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episode 7 凛の願い

第七話です!

「そなたはこの世界の者ではないな」


その言葉のせいで凛の顔は真っ青になる。

なぜ、バレる…。


おかしい、なんで?

凛は不必要に自分のことを話したつもりはない。


なら、なんでこんな事を聞かれるんだ。




「そ、それはどういう意味でしょうか?」


「その動揺が私の言ってることが正しいと如実に語っている気がするんだが?」



鎌をかけられたのだろうか。

食えないお方だな。



「それで、お前はどこから来た?」

美しい皇帝は顔に似合わない好奇心に溢れた目をする。


「ですから、私は東の方の庶民…」


「庶民は妃にならないと思うだが」


「いえ、その庶民の中でも上のでも下の…」


「苦しい言い訳、ご苦労さま」

皇帝は勝ったと微笑んだ。


とても意地悪な笑みを。



「それで、どこから来た?」


「…ん、私は…私は」



「私は?」


「私は〜…」

もの凄くためる凛に痺れを切らした皇帝は凛の頬を掴む。


「さっさと言え」


「はにゃしてくだはい」

凛は頬を強く掴まれて変な喋り方になる。


皇帝は軽くその様子を見て笑うと離してあけだ。

「私は、この時代のかなり未来から来ました」


「未来ねぇ…」


興味深いと言わんばかりに前のめりになる。



「はい。後宮に行きたいと思ったんです」


「なぜに?そこまで良いところとは思えぬが」

皇帝自信も分かっている。

この醜い女たちの戦場のことを。



「今はそう思っていましたが、未来にいた時は不思議な空間だと思って興味が湧きました」


「不思議な空間。…未来のことは知らぬ。だけど、ここの世界とはかなり違いがあるのだろう?」


「はい。鉄で出来た高い建物が多くて、ここの木造建築だらけの世界とはかなり様子が違います」


だが、なぜかこちらの方が落ち着くのはおかしいだろうか。

こちらの世界も悪くない。

もちろん、妃だらけよりも現代…いや、未来に戻って理想の人と恋愛をしたい。



でも、戻りたくない自分がいる。



「その未来とやらは、こちらよりも良いものか?」


それを聞かれると困る。

実際、あちらの世界もあちらの世界でゴタゴタはあるものだ。

つまり、どちらも変わらないと答えた方が良いだろうか。


いや、どちらかと言うと…

「未来の方が便利だとは思いますよ」



未来にはスマホやテレビなどの情報を速やかに得れる電子機器が揃っている。


公共交通機関などもあり、移動がしやすい。



「そうか」


皇帝は神妙な顔で黙り込んだ。


不思議に思いながら凛は窓の外を見る。



こちらの世界の夜は暗い。

もちろん、街とかには行燈の明かりなので明るくなっているが、それでも未来の都会の夜空とは全くの別物だ。



「凛、そなたは私のことを好きか?」


「はい?」


そんな唐突の質問が沈黙を破る。




「好きならば、すぐに結婚してほしい」


この皇帝、とうとう頭のネジが全て外れたかと凛は思った。


「嫌ですけど?」


「嫌かぁ」


何より凛はこの世界でどんなに素敵な殿方に出会っても結婚するつもりはない。



「まいったなぁ」


「何を言ってるのか理解して話してくださいね」


「理解してる。理解してる」



皇帝は頭を抑えて呟いた。


頭を抑えたいのはこちらだ。

だが、二人して頭を抑えても何も起こらないので凛は我慢しておく。



「ならば、今すぐじゃなくて結婚だけは考えておいてくれないか」


「なんでそんなに結婚、結婚って言うんですか」


「嫌、なのか…」



整った顔に絶望の表情を浮かべた。


結婚大好き人間なのだろうか。この人は。




「いや、嫌ですけど。何か?」


「そんなストレートな」


漫才コントか何かしたいんですか?」


「そうじゃなくて」



話のテンポが漫才によく似ている気がする。

思ったよりも、面白い美人だ。



「…今、私は悪魔と結婚させられそうなんだ」


「悪魔?」


「あぁ。男の寝所に入り込んできては襲っていくらしい」

おどろおどろしい口調で話すが、別に皇帝ならそれが本来の仕事だし、良いと思う。


凛はその悪魔とやらを想像する。



どんな人だろうか。

相当、飢えているのか。それとも、それが趣味なのか…。



「それで結婚阻止のためにも仮の妻にと私を…」


「違う!仮じゃない。そいつは独身の男を襲っていくんだ。だから、私と!」


「他に当たってください。それでは、私は寝ますので。おやすみなさい」


凛はさっさと話を切り上げて問答無用で皇帝のいる部屋を閉じた。



関係のない話に巻き込まれては迷惑極まりない。


さて、明日に備えるか。


つづく


ありがとうございました!

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