10年前から見てるよ(雪視点)
斉藤雪視点になります。
「あぁ! あぁ! 実に愉快だ!!」
体中をボロボロにして、全身血まみれの満身創痍状態でも、何度でも立ち上がる少女に思わず笑みがこぼれる。
こんなに愉快な人間は今までに見たことがない。
私を見ただけで、恐怖し、畏怖する人間どもしかいなかった世界で、どんなに傷つけられようと、恐怖せず、むしろ楽しんですらいる少女は初めてだ。実に愉快だ。
「ここで死なせてしまうのは惜しい」
そんな感情すら湧いてきた。もっと、もっと、この少女が傷つけられる様を見ていたい。もっと、もっと、この少女の生き様を見てみたい。
ガキン――。ガシッ。
少女が振りかぶった剣を軽くいなして、彼女の頭を鷲掴みにする。
――そうして、記憶を弄り、僕は朱音の幼馴染の座に座った。
〇 〇 〇
「今日の戦いも実にくだらぬな……」
階下で行われる鬼と朱音の戦いを観ながら、思わず愚痴がこぼれる。
私との戦闘で見せた覇気は感じられず、淡々と鬼を処理する様は、人形劇を観ているようだった。
「やっぱり、ここ数年鬼の数も質も落ちたな」
人間にとっては良いことかもしれないが、僕にとっては死活問題だった。
せっかく、わざわざ10年も幼馴染をやっているのに、朱音の力は増しているが、対する鬼側が弱くては、なんの意味もない。
私は、あの時の死に物狂いの朱音の戦いを観戦したいのに。
「やはり、鬼側にも多少手をいれる必要があるな」
そうして、僕はスマホを取り出して、電話をかける。
「あぁ、私だ。鬼を増やすぞ」
端的に伝えると電話口からは唾を飲み込む音がした。
『始祖直々に鬼にしていただけるということですか。でしたら、その鬼の力は凄まじいものになるでしょう』
「あぁ。それが狙いだ」
『承知いたしました。すぐにでも準備に取り掛かります』
「準備は任せた」
電話を切り、また階下の彼女を見つめる。
鬼は既に退治されており、耀太と何やら会話中のようだった。
幼馴染は既に一人いた。かなり目障りな存在であると同時に、期待を寄せてもいる。先祖返りの鬼化する人間。いずれ、朱音と対峙する瞬間が来るはずだ。
その時の朱音はどんな表情をするんだろう。どうやって戦うのだろう。そう思うだけで、胸が高揚してくる。
「その時の特等席は空けておいてね」
今までの耀太以外の視点のモノローグは全て雪の視点でした。
特等席から見ている彼の今後もよろしくお願いします。




