初めの話2
続きです。
さて―。
職員室についた私は、中の様子を窺う。
照明は点いているが、うちの担任を含め、誰もいなかった。
・・・しょうがない。
私は、中に入ると、担任の机に学級日誌を置き、部屋を後にした。
契ちゃん―野外 契。
うちのクラスのスクールカーストでは、上の上の上の人間だろう。
髪は、金髪に染め、化粧も、カラコンも、ピアスもしている。
制服だって、見事に乱れている。女子の私からしても、目のやり場に困るありさまだ。
あまり良い噂も聞かない。
そういえば、去年の夏休み前、誰かが言っていた。
『妊娠』
うーむ。
変人と言われる私だが、彼女のような人間は変人、ではないが、不思議に見える。
まぁ、スクールカースト下の下の下の人間と、上の上の上の人間が分かり合えるはずはない。
だって、私は彼女―彼女たちの経験をしていない。
異性と付き合ったり、化粧をしたり、校則を守らなかっり。
私は、そういうことはしたことがない。する理由もない。
だから、わからないけど、彼女らは彼女なりの理由があるのだろう。
―でも、パシられたのは、少々悔しい。
嫌だ、と、いう暇もなく、彼女らは去っていった。
私なら、良いと思える様な、そんな考えがあるんだろうな、彼女らは。
いや、クラスの人間全員か。
そりゃぁな。こうして、友人もいないし、何を考えているか、共感できない人間なんてわかりたくもなくなるだろう。
―だから、私も、契ちゃんの名前を忘れちゃったんだよな。
いけないなぁ。もっと良い人間になれよ自分。
だから、皆から変人なんて言われるんだからな。
「・・・まぁ、いっか」
さぁ、帰ろう。しんみりしている暇なんてない。
さっさと帰らないと、そろそろやばい。母さんに叱られる。
生徒用玄関まで行き、靴を履いて。外に出た。
時。
「っ!?」
私は、ビビった。
なぜかというと、女がいたからだ。
女―こんな女いるか?
いや、少なくとも、こんな女、学校にいてはいけない。
だって、その女。
真黒なドレス。
いわゆる、『ゴスロリ』というものを思い出した。
でも、『ロリ』の要素はなくて―。
「きれいだ」
思わず、声を漏らす。
顔は見えなかったが、その体系はほっそりと、だが、出ているところは出ていて。
肌はこの暗闇の中、光っているようにも見えた。
しかし、私は自分の携帯のライトが、その女を照らしているのに、一瞬忘れていた。
女が悲鳴を上げるとともに、思い出した。
悲鳴―あれ?
「・・・もしかして」
聞いたことのあるその声。
「なんで、こんなことして・・・?」
落ち着け。
鼓動が高鳴る。
どうして?嘘だろ、なんで?
興奮なのか、鳥肌がたつ。
でも、なんで―。
「っこないでぇ!」
女が駆け出す。
私も駆け出す。
女は、ヒールを履いているというのにとても速い。
長いその髪を振り乱す。
その姿さえも美しいと感じた。
だが、今は―。
「いやぁぁあああ!」
女は、ひどく取り乱していた。そりゃそうだ、だって彼女は―。
「○○○○!」
私は、その人の名を叫んだ。
と、同時に私は、強い衝撃を感じた。
不覚だった。
その人を追って、そのまま校門に出て、道路に出て、そう、この時間の道路は、車はあまり通っていない。通っていないのに―。
私は、車に、ひかれたらしい。
続きます。