027
朝から三人で紙の上に線を引いて排水経路を決めていく。
大きく、10本の排水講をつくり周辺に家を建てる想定だ
家を建てる時に枝管を作って対応する、って事で話はまとまった。
ほぼ30mの間隔で直径2mのトンネルを深さ2mから5mになるよう傾斜をつけて掘っていくか。
どういったレイアウトになるか分からないので1本だけ掘る事にした。俺の家が基準だ。
次は汚物層の設置だ。門の横に深い穴を掘ってみる。
この穴の底に魔法陣を書き込み、穴の周囲を囲む土壁にコマをさせば加熱が始まる。
加熱によって水分を飛ばし、汚物を灰にする。そんな仕組みだ。
土壁は高さを22m、外壁より高くして外に向けて横穴を開けた。
匂い対策だ、これは風向きでも変わるので変更の可能性大だ。
その後は居間で家について話を始めた。
俺は事前にキットハウスの画像やカタログを落としていたので叶井さんに見てもらう。
「これはいいな、組立は簡単だ。だが耐用年数は短いぞ。」
「そのキットを例の木で作れば耐用年数も伸びませんか?」
「あの木か、あれなら問題ないな。十分だ。
だが、このキットでも釘やビスを使ってるが・・・
これも設計が必要か?息子の出番だな。」
「お願いしますね。貯水槽はどうですか?」
「悩んでたな、水漏れ対策が難しいそうだ。」
「そうですか、まだ時間はありますから、お願いしますね。」
「しかしキットハウスはどうするよ、流石に現物ないと厳しいぞ。」
「明日、メーカーに直接行ってきます。」
「どこまでだ。一緒に見にいきたいけどな。」
「栃木だったかと、走っていくのですが行きますか?」
「走ってだぁ~ムリムリ、俺には無理だ。」
「そこまで走っていけるのですか?」
「前に裾野まで走って往復しましたよ。大丈夫です。」
「無理はしないで下さいね。」
昼に弁当を食べて解散になった。
俺の分は鈴木さんの奥さんが作ってくれた。次に会ったらお礼を言わないとな。
まだ早いのでキットハウスを買いに行く事にした。
本社展示場だ。
人はいるようだ。
「こんにちは、キットハウスを見せていただきたいのですが。」
「いらっしゃいませ、どうぞ自由に見て下さい、鍵は掛かってませんから。」
平屋で3部屋のタイプと一部屋の小さいタイプの2種類を見てみた。
これなら家族向けと独身用の2種類でいいな。
中は使って慣れていくしかないかな。
「すいません、これとこれ、在庫ってありますか?」
「在庫はあるけど、運ぶ手段が、何か手立てはあるのか?」
「持って帰りますよ。」
「はぁ!持って帰るだ?持てる量ではないよ。」
俺は買いたい家を収納に入れる。
唖然とする店員さんを横に家を元の位置に戻す。
「ねっ、持ち帰りできるでしょ。」
「ちょっと待ってて下さい、社長と話をします。」
奥から社長さん?が来る。
「貴方ですか、持ち帰り希望は。」
「はい、持ち帰り希望です。」
「両方か?なら600万でいい、持っていってくれ。」
「そんな値段でいいのですか?」
「ああ、売れないしな。車が動かなきゃ売れんよ。」
そうか、運べないなら売れないな。
「ではこれで。」
「こっちに来てくれ。」
裏に案内される。
車庫のような屋根だけの倉庫だ。
「この屋根の下が大きい家で、こっちの屋根のしたが小さいほうだ。
小さいほうは3軒分あるので、ここからここまでで一軒分だ。」
「ありがとうございます。」
俺は収納に入れていく。
「これで積み残しは無いですかね?」
「大丈夫だろう、足りなかったら連絡してくれ。」
「分かりました、失礼します。
ところで在庫はここにある分で全てですか?」
「他にもあるよ。全種類。6軒分はある。」
「そうですか、ありがとうございました。」
俺は飛ぶように帰った。飛んでいるのだけどね。
翌日、大きい家の材料を並べていく。
部品点数が多い、組立手順が全く分からんな。
置き換えに必要な木は8本だな、手持ちで足りるが100本追加で切ってこよう。
ダンジョンで漆黒樹を切って高級魔鉄を回収する。
圧縮して釘を作り、枝に打ち付けてみる。ダメか。
魔力を込めて打ち込んだら釘が刺さった。
よし、高級魔鉄に魔石を混ぜて魔力を込めてハンマーを作る。
今度は魔力を込めずに釘が刺さった。
ハンマーを10個作り、ダンジョンから出る。
釘とネジの種類を分けて、高級魔鉄で必要本数作っておく。
漆黒樹でキットの木をコピーして作り、10軒分のキットが完成した。
空いてる敷地に1軒づつ並べて、一軒分づつ収納する。
同様に小さい家も10軒のキットを作る。
全てを収納し、叶井さん、毎日は申し訳ないな。
今日は近所を散歩でもしてみるか。
門を開けると車だ。出てきたのはマスコさんだ。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
「今日はどういった用件で?」
「畑の件ですが、提供はいつから可能でしょうか?」
「えっ!余っているのでは?昨日も栃木に行ったけど畑に野菜はあったよ?」
「そうなんですが、運ぶ手段が無くて・・・」
「俺は走って行ったけどな、ここに来るガソリンがあるなら買いに行けば?」
「・・・・・すいません、何とかなりませんか?」
「本音で言うと何言ってるんだって思うけど、立場もあるよね、何があったの?」
「・・・・議員会館で野菜や果物が不足していて供給場所を探しています。」
「警視庁だよね?出向で市谷って聞いたけど、本当は何してる人なの?」
「いろいろです。今は各省庁の橋渡し役でしょうか。」
「面倒な仕事だね、出世するの?」
「ははっ、どうですかね。」
「ここの事を知った傲慢な議員の無理強いか。大変だろうけど協力はできないな。」
「そうですよね、帰ります・・・」
可哀そうな人だな、議員と俺の板挟みか。言ってる事に筋が通っていないからあっさり帰るのだよな。
輸送か、何かできるかな。
散歩をしながらバスを見る。
「すいません。このバスって売り物ですか?」
「今まで路線で使っていたけど燃料なくて動かせないから。売り物ではないかな、今は。」
「そうなんですか、ありがとうございました。」
俺は国道に出て都心に向かって歩いていく。
中古のバスを探していく。
あった、バスの中古車だ。
「すいません、このバス、見てもいいですか?」
「いいけど、燃料は入ってないからエンジンは掛からないよ。」
店の中から鍵を持ってきて開けてくれる。
「バッテリーもダメだからドアは手動な、少し重いけど。」
俺は中に入り、状態を見る。
観光バスなので座席は全て前を向いてる。
半分を外せば荷物も積めるな。
「これ欲しいけど、安くならない?」
「買うのか?燃料が無ければ鉄くずだよ。」
「大丈夫ですよ、何とかします。」
「現金なら100万でいいや、どうせ店も閉める予定だし。」
「ありがとうございます、これでお願いします。」
「毎度あり、はい鍵、運搬はどうする?」
俺は収納に入れて、
「ありがとうございました。」
唖然とする店員さんを後に家に帰る。
バスを出して考える。
まずは座席を半数まで外し、不要なエンジンやミッションは錬金で砂にしてしまう。
ハンドルは動くな、ブレーキも問題ない。ウィンカーやライトがダメか。
バッテリーか、売ってる場所あるかな。
型式を控え、探しに行く。
開いてる店が無いな、もう少し行ってみるか。
ガソリンスタンドに人が居る。
「こんにちは、お店は開いてますか?」
「開いてるけどガソリンは無いよ。」
「この型式のバッテリー、ありますか?」
「あるよ!何個だ?」
バスに2個使っていたので
「何個ありますか?」
「6個かな?」
「全部買います。」
「毎度、9万円だ。いいや6万で。」
「ありがとうございます。」
収納にバッテリーを入れ、家に走って帰る。
早々にバッテリーを交換するとウィンカーやヘッドライトが点灯した。
これで公道を走れるな。でもエンジン無で魔法で動かして道交法違反で捕まるかな?
あとは動力だ。
漆黒樹を3mの長さにして70cmの穴を開けてパイプを作る。
そこに魔法陣を書いて風が出るようにする。
これを屋根に固定か、パイプを屋根に乗せ魔鋼で周囲を固めていく。
魔鋼に魔力を混ぜるように錬金すれば魔力を含んだ魔鋼になる。
大丈夫かな?敷地内で風を出してみる。
動かない、魔法陣を書き換えて試していく。
よし、動いた。歩くくらいの速さだ。ブレーキで止まる事ができる。
魔法陣は離れていてオンオフが面倒だな、運転席の上に乗せ換える。
屋根に穴を開けて社内から穴に棒を刺せるようにしていく。
穴の位置で風の強さが変わるようにした。
明日、裾野に行って試させてもらうか。
その前にマスコさんに話をしに行くか?
まあ通り道だし、マスコさんの所に寄ってからいくか。
9時には市谷に着いて、受付でマスコさんを呼んでもらう。
対応はいいな、前回みたく門前払いにはならない。
「おはようございます。」
「おはようございます、早朝からすいません。
裾野で試したい事はあるのですが場所を貸していただけませんか?」
「何を試すのですか?」
「車です。魔法で動く車を試してみようかと。」
「本当ですか!待っていて下さい。」
10分程でマスコさんが車で来る。
「乗って下さい、行きましょう。」
何か焦ってる感じだ。俺は早々に乗り込み出発した。
「すいません。急かしてしまって。」
一応、頭を下げておく。
「いやいや、急いだのはこちらの都合です。
魔法で動く車ですよ、これからの物流の要です。
慌てるし、急ぎますよ。」
「そうですか?期待しないで下さいね。あくまで試験ですから。」
「分かってます。」
裾野について収納からバスを出す。
「これですか?上のパイプは?」
「あそこから風を出して進む予定です。」
俺はバスに乗り込み、運転席に座る。
窓を開けて、
「危険はないと思いますが、離れていて下さい。」
そう言って周辺に人が居ない事を確認して穴に刺す。
一気に加速した!すぐにブレーキを踏み棒を抜く。
魔法陣は風量は設定しているが、一気に風を出した。
徐々に風が増えるように魔法陣を書き換え、再度動かす。
今度はゆっくりと動き出し、加速していく。
50キロで速度が止まる。いい感じだ。
ハンドルを切り、一周廻ってマスコさんの場所に戻る。
「どうですか?外から見て異常な部分はありましたか?」
「最初の加速は驚きましたが、その後はスムーズな加速で停止も問題無いように見えました。」
「そうですか、ひとまずは成功ですね。」
「魔法は勅使瓦さんが使っているのですか?」
「魔力供給は走行中はしてません。魔鋼が補ってます。」
「使い方が解れば誰でも運転できますか?」
「可能ですよ、マスコさん運転しますか?」
「よろしいですか?」
マスコさんに棒を刺す位置を教えて刺してもらう。
ゆっくりと加速していく。
「ブレーキで止まればいいですか?」
「止まる前に棒を抜いて下さい。」
支持通りに棒を抜き、ブレーキを踏んでとまる。
「問題無いですね。止まる時に慣れが必要ですが。」
「そうなんですよ、ブレーキと同時に風が止まればいいのですが。そこは改良ですね。」
バスを発進させて元の場所に戻る。
「この後の予定はありますか?」
「特に無いのですが、何かありますか?」
「この車両を関係者に見せていただきたいのですが。」
「それならここに置いていきましょうか?まだ使う予定はないので。
あと、こういった車両を公道で走行させる事は可能ですか?
無理なら作らないのですが。」
「公道走行ですか、私は専門化でないので答えられないですね。」
「ですよね。置いていきましょうか?」
「お借りします。ありがとうございます。」
ちょっと悪戯したくなったので風刃を足元に出して上に乗る。
そのまま風刃を浮かべて、上空を動き回る。
「魔法が使えると本人だけなら移動は空を飛んでできますよ。」
「・・・・・」
見上げたまま動かない。
下に降りて、
「マスコさん、帰りましょうか?」
「・・・・・そうですね、帰りましょう。」
帰りの車内で魔法の可能性について聞かれた。
マスコさんの考える魔法の可能性も聞いた。
確かに魔法で今まで以上の生活ができればいけど、魔力も限りがあるしな。
そんな話をして家に戻ったら暗くなっていた。
車より走ったほうが早いな。




