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ロング・サマーバケーション

作者: 網笠せい

 街にゾンビが現れたとき、誰もが撮影だと疑わなかったらしい。互いに噛みつきあって血みどろになったゾンビが歩いているのを見て、ドッキリかな? 映画かな? とカメラを探す人が多かったそうだ。もしも私がその場にいたら、きっと同じようにきょとんとして逃げられなかっただろう。

 そんなこんなで、あっという間にゾンビは増殖した。猟友会とか警察とか自衛隊が街の一角にゾンビを隔離してくれたおかげで、私たちの暮らしは守られている。

 封鎖するまでは、権利やらなんやらで相当大変だったらしい。テレビで涙ながらに訴える政治家を何度か見た。隔離された辺りに家や職場がある人も当然いたし、自由と権利と安全と防衛の間で、人々の意見も分かれたらしい。

 私は冷房のきいた室内で、アイスを食べながら寝転んだ。彼氏は夏休みの課題に悩んでいるらしく、ときどきこめかみにシャープペンの上の部分を当てている。街にゾンビが現れても平気で夏休みの課題を出してくるあたりが大変ジャパニーズだな、と私はうんざりした。日本生まれ、日本育ち、両親ともに日本人である。

 ゾンビが現れたとき、ドッキリだと思い込んで逃げなかった人が多かったらしい。ドッキリは害悪番組として槍玉に上げられて、すっかりなくなってしまった。夏休みの課題は変わらず出るのに変な話だ。

 私は課題に悩んでいる彼氏の前に食べかけのアイスキャンデーを差し出した。しゃくしゃくと勢いよく食べて頭がキーンとしたらしい。こめかみに手を当てている彼氏を見て、私は笑った。


「ゾンビになったら、課題なんてないんだろうねぇ」


【おわり】

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