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episode 3 同士の協力

第三話です!


「貴方と私は同士ですよ」


俊風はニヤリと口角を上げた。


「はい?」

凛は思わず素を見せてしまう。



「なので、ぜひ協力させてください」


「何にですか?」


「貴方の出世に」



どういうこと…。

凛は首を傾げる。



「貴方、ここの世界へ来た際に間違えて位の高い妃の衣を着てしまったようですね」


なるほど、と凛はようやく納得する。

だから、位の高い妃だと間違えられたのか。


自分の今着ている服を見る。


よく見れば絹製の上等な服である。


「実は私は一年前にここに来たんですけど、この後宮で起きている陰謀の調査に今現在当たっていまして」


陰謀って…。


なんとも一番関わりたくない話だ。




「それで、その陰謀とやらは後宮の妃…しかも位の高い妃の間で蠢いていると、小耳に挟んだもので」


「位の高い妃…」



凛はぎゅっと拳を握った。

体をもじもじ動かす凛。


それを見て俊風は不思議そうな顔をする。


「どうされたのですか?」


「…お手洗いに行って来てもいいでしょうか?」


俊風は気まずそうに目を逸らしてコクッと頷いた。



「失礼します」



凛たちは後宮の一角にある建物中で話をしていたのでその建物に隣接している厠に向かう。




「まぁ、実際のところトイレには行きたかったわけじゃないんだけど」


一旦気持ちを落ち着かせたかった。



そんないきなり言われても困ってしまう。

出世して陰謀の調査に協力しろ、なんて簡単に受け入れるわけがない。


もしかしたら、危険な目にも遭うかもしれない。

凛は膝を抱えてしゃがみ込んだ。


「どうしよう…」



「大丈夫?」

そこには、長い髪を持つ男性が立っていた。

凛々しい顔でこちらを見つめる姿はとても美しい。



「そんなところでどうしたんだ?」


その男性に見惚れていると、再び声をかけられた。



「す、すいません」

凛もイケメンに見惚れるらしい。




「失礼だが、どこの妃だ?見たことないからな」


宦官じゃなさそうだ。

かと言って最初に見たあの屈強な男みたいな立場でもなさそうだ。


ということはこの青年…皇帝?



「主上!こんな所にいたんですね。勝手いなくなって…貴方は子供ですか」

やって来た護衛のような男が走って来て言う。


「失礼な奴だな」

護衛にそう返すと凛の方に向き直る。


「さて、そちの名はなんと言う?」


「えっと鈴々です」


「鈴々か。やはり聞いたことがないな」

凛の顔をまじまじと見る。


その綺麗な茶色の混じった目が芸術品のようで思わず見入ってしまう。




「それで、大丈夫か?」


「大丈夫です」

出来ることなら早く帰ってもらいたい。



「…そうか」


皇帝は納得していないような顔をする。



「主上、早く戻りましょう」


「そうだな」



護衛と思われる男と皇帝は去って行った。



「なんだ、そこにいたのか。逃げたものかと思いましたよ」

聞きたくない声が聞こえて来た。


俊風がやれやれと言った表情を浮かべる。



「逃げたって捕まるのがオチだと思いますよ」


「そうですね。後宮から逃げれることはないでしょう。もう一度タイムスリップをしない限り」



「そうですね」

凛はため息をつきながら頷く。




「あー。それと言い忘れていましたが、やはり出世をするには皇帝と夜を過ごさないといけないと思うんですよね」


皇帝ってさっきの…!?


無理無理無理。

脳が自然と拒否する。


嫌だ。

初めてを皇帝となんて私、絶対無理だし、嫌。



「貴方、多分十八、十九歳くらいでしょう?」


「そうですけど」


「なら、丁度いいじゃないですか」


「何がです?」

警戒心を強めながら尋ねると俊風はニヤリと笑った。


その顔がなんとも怖い。



「子供を作ってください」


「はあ?」





「もう、後宮に来たと思ったら今度は子供を作れって…」

ダメだ。思考が追いつかない。


あの後、凛は俊風を得意の武術で投げ飛ばして逃げ帰ったのだった。



武術を習っていてとても助かった。



「それで、俊風が皇帝が来てくれるように手配しておくって勝手に言うし…」


もういつの間にか呼び捨てになっている。

あんな奴に敬称はいらない。



「今日も大変だった…」



でも、皇帝は綺麗だったな。

けどまさか、本当に皇帝が来るわけもないか。


そう安心していた凛はまさか、この後起こることを予想するわけもなかった。



「とりあえず、寝よう」

あくびを噛み殺しながら呟いた。





朝か…。

ただ、昨日の朝のように清々しい気分にはならなかった。

外は曇っていて雨がしとしと降っていた。


俊風が宮と一緒に着替えまで用意していてくれたのはとても良かった。




今日は緑色の衣にしよう。


髪は下の方でお団子にした。

そこに金色の簪を挿す。


結構、様になっているのがなんとも言えない。



白粉叩くと口紅を塗る。


化粧は前からしていたので慣れている。

だけど、やっぱこの時代の化粧は現代の化粧品とは違うな。


そして、最近現代と過去が今いる時代か、前にいた時代か分からなくなってきている。



「出かけよう」


家にいても陰鬱な気分になるだけだ。

傘を差して外に出る。


季節は梅雨になったらしい。



「紫陽花が綺麗」

青や紫、紅など色鮮やかでとても美しい。



「さてと、どうしよう…」


迷子になったみたいだ。

後宮はとても広いため迷子になる。


しかも、建物が全て似たり寄ったりなのが一因だったりする。



「また、会ったな。いつも困っているようだが大丈夫か?」

綺麗な声が聞こえてきて振り向くと皇帝がたくさんの従者を連れて立っていた。



「その、迷子になりまして」


「ここは広いからな。宮まで送るとするか」


ニヤッと皇帝は微笑んだ。





「ありがとうございました」

皇帝に宮まで送らせるなどとんでもない事だ。


「いや。散歩がてら丁度良かった」


「それでは」


凛が去ろうと身を翻すと後ろから唐突に手首を掴まれた。



「ちょっと待ってくれ」


「はい」


「今日、一晩。ここに泊めてもらいたい」

皇帝の提案は絶対だった。


凛は自分の顔が真っ青になるのが分かった。



つづく


ありがとうございました!

また、次回もよろしくお願いします。

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