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episode 8 なんか気になってしまう

第八話目です!

「嫌われたな」

皇帝はひとりごつ。


確かに、自分勝手な行動だったと冷静になってから分かった。


けど、もしも彼女と結婚しろと言われたら喜んでするだろう。

なにか惹かれるものがある。


多分だが、彼女は自分の顔に見惚れているだろう。


だが、それだけ。悲しいことだ。

最近、作家が話を書いたので見せに来たのだがその話の中に書いてあった一人称を使ってみたくなった。


いつも、私しか使ってこなかったのだが…やっぱり市民と親しくなるにはこの一人称を使った方がいいかもしれない。



「お、お、俺」


言ってみたが慣れないので恥ずかしくなってしまった。


「やっぱり、なし」

皇帝はもう言わないことにした。




「結婚ねぇ…」

凛は誰もいないと思って呟いた、がそこには狼華がいた。

「皇帝に結婚して、とでも言われたんですか?」


「ろ、ろ、ろ、ろ狼華!?なんでいるの!?」


「何か困ったご様子だったので気になりまして」


なので、後をついて来たということだ。

やめてほしい。

心臓に悪すぎる。


「いや、皇帝の冗談よ」


「否定はしないのですね。それに冗談と受け取るのは早いんじゃないですか?」


「なんで?」

凛が訊ねると狼華は口角をニヤリと上げる。



「今宵も来られるみたいですよ」


誰と言わなくても凛は露骨に顔をしかめた。

そんな凛を狼華は少しほくそ笑んだ。


凛には一刻も早く、結婚してもらいた狼華がいた。





「昨日はいかがでした?」

気持ち悪いくらいニヤァと笑う俊風。


「いかがも何もないわよ」


凛は苛立たしげに被りを振る。


相当ご立腹のようだ。

俊風としては早く結婚して皇子を産んでもらいたい。


そして、妃たちの間で蠢いている陰謀を取り除く。

それが仕事である。


基本、占いの仕事をしているのだが興味深い結果が出た際には直接出向いて調査をし、報告をする。


そんな仕事に誇りを持っている俊風。



「いやぁ、急かさないのでしっかり仕事をしてくださいね」

「そんなことを言う俊風は仕事してるの?」


「してますとも。こんな風に妃に仕事をするように言うのも大切な…」


「仕事だって言うの?」

凛は鬼のような形相で俊風を見た。


「すいません…」

俊風は無理強いを言った自覚があるのか流石に謝った。

「ったく、本気でおかしいんじゃないの?この世界」


「私への鬱憤をこの世界にまでぶつけないでください」

俊風は弱々しく言うので凛は鋭い目線で睨む。


「誰のせいだと思ってるの?」


「すいません」

再度謝る俊風だが、気持ちがこもっていないように見える。


この手の奴は大抵反省の色を見せたりしない。

どこまでも腹黒いのだ。



「にしても、正気なのかしら」ぽつりと小声で呟くと俊風を気にせず、凛は去って行った。






「なんで、今宵も来られるのでしょうか?」凛は喉元まで出かかった言葉を飲み込む。

目の前には微笑みを浮かべたままの皇帝がいらっしゃる。


そんな失礼なことは言えないが、実際それに見合う酷いことをされているのだ。


なので、遠回しになぜ来るのだと言っておこうと思う。

「他の妃の元へは行かれないのですか?」


「あぁ。ここが良い」


「他の妃たちは来てほしいと思っているはずですよ」


「そんなことはない」


いや、結構そんなことあると思います…。

凛は皮肉というものが苦手なのだろうか。


全くこの皇帝に効いていない。



「なぁ、結婚の話だが…」


「えーと、このお菓子知ってますか?」

凛はこの話題に変えるために作っていたお菓子を持ってくる。

材料がなかなか揃わなくて苦労した。


「なんだこれ?」


「マカロンです」

着色料は食紅を使って鮮やかな赤色が綺麗だ。



「真っ赤だ…」

見慣れないお菓子に戸惑っている。

というか、まずお菓子とも思っていないのかもしれない。


「食べてみてください」

指でつまんでマカロンを皇帝の口に運んであげる。



恐る恐るだが、口にする皇帝。

少し咀嚼した後、皇帝は頬を緩ませた。



「美味い…」

と言った後、皇帝はハッという顔をする。


「別に美味しいじゃなくても良いんですよ」


凛は皇帝の考えてることを読み取りそう言ってあげる。


「…ん、美味しいな」


「でしょう。私の元いた世界でも流行っていましたから」


「そうか」

皇帝は少し同情の目線を向けてくる。


「帰りたいか?」


「いいえ」

凛はきっぱり言う。

ここ数日をここで過ごして気づけた。


ずっと、ここに居たみたい。

それが私がここに来た意味だと感じてしまった。



「確かに未練ありまくりでしたが、やっぱここが良いです!」

満面の笑みで言った凛を見て皇帝が少し顔を赤くした。


人の顔を見て顔を赤くしないでほしい。


そんな魅力などない。


「前に後宮に妓楼の者がやって来たのだが…」


「なぜ?」


と言ってしまうのは仕方ない。

妃という本能的なものを満たすことができる人たちがたくさんいるのになぜ、わざわざ妓楼から?


「それは、宦官たちが呼んでほしいと…」


「それに応えて良いんですか?」


「それで仕事しなくなったら嫌だから」


「甘い」

この皇帝、真面目そうに見えて結構甘い。



「話の続きなんだが、その妓楼の者が私に対してそのー色仕掛けで誘って来たんだが、全くもってなんの感情も動かなかった」


「それなのに?」


話の続きを促す。

大体言いそうなことは分かっている。


「お前だけは違ったんだよ」


「はぁ。そうスか」

凛はつい、相手の立場を考えずに言ってしまったので慌てて口を押さえる。



「なんだその反応?」

怒っているのか、何なのか分かんない。

「すいません」


「分かった。少し付き合ってくれ」

皇帝の機嫌を損ねてしまったのかもしれない。


つづく



ありがとうございました!

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