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001

寒い朝だ、山は吹雪だろうか。

そう思えるほどの寒さだった。


俺、勅使瓦九郎太は庭にある岩に向かって頭を下げる。

この家に来てから毎朝の日課だ。

父親の実家なのだが、父親は家に入る気は無く、郊外にマイホームを持つ会社員だった。

十年程前から祖父から家を継ぐよう説得されていたらしい。

俺も30を過ぎて独り暮らしだったので、父親が祖父の家に引越しすることになった詳細な理由は知らない。

父親が落ち着いた頃、安心したのか祖父は逝ってしまった。


不幸は続く、今度は事故で両親を失った。

田舎の広い敷地に俺は独り暮らしを始めてちょうど一週間だ。


実家は代々農家をしており、相当な田畑を所有していた。

ほとんどを近隣の農家さんや組合に貸しており、自分で耕すのは庭先にある小さな菜園くらいだ。


引越しまでの俺は42才独身×無のフリーターだった。

そんな俺も32歳までは近くの食品製造工場で勤務するが、円高と株安のあおりを受けて会社が倒産、

大手でもないのに海外進出なんてするからだろうが!と怒ってみても会社は無いし。。。

その後、派遣にて工場勤務するも派遣切りで再度無職へ、この時37歳。

近所のコンビニで深夜バイトにて食いつないでいる状態だった。


父親から実家の資産については何も聞いていなかった。

田舎に引っ越すと言われても、祖父の介護かな?くらいしか思っていなかった。

畑仕事が嫌で家に寄り付かなったのだろうと勝手に解釈している。




そんな寒い朝、岩を見上げる。

直径6mの円に収まるかどうかの大きさで高さは10mはあるだろう、そんな大きな岩が庭に鎮座している。

いつ、どうやって庭にあるのか? 解らないが昔からあるのだろう。祈っても罰は当たるまい。


岩の廻りを何か飛んでる? 何だ? 光ってるぞ。

ふわふわと丸い玉みたいな何かが漂っている。

岩の裏側に廻ったな、何か無いか?

捕まえるか、打ちのめすか。何か武器のような物を探す。

家の裏に畑で使っていたのか様々な廃材が積んであるので、物色してみると塩ビのパイプがあった。

3cmくらいの太さで俺の身長よりは短い長さだ。

これでいいか、玉が行った方にパイプを構えて向かう。


「うぉっ!」


思わず声が出た。岩に穴が空いてる。人が立って通れるくらいの穴だ。

昨日までは無かったよな? 光る玉は穴の入り口で浮かんでいた。

俺が近づくとスッと消えた。穴の中に入ったのだ。

穴を覗くと下りの坂道になっていて、玉が浮かんでいる。

う――ん、どうする? 入るか?

家に戻って懐中電灯を持ってこよう。

洞窟なら真っ暗だろうし、ヘルメットもあったよな?


ヘルメットと明かりを持って、穴の中をもう一度覗く。

光る玉は見えないが、ゆっくりと降りていく。

足場は悪くないな、平坦だ。

5~6mだろうか、先が明るくなっており、草原が広がっていた。


球が浮かんでる。

草原の手前で中の様子を探っているが、草原だよな。草は20cmくらいの高さだ。

草原に踏み込んだ瞬間、玉から光があふれ出て辺り一面を包み込んだ。


「よく来ましたね」


視界がぼやけて形は見えないが、何かがそこに居ることは理解できた。

誰だよ? 玉に殺されたのか? 天国? 地獄?


「死んでいませんよ。今は別の空間に来ていただいています」


死んでないなら大丈夫か、帰れるよな。


「少しお話をしてもいいでしょうか?」


話って何?


「あなたが入った草原は、この世界に初めて生まれたダンジョンです」


はぁっ!? ダンジョン? 何だよそれ! アニメの世界が始まったのかよ。


「現実の世界です。この世界にダンジョンが生まれて、初めて遭遇した知的生物があなたなのです」


おいおい、俺ってサンプルで切り刻まれるの? やだよ、死ぬのは。


「少し知識をいただきますが、何もしません」


つ―か、俺の思考読んでるよね。


「申し訳ありません。会話が得意ではないので、直接話をさせていただきました」


で、あなたは誰ですか? 自己紹介からお願いします。


「そうでしたね、私はこの世界を守る天使です。神とも呼ばれています」

 

神様かよ、ってラノベ定番だな。


いろいろ話して解ったのは、世界は沢山あるらしい。

この世界の神様は若いらしく、世界を維持するための力が少し足りないらしい。

別世界の神様に頼んで少しだけ力を借りて、無事に進化が進んでいるが、別世界の神様に借りを作る形になった。

その神様が自分の世界にある魔力とダンジョンが余ってきたので引き取ってほしいと。

最初のダンジョンが何故に俺の家なのかは解らないが、初めてダンジョンができるので最初の侵入者に少しだけ手伝いができるみたい。

神様が手伝ってしまうと進化が止まり、世界が縮小するそうだ。

ダンジョンはその世界のエネルギー源を魔力に変換していることと、この先更にダンジョンが多数発生することを教えてくれた。

ダンジョンの発生により、この世界からエネルギー源が消滅する。


どういうことだろうか、原油や天然ガスが無くなるってことか?

そして、ダンジョン発生から150日ほど経過後、魔物が溢れ出る可能性があることも。

俺に何をさせたいのか?


「あなたにはダンジョンの管理人になって試してほしいのです」

「ダンジョンが増えると、この世界の人族の生存確率は一万分の一以下です」

「この世界が終わってしまう可能性もあるので、共生できるか試してほしいのです」


無理難題を吹っ掛けられているような気がする。


「ダンジョンは階層で成り立っており、階層ごとに異なる魔物が潜んでいます」

「この魔物を一人で倒していけば管理人になれます」

「各階層には次の階層に転移できる部屋があり、そこには階層で手強い魔物がいます」

「その魔物が出現しなくなるまで倒し続けて下さい。」

「最初の階層を制覇すれば全てが解る事でしょう。」

「あなたには七つの能力を与えます。その能力でダンジョンの管理人、マスターになってください」


能力が7個って少なくない? 20個くらい欲しいな。

一人で戦うって酷なこと言ってるよね。

7個ってチートなのか? チートなのか? 大切だから2回思ったよ。


「チートが何か知りませんが、ダンジョンマスターになるためには十分な能力と考えています」


初のダンジョンだよね、どうやって必要な能力を知ったの? ねぇ?


「・・・・・」


適当かよ。


「・・・・・別世界の神がこれで十分だと仰っていたので」


言われるがままかよ!

で、これからも手伝ってくれるの?


「世界に干渉するのは簡単なことではないので、不可能と思っていただいて結構です」


そうですか、独りで頑張れってことですね。


「ダンジョンとの共生が不可能である場合、強制的に作り変えることになります。

 この世界でも数千万年前に生物の入れ替えがありました」


昔あった入れ替えって恐竜が絶滅したとか、某大陸が滅亡したとか都市伝説的なことも含んでるのか?


「・・・・私の力不足と言いますか、何と言ったら・・・その時、力を貸していただいたのが今回関係している別世界の神なのです」


力を借りて消したのか、消えたから力を借りて戻したのか、微妙に違いますよね。


生存確率一万分の一って80億人いても80万人しか生きられないってことだよね。

もう少し多くの人間を残せないの?


「ダンジョンから魔物が出現すると、この世界の人では対応できないでしょう」

「街の造りも対応できていません」

「一人でも多くの人々が生き残れることを願っています」


おいおい、締めるなよ。まだ聞きたいことがあるんだから。


「そろそろ時間です。ダンジョンに戻って頑張ってください」






気付けばダンジョンの草原に立っていた。




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