012
19階層で糸を集めよう。
空歩で蜘蛛と同じ高さに駆け上がり、風刃で倒して行く。
着地も上手になっており、階段のように空歩で降りていく。
さて、20階層だ。一面が岩肌で足場はよく無いな。
ストーンゴーレム、固いのだろうなストーンだし。
索敵で魔力を探ると掌に集まっているのが判る。何か撃ってくるか?5体の群れに近づくと土弾が撃たれた。3体同時で速い!盾と剣も使い弾きながら1発は躱す。しかし連射で攻めてくるぞ。
こいつら武器を持っていないと思ったら魔法攻撃かよ。
5体が撃ってくるが躱したり盾で受けたりと直撃は避けていられるな。少し後退して距離をとる。剣を横に振るように風撃を広範囲に放つ。土弾を防ぐことではなく、相手の攻撃を一瞬でも止める為だ。
その隙にこちらも風刃を飛ばす。土弾を弾きながら倒していく。ステータスでは土魔法と攻撃耐性中だったが、風刃に込める魔力を増やせば大丈夫だった。魔法を多用したので魔石から吸収しておく。これ大事。
次は攻撃が始まったら空歩で上空にも躱していく。上下左右に動き回ると土弾で追いきれないようだな。足場がデコボコなので空歩は有効だな。
風刃を放ちながら空歩を使い上空から距離を詰める。左3体は風刃で倒し、1体の上から一撃を肩に入れそのまま振り抜く。横の1体は胸を突き刺し、後方に下がりながら上に上がる。斬りつけた2体が消えたことを確認して降りる。風撃で相手を崩して剣を使ったり、風刃で戦ったりと試しながら進む。
75体分の魔石が集まったところでボス部屋だ。
ストーンゴーレムが8体に増えただけか。
同じように戦いだな。無難にリポップを終える。
155個まで魔石が増えていた。
21階層はスコーピオンLv30、蠍か。胴体は2m、尾は1.5mで鋏は70cmくらいか。
岩と木に囲まれた階層なので隠れるにはいい環境だな。
索敵で周囲を確認すると蠍は点在していた。
ただ、間隔が狭い範囲に2~3体いる場所もあるな。
ステータスで注意するのは雷魔法か。あと鋏もあるな。
最初の1匹が向かってくる。両腕の鋏を前に出し尾が体の上までのけ反っている、まんま蠍だ。
尾が左右に振れると同時に雷撃がくる。周囲が真っ白になり「バリッバリッバリッ」雷が向かってくる。魔力は感じていたので予想はしたが閃光は想定外だ。
空歩で後に下がりながら上空に退避するが[ドッカーーン」落ちたな。閃光が再度襲い雷撃がきた。足元の魔力を消して下に落ちながら躱す。
索敵を使い魔力の流れを確かめながら風刃を蠍の周囲に5個浮かばせる。しかい眩しいしうるさい!
魔力が大きくなる前に更に魔力を込める。外皮が硬いからな。
一気に風刃で切り裂いていく。一撃では切れない。鋏も斬り落とせず残ってしまう。
更に魔力を込めて撃ち込んでいくと切断され、消えていった。
硬いな、本当に硬い。今までの1.5倍は魔力を消費する。魔石と2本の鋏が残った。
だが、微々たるものだ。込める魔力が解れば倒していくだけだ。
次は遠距離から先に尾を切り落とす。これで雷撃は防げる。
鋏の一撃を剣で受ける。魔力を流していたので鋏が切れた。
両腕の鋏を切り落とせば硬いだけの物体だ。これだと魔石しか残らなかった。
その後は先制攻撃で尾を落とし、倒していく。
横から2体目が来ても尾が無ければ怖くない。
40匹分の魔石と58個の鋏が手に入った。鋏で剣を作ってみたいな。
ボス部屋はスコーピオンキングLv40だ。今までより一回りデカいな。
上位種が4匹いる。同時に雷撃がくると厄介だ。
部屋に入る前に風魔法で盾を試してみる。
風刃を丸くして正面に発生させる。直径は3mでいいか。自分の剣でついてみる。
「カン、カン」
音がして存在を確認する。丸ではなく四角のイメージに変える。できた。3m四方の風の盾だ。
次は得意の圧縮だ。3m×3mの四角で厚み20mをイメージして1mmまで圧縮していく。
「キンッ、キンッ」
剣でつけば堅そうな音がする。
風刃は魔力で硬くしたが、こちらは圧縮空気に魔力を流している。圧縮された分だけ硬くなった。
これを5枚重ね合わせるイメージを作る。5層の盾にするのだ。
自分の先に空気の盾を出せば雷撃を防げるか?確認したいが4匹のボス部屋は避けたい。
今日は戻って明日、フロアの蠍で試してみよう。
翌日、21階層で空気の盾、空盾?空の盾みたいだな、圧空盾にするか。
10m程先に圧空盾を3枚重ねてだし蠍に向かって進む。今日は雷撃を撃たせる。
視界が白くなり雷撃がくるが盾で防げた。1枚に減らして次の雷撃に備えるが大丈夫だった。
効果が解れば長居は無用、ボス部屋に向かい進んでいく。
ボス部屋では5枚の圧空盾を出してから入っていった。
3体が同時に雷撃してくる。左の1体は横に回り込み鋏で攻撃する気か。
雷撃を3発同時でも1枚も減る事なく防げた。横にきた1匹は風刃で両断する。
また雷撃が同時に来るが受け止める。上空から風刃で斬りつけて戦いは終わった。
圧空盾、便利だな。今迄の盾は受けると衝撃があったが、圧空盾は反動もなく、物質的な盾は不要になりそうだ。
22階層はトレントだった。
森のフロアに点在している。隠蔽で気配を消しているので気付きにくいな。
風魔法を使うのか。どうやって放つのか?試してみるか。
ゆっくりとトレントに近づいていく。
10m程の距離だろうか、少し先の土が盛り上がり根が伸びてくる。
こういう事か、魔力を探っていると枝に魔力が流れていく。枝が腕変わりか。
根の攻撃を避ける為、空歩で上方に躱していくと風弾が飛んでくる。圧空盾で受け流す。
そのままトレントに飛び掛かるが枝が横殴りで応戦してくる。
枝を切り払いながら本体を両断する。倒れて木になった。直径30cm長さ10m位の木材だ。魔石もあった。
ふむ、木材になるのか、コンコンと叩くと乾いたいい音がする。
機織り機のコピーで使えるな。収納しておこう。
都合80本の木材が手に入った。家も建てられるな。
2匹同時に襲われもしたが、本体が動かないので攻撃への対処は難しくはなかった。
ボス部屋はビッグトレントは10匹?10本。
端から攻撃したいが部屋が狭い。部屋中が攻撃範囲だろう。
盾を出して右側から攻める。盾は浮いているので根の攻撃を防げないこともあり足元に伸びてくる。
剣で切りつけトレントに迫っていく。最右から1本づつ切り倒していく。剣より斧が似合いそうだ。
そんな戦いを続け、直径が50cmとなった大木が100本集まった。
23階層はアーススネーク、蛇だ。
しかも地中に潜ってやがる。ミミズと何が違うのか?砂地だから地中でも動けるか。
火魔法を使うな。攻撃と魔法の耐性も中だ。ゴーレム並みの硬さと魔力が必要か。
隠蔽も問題にならないし、明日の戦いに備えて今日は休もう。
今日から3月か、朝のTVで気付いた。
一月以上ダンジョンで戦っていたのか。
今日はゆっくりしよう、戦いも魔法も無しだ。
畑を見てみるが、特に変わったことはなく、落ち葉で埋もれている程度だ。
少し掃除して畑は終わり。
部屋の掃除、サボっていたので念入りに行う。
寝室しか使っていないのが、あちこち埃が溜まっている。
窓も扉も全開にして掃除機で埃を吸い、雑巾掛けだ。
水も冷たいし開け放たれた部屋は寒いが休むことなく掃除を続ける。
「爺さん、ごめんなさい。」
仏壇廻りを掃除する時に汚していたことをお詫びする。
朝から働いたので昼食は大角の肉を焼く事にした。
でっかい肉塊を出し、1kgくらい切出しステーキ用に切り分ける。
ミディアムレアでいいかな?他の食材は無いのでごま塩で味付けして食べてみる。
「上手い!」
1枚では足らずに2枚も食べてしまった。
霜降りの高級和牛か?って思うくらい美味かった。
満腹になったので昼寝。
そのあとは食料の買い出しに行かいと弁当も無くなってきた。
まずは電話で弁当を注文する。時間は17時指定でいいだろう。忙しくなる前に取りに行ける。
近所のスーパーで買い物は日用品と衣類だ。
そろそろ春なので着る物も必要だろう。
ダンジョンの装備は増えているが普段着は引越し前の物しかないしな。
次はスーパーを出て作業着関係の店に。
そのまま着る事はないが素材を変えるには作業着が動きやすいかな。
おっと鈴木さんだ。
「こんにちは、そろそろ春ですね~」
と社交辞令的な会話から入ってみる。
「こんにちは、そうですね。暖かくなってきたので薄手の作業着を買いに来たんですよ。毎日使うので毎年の買い替えです。作業着も新作があるので選ぶのが楽しいですよ。」
おっと新作があるのか、そういった言葉には弱いな。
「どんな物か見てみますね。新作、楽しみです。」
「今日はどんな作業着を?勅使瓦さんは作業系の仕事なんですか。」
「いえ、家庭菜園の為に一着購入しようかと。」
「それなら、あそこの列がお勧めですかね。夏前に日焼け避けの帽子等も必要になりますね。」
そうか、夏もあるんだな。短パンで農作業は無いよな。
「ありがとうございます。ちょっと見てみますね。」
「よかったら一緒に見ませんか?私も家庭菜園やっているんで新作があるか興味あるので。」
「そうでうね、鈴木さんは詳しそうですしアドバイスお願いしますね。」
「本職の方のようにはできませんが、一緒に見ましょう。」
「注意する点って何ですか?」
「虫対策は重要ですね。手首や足首から虫が入らないよう締まっているのがいいかな。」
なるほど虫か、考えてもいなかったな。
「そうなんですね、考えてもいませんでした。ありがとうございます。」
「この辺りが定番の形ですね。あとは色と収納の差でしょうか。」
「収納か、何を持っているのですか。俺が考えるとスマホくらいしか思いつかないですが。」
「それが大切なんです。これは胸のポケットがチャック、こっちはマジックテープ。好みですが自分で取り出しやすい形状を選ばないと買い替える事になります。私はマジックテープですがね。」
「そんな違いが?なるほど細かな違いがありますね。」
「ポケットが開いたままで作業すると、落としてしまいますからね。」
何着か手に持って比べてみるが、どれも同じに見える。
使った事がないから不便が解らないのだろうな。
一着を持って試着に行く。
「これにしますね、見た感じで選んだのですが大丈夫でしょう。」
「直感は大事ですね。私は色違いを使ってます。いいですよ、それ。」
「そうですか、結構趣味がにてるかもしれないですね。」
「そうかもしれませんね、ちなみに畑には何を植えるつもりですか?」
「夏に向けて枝豆ですね、それでビールがあれば最高でしょう。」
「ははは、同じですね。家も毎年枝豆植えてますから。」
買い物を済ませ帰り際に
「勅使瓦さん、今晩は時間ありますか?」
「今日は何も予定はありませんが。」
「ちょっと飲みにいきませんか?地元なので無茶はできませんが、ご一緒にいかがです?」
地域との交流が無いとボッチでダンジョンに入ってる事になるしな。
「いいですね、お供させて下さい。」
「よかった、私の知り合いも一人、一緒でもいいですか。」
「問題無いですよ。」
「時間はどうですか。私は20時以降であれば何時でも大丈夫なんですが。」
「俺は時間制限ないので合わせられます。」
「では20時に駅前に集合で。」
「了解しました。20時に。」
「「では後程」」
久しぶりの飲み会だよ。
まあ居酒屋だよな、家庭菜園の話とか爺さんの話だろうが。
いい時間なので弁当屋に寄って帰宅した。
何かあるかな?とりあえず風呂に入ってから集合場所に向かう。
時間より少し早くついたが鈴木さんが待っていた。
横には職人!って感じのゴツイ人が居た。強そうだ。
「勅使瓦さん、こちら大工の棟梁をしている叶井剛好さんです。叶井さん、勅使瓦さんです。」
「「こんばんは。」」
「勅使瓦さんって地主さんのお孫さんか?」
名刺をいただく。
「地主かどうかは判りませんが勅使瓦です。今年になり爺さんの遺産を継いで引越してきました。
よろしくお願いします。」
「叶井さん、いきなりそれは無いでしょう、勅使瓦さん気分を悪くされたら申し訳ない。」
「すまんすまん。いつも皆で話する時は地主さんって呼んでたから。申し訳ない。」
「大工の棟梁なんで、いつもこんな感じなんですが、悪い人ではないので許してあげて下さい。」
「大丈夫ですよ、俺も来たばかりで地域の事しらないし、爺さんの事も詳しくは知らないので。
逆になんと呼ばれてたか知れて良かったですよ。」
「そうだろう、鈴木は固いんだよ。まあ仕事柄お役所との付き合いも多いから固いのも判るけどな。」
叶井さんはそう言って笑っていた。
そうか電気工事だとお役所仕事も多いのか。
叶井さんは職人って感じのざっくばらんな人だな。
そんな話をしながら歩くと一軒のスナックに着いた。
「二人で飲む時はここなんですよ。」
鈴木さんが教えてくれる。
「酔うと少しかわるから楽しみにしておきな。」
悪そうな笑顔を浮かべる叶井さん、鈴木さんは苦笑だ。
「「いらっしゃいませ~」」
女の人の声だ、良かった〇イバーではないようだ。
カウンターと長いソファーに小さいテーブルが7個、よくあるスナックの光景だ。
奥のテーブル席に案内され鈴木さん、俺、叶井さんの順でソファーに座る。
カウンターの中から女性が出てきて、
「叶井さん、鈴木さん、いらっしゃいませ。こちらの方は初めましてかな。よろしくお願いしますね。」
「そうそう、初めましての勅使瓦さんだよ。」
叶井さんが挨拶する。
「ママ、ご無沙汰だね、いつも通りで頼むよ。」
「判りました。チーちゃん、水と凍り、それと暖かいお茶をお願い。勅使瓦さん、焼酎の割は何にします?」
「俺も水でお願いします。」
奥から水や氷が運ばれてくる。定番だな。
あたりを見渡し、少々古いが手入れされて綺麗な室内だ。いい雰囲気だ。
ママさんとチーちゃんと呼ばれた二人が飲み物を作ってくれる、しばしの沈黙だ。
「ママさんたちもどうぞ。」
鈴木さんの一言で奥からもう一人現れグラスが増える。
全員に渡った所で
「「「「「「乾杯!」」」」」」
飲み会の始まりだ。
「初めまして、ママのヒロコです。今後ともご贔屓にお願いしますね。」
「こんばんは、勅使瓦です、よろしく。」
「今日は何の集まりなの?」
ママさんの素朴な疑問。
「勅使瓦さんとの出会いに乾杯ですねか。」
鈴木さん、まだ酔ってないよね。
「はははっ、そうそう三人の出会いに乾杯だよ。」
「鈴木さんと町で偶然会って飲み会になったんですよ。」
他愛のない会話が程よく進んでいった。




