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わたしのお兄ちゃんは死にたがり  作者: 太郎
私のお兄ちゃんは死にたがり
9/15

三話、悶死

 私の部屋は狭い。そりゃ、私の働きだけで二人暮らししているんだから。1DKでは布団二枚も敷けるはずもなく、一つのベットで寝起きしている。

 でも困らない。お兄ちゃんと一緒に寝るのは、小学生からの習慣だから。

 目を覚ますとお兄ちゃんは私よりも先に起きていて、背中を向けている。お兄ちゃんの寝顔を見つめるという今日の目標は速攻壊れた。

 それにしても……。


「お兄ちゃん。楽しいの? そのゲーム」


 折角の休日なのに、お兄ちゃんは朝からずーっとゲームをしている。小学生の時も質問したはず。それの答えは、


「生きることよりも」


「ずっと楽しい。でしょ? そのゲームの方が私と生きるよりも楽しいんだー。へー」


「なっ、そ、そうじゃなくて。……ぼ、僕はただ……」


 珍しく狼狽するお兄ちゃん。あら、今日は私の方が立場優勢? たまには振り回されるだけじゃなくて、振り回してみたくなるのよ。


「私はお兄ちゃんと過ごしてる時の方が楽しいのに。ひどいなあー」


「た、たのし……い、よりかは……」


「楽しいよりかは?」


「心臓が、止まりそう……」


「なにそれーっ」


 ぽかぽか叩くが怒ってはいない。むしろ、幸せすぎてはち切れそうな思いをぶつけていた。


「まあ、今日はこれで我慢してあげる」


「……うん」


 お兄ちゃんの体温を、お兄ちゃんの呼吸を、お兄ちゃんの臭いをこの距離で感じられる今を大切にしなきゃ。


「お兄ちゃん」


「ん?」


「今度そのゲームのやり方教えて」


「美奈さん、ゲーム嫌いだろ。急にどうしたんだ」


「お兄ちゃんをゲームに独占されるのが許せないの」


 だからと言って、この状況で甘んじれる程強くない! こうなったら努力して強くなってやる。そしたらお兄ちゃんだって、私と通信プレイしてくれる! ……はず。


「……ふぅん」


「なにさー」


 意味ありげに頷くお兄ちゃん。嬉しそうだ。


「美奈さんが僕に興味持つの珍しい」


「なっ」


 何を馬鹿な事を仰有います、ウサギさん。

 私がいつ何時お兄ちゃんに興味を持たなかった事が、ありましたか。ないですよ、一度も。年中お兄ちゃんの事を考えてますよ。

 って、驚きで口調が変わってしまった。いやいやまさか、私がお兄ちゃんに興味がないという誤解をしていただなんて、そんな事……鈍感お兄ちゃんだからあり得るんだよな。

 こんなにも私が尽くしているんだから、気付いてよ。

 普通の妹は『扶養するから、一緒に住もう』なんて言わないからね。そもそも、働かない兄をゴミとして扱うからね。私は違うよ。


「嘘でしょー。私はお兄ちゃんに興味ありありなのにぃ」


「うん、嘘。知ってた」


「えっ、嘘なの!?」


「……まあ、うん」


 って。私の事を泳がすなんて……お兄ちゃん大好きだー。

 やっぱりお兄ちゃんが権力を握ってて、全てを操作している。私が操ろうなんて百年早い。お兄ちゃんには、敵わないな。


「おにぃちゃー、ずぎー!」


 お兄ちゃんの背中に顔を埋めて、力の限り叫んだ。

 ああ、恥ずかしさで耳まで熱い。いつもは死にたがりのお兄ちゃんを止める私だけど、今日は私の方が死んじゃいそう。

 お兄ちゃんへの愛で悶えて死んじゃう。……あれ、悪くないかも。

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