黄色い歓声
ようやく、メインキャラ3人目が出ます
俺と朱音は放課後になると、下駄箱で履き替えて校門を目指していたが、校門に人だかりができていることに気づく。
あー。これは、またやっかいなのが来たな。
「あ、朱音じゃないか!!」
人だかりの中心人物が俺らに気づいて声をかける。
「雪、俺もいるから。相変わらずのモテっぷりで羨ましいわ」
「でも、好きじゃない人にモテても意味ないからね」
すっすっと、人だかりから抜け出て雪は俺らに合流をする。彼は斉藤雪。幼稚園時代からの俺らの幼なじみ。私立高校に通っていてそこでは、優しい王子様って有名になっている。たまに、こうやって俺らの高校に冷やかしというか、朱音に会いに来ている。
「朱音、そういえば、そのおでこはどうしたんだい?」
「体育の時にボール当たった」
「それはそれは」
雪は朱音に異常な好意を持っていると思っている。今だって、朱音の傷をみては頬を高揚させてまるで、恋しているようなまなざしで見つめている。
朱音自身が気にしていない以上、俺からは何もできないけど。俺にとっては、幼なじみ兼要注意人物だった。
それに、小さいころ、俺らの家に遊びに来た雪を見たじいさんが、「同じ匂いがする」と言っていた。鬼ではないが、鬼の匂いがするということは、鬼の血縁者がいるということだ。
俺と似た境遇なのもあり、最初は面倒をみていたのだが、そのうちに朱音に対する異常性を感じ取って、俺は幼なじみを続けながらも警戒中ってわけ。
「耀太は体調は大丈夫なのかい?」
「んえっ!? 今のとこ、大丈夫」
「もうすぐ新月だから心配なんだ」
いきなり、雪から俺に話しかけられて、驚いた。朱音にしか興味ねぇくせに。
俺は新月の日に体調が変化する。言ってしまえば、先祖返りして鬼に近い生命体に変化してしまう。幼少期からこの体調変化は起こっているため、幼なじみの雪も当然知っていた。ただ、雪は鬼斬り屋ではない一般人。だから、鬼の事は伏せて、単なる体調不良が月一あるという事にしている。
「私が一緒だから平気」
「いいなー。耀太は朱音と一緒に住んでるんなんて。僕の家でもよくない?」
「雪の家、なにもないから、嫌。つまんない」
「朱音がほしいものならなんでも買うからさー」
朱音に両親はいない。鬼との戦闘で亡くなってしまったため、俺の家に居候している。新月で鬼に変化する兆候を最初に見つけたのも彼女であり、現在も鬼に変化したときは彼女に世話になっている。
これ以上、朱音に負担をかけたくないと思ってはいるのに、こうして、雪の家に行かないと言ってくれると嬉しくなっちまう。
ぐらっ――。
ガシっと朱音に体を支えられる。唐突な眩暈で体制を崩したようだ。
「悪ぃ。ありがとう、朱音」
「平気。それより、耀太は……」
じーっと、目を見つめられる。彼女の瞳に映る俺の瞳の瞳孔は人間よりも細くなっていた。
くそ。まだ、新月じゃねぇのに。
手をギュッと握られる。
「早く帰ろ。歩ける?」
「あ、ああ」
「えーん。久々の幼なじみの雪くんに冷たくない?」
「耀太、体調悪いから。ごめん。……埋め合わせ、するから」
「え、本当!? じゃあ、何やってもらおっかなー」
「じゃあ、帰るから。バイバイ」
「バイバーイ。耀太も体調お大事に」
「あ、ああ」
手を握ったまま、スタスタと歩く小さな背中が頼もしい。この小さな背中に俺まで預けてしまって申し訳ない。でも、この握った手の温もりを俺は逃したくなかった。




