第一話
「・・・ さん・・・とさ・・・起き・・・」
「ん?」
頭上から声が聞こえる。
多分僕はうつ伏せに倒れているのだろう。頬にざらざらした土を感じる。
頭の中が霞がかかったようにぼんやりしている。
体を起こそうとするが、長い間眠っていたかのような全身を包む倦怠感がそれを邪魔している。
「とさん・・・・早・・・起き・・・」
うぅ、分かった、今起きるから・・・
「うっみひっとさあーん!」
「うわあああああぁぁっ!」
耳元で叫ばれた。
さすがに飛び起きる。
「おっと、驚かせちゃいましたか海人さん!なかなか起きないので心配しましたよ!」
目の前ピンクのワンピースを着た少女が立っていた。
否、浮いていた。
「........」
これは、どういう。
腰まである黒髪。茶色っぽい目。抜けるような白い肌。そして・・・・いやいや、今は少女の容姿の描写をしている場合じゃない。
そんなことを考えているうちに、だんだん頭がはっきりとしてきた。
「それじゃあ早速行きましょうか」
少女はにっこり笑って僕の腕をとる。
「我々に生の恵みをお与えくださった神よ、今我々に・・・」
「いやいや、ちょっと待ってくださいよ!」
目を閉じてなにやら呪文を唱え始めた少女に、僕は言う。
「すみません。状況がうまく掴めないんですけど・・・・」
「ん?状況とは?」
「・・・・ここは、どこですか?」
「嫌ですねえ海人さん!わかってらっしゃる癖にい!このこのぅ!」
「......」
何でこの人はこんなにハイテンションなのだろう。
「いえ、分かりませんよ。教えてください。」
ワンピースの少女はにっこりと笑う。
「ここはですね。
天国、ですよ。」
「て、天国・・・」
「ええ。正確には天国の一歩手前ってとこですがね。」
目の前の少女はなおもにこにこして言う。
「て、天国って、なんで、僕。」
「ん?海人さんは、人がなぜ天国にいくのか、わかってらっしゃらないんですか?」
「・・・てことは、僕。死んで。」
「御愁傷様でございます。」
少女は神妙な顔で頭を下げる。
「ぇっと、何で僕、死んでるんですか?」
「あれ、覚えてらっしゃらないんですか?」
頭をあげた少女は驚いた顔で言う。
「参ったなぁ・・・どうしよう。これじゃあ何処にも・・・霧崎さんは連絡とれないし・・・」
「・・・・なんか、すみません。」
困った顔でぶつぶつ言い続ける目の前の少女に、僕は謝る。
「えっ!?いや別に、あなたが謝らなくたって・・・あ、そうだ!」
急に少女は思い出したように言って、ワンピースの大きなポケットをごそごそし出す。
「これこれ!」
少女はポケットから小さな帽子のようなものを取り出した。
「これはですね、なくした記憶をとりもどすことのできる優れものなんですよ!あたしが作ったんですよ、この『memory-hat』」
小さいと思った帽子は、僕の頭にぴったりだった。
「へへっ、ぴったりですねー。さすがあたし!ではでは、いってらっしゃい~」
少女が言った瞬間、僕の意識はぷつりと途切れた。




