。
使い方のマニュアルは無いので食堂で本を探すが見つからない。
外まで探しに行くか、本屋を探して見て回るが無いな・・・
車庫で試行錯誤していると鈴木さんが来た。
「今度は何を作っているのですか?」
「機織り機ですよ、洋服も在庫が無くなれば終わりですからね。」
「機織りですか、ここに糸を通して、これには糸を巻いて使うと思うのですが。」
「使った事があるのですか?」
「旅行に行った時に家内が体験していたのを見ただけですがね。家内に聞いてみましょうか?」
「お願いします。」
しばらくして真希絵さんと戻ってきた。
「あら、機織り機ね、ここの糸はこっちだったわよ。糸はあるの?」
「糸はこれです。蜘蛛の糸、魔物ですけどね。」
「絹より良い物みたいね。今年は機織りね。4班に分けてつくるわ。」
「ちょっと待ってよ。僕たちの仕事も残してよ。」
鈴木さんが慌てている。
「機織りは昔から女性の仕事よ。」
「そんな・・・男の分は男が作るからね。」
「いいわよ、裁縫もやってくれるのね。」
「ごめん、手伝わせて。」
「初めからそう言いなさいよ。一緒にやりましょうね。」
「糸巻きとかも必要かな?」
やっと俺が会話に入れた。
「必要だけど、少し動かしてからがいいわね。具合を見ないと分からないし。」
「了解です。」
「ところでチーちゃんと3人の話はどうなったの?」
俺はチーちゃんとの話を説明した。
「そう、私がチーちゃんと話をしてもいいかしら。
説得をするような事はしないわ、3人の考えを話すだけよ。」
「・・・お願いします。」
真希絵さんがチーちゃんの家に行く。
鈴木さんと2人で機織り機を見ていると有國さんが来た。
「機織り機ですか、珍しいですね。」
「ええ、魔物が現れる前に購入しておいたのですよ。」
「いつ頃から用意していたのですか?」
「3月くらいですかね。ダンジョンが出る前からです。」
「そうですか、何台あるのですか?」
「今は10台ですが増やせますよ。」
「旦那方で機織りしませんか?」
「いや、先程まで家内がいたのですが、女の仕事だと言って取られました。」
鈴木さんが返すと
「手伝いはできますよね?」
「そういう事にしました。」
「そうだ、染料をダンジョンの食材で試してみませんか?」
「おおっ!それはいい!そうしましょう!」
俺の提案に有國さんが返し鈴木さんが頷く。
これで男性にも仕事が増えた。
「醤油と味噌の仕込みもお願いしますね。そろそろ仕込み時期ですよね。
少し大きめの蔵も作りますので、よろしくお願いします。」
「そちらもありましたね。機織りの手伝い、できますかね?」
鈴木さんの問いに有國さんも苦笑する。
「染料は仕込みが終わったら始めましょうか。」
2人が頷ている。
「勅使瓦さん、例のお見合い訓練実現して下さい。人数が足りませんよ。」
有國さんの切実なお願いだった。
時間になったので食堂に向かう。
真希絵さんとチーちゃんは居ない。アオイちゃんとミヤちゃんは他の子たちと遊んでいる。
食事の直前に2人がやって来た。
「後でいくね。」
そう言って俺の隣に座った。子供たちはその横に走ってくる。
チーちゃんが俺の横に座る事は無かったので、少し動揺した。
3人娘はチラ見したが何気ない顔で食事をしていた。
「今年は機織りをするわよ。3班から4班に分けて皆で機織りよ。」
真希絵さんが言うと女性陣からは歓声が上がる。
「地主さん、俺たちの仕事は?」
「叶井さん、俺に聞かないでよ。」
「そう言っても、地主さんも噛んでいるだろ機織り。道具も無いのに言えないからさ。」
「はは、皆で着るものですから皆で協力して機織りしますよね、真希絵さん。」
「もちろんよ、手伝ってもらうわよ。そういう約束だし。」
「なんだ、地主さんが手を回していたのか、まあいいか。」
そんな話で食事は終わり部屋に戻った。
すぐにチーちゃんが来た。
「子供たちは食堂で遊んでるから早めに来たの。」
「そう、話を聞いたの?」
「聞いたわ。私が一番先に子供を産むわ。協力してね。」
「・・・・いいよ。」
「その後は3人に答えてあげて。彼女たちも考えての事でしょうし。」
「・・・いいの?」
「うん、でも一番最初の子は絶対に私よ。」
「分かった。3人には俺から言うよ。」
「いいえ、この後に私が行くわ。待ってて。」
チーちゃんが3人に家に向かった。
俺は動揺していた。いいのだろうか、本当に。
若い娘達に白い目で見られるのは耐えられないからな。あと3人組な。
叶井さんは五月蠅いだろうな。
まあ将来の為に頑張ろう。俺も楽できるかもしれないからね。
4人で戻ってきた。
「くーさん、3人と話してきたよ。
私の考えも納得してくれた。
だから、私が妊娠するまで手を出したらダメよ。」
「分かったよ。手は出さないよ、今までもだしてないし。」
「そう、出してないのね。
皆は何か言いたい事ある?」
「頑張って早く妊娠して下さい。」
山守さん、そう言うか。
「2番になるよう頑張ります!」
「私よ!」
真畑さん、多門さんだ。
「そこは年功序列、私よ!」
山守さんが年長だったな。おい、チーちゃんが複雑な顔してるよ。
4人が帰ってから時間を空けてチーちゃんが来た。
「これからもよろしくね。」
そう言ってチーちゃんは入ってきた。
「こちらこそ、迷惑かけたけど、よろしく。」
1月3日、今日も16時まで閉店だ。今日が最終日。
暇な人は車庫で機織り機を見たり触ったりしている。
蜘蛛の糸も好評だ。
3人組が
「俺たち、今年は何すればいいですかね?」
コウ君が言えば
「訓練の再開は無理ですか?」
カズナリ君だ。
「訓練か、いいけど何の為に訓練するの?カッコいいから?」
俺が理由を問う。
「「「・・・」」」
「それではダメだな。」
3人は項垂れて戻っていった。
どんな小さいことでもいい、目標がないとな。
「全く、もう少し考えが無いのかしら!」
松木愛結ちゃんだ、最年少に言われてる。
「そうそう、格好だけではダメね、中身が無いと」
沢田勝美ちゃんだ。
「勅使瓦さん、お見合い訓練って訓練受けてないとダメですか?」
坂野奈々美ちゃん。
「えっ!お見合いしたいの?」
「「「「「「したいです!」」」」」
数名が声を揃えて答える。3人が居なくて良かったよ。
「隊長さんに聞いてみるね。好みの希望はあるの?
自分のプロフィールなんかもあるといいのかな・・・
その辺は山守さんと相談してくれるかな?」
俺は面倒なので山守さんに任せる事にした。
「いいですよ、希望と自分のプロフ纏めて出して。隊長と話して見るから。」
ダンジョン娘以外の13人が申し込んだ。2名は狙いが定まってるからな。
その後、千里に行って拠点作りが始まる。
北方面は千里に集中させるらしい。
装甲車20台、バス50台の改造は面倒だったが、準備期間があったので出向く前に作り終えた。
5日間かけて作業を終えた。長かったな。
今後は人口増加にともなう増設で済むようだ。
予想の1万人が倍以上の人が生活できている。
上出来だよな。
これから北陸や四国、九州も行くのだろうか。
山里地区にもどり、明日から何をするか考えていたら寝落ちした。




