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婚約破棄するけど はい。悦んで。

初の短編です。ʕ·ᴥ·ʔ ドキドキ

「ソフィア、おまえとは婚約破棄だ!!泣いて縋ろうが許されると思うなよ。ここにいるメロディ嬢をイジメていたそうだな……恥をしれっ!!」


 学園の卒業記念パーティーでのこと。私の目の前で周囲の状況も顧みずに、大声で叫んだのは残念すぎる婚約者のトーマス・ライダーだ。


(すぐに元婚約者ってなりそうね)


 トーマスとはもう付き合いが長い。お互いに隣の領地なので、幼少期から一緒に育った、いわゆる幼馴染ってやつだ。トーマスはライダー子爵の次男、私は伯爵家の跡取り長女。卒業後はトーマスがうちの婿養子になる予定だった。今さら何を馬鹿な事を言っているのだろうか。


(そういえば……トーマスって昔から頭を使うのが苦手なのよね。少し考えれば分かるだろうに)


 トーマスに張り付いて後ろから、チラチラと覗いているのが噂のメロディ嬢だろう。そもそもメロディ・ダグラム嬢は男爵家なので、たしか普通科だったはずだ。伯爵家の跡取りとして、私は特待クラスに所属してたから、授業も何もかも別棟である。


(学園生活で、すれ違うこともなければ、会ったことも、話したことだってない。もしろ今日が初対面なのに、どうやってイジメろというの?)


「トーマス様、私はやっておりません。むしろ初対面な令嬢なのでご紹介して貰えませんか?」


「初対面だなんて、見え透いた嘘をっ。メロディ嬢をバカにする気かっ!」


(き、汚いっ。目の前でツバを飛ばす勢いで話さないで欲しい)


 顔を真っ赤にして、怒鳴りつけるトーマス。そんな醜悪な彼の様子を周りの人々が怪訝そうな顔をしてみている。メロディ嬢は相変わらずトーマスの袖の後ろを摘んで、何も言わずにプルプルと震えていた。


「はぁ……話になりません。婚約破棄の件は了承しますわ。ただし、両家との話し合いの末に慰謝料を決めましょう。」


「ふん。当たり前だ。自分の行いをしっかり反省するんだなっ!」


(私はどっちが慰謝料を払うとかは、今は敢えて言ってないのだけれど……彼の頭の中は大丈夫かしら?)


「何の騒ぎだっ。祝いの席だぞ。」

 咎めるような口調でやってきたのは、アインシュ公爵家の次男で、卒業後は王太子殿下の側仕えと決まっているデイビッド様だ。


 学園では貴族間の序列はなしで平等にって話ではあるが、先程卒業式を終えたばかり。私はデイビッド様にカーテシーをして頭を下げた。トーマスとメロディ嬢は、第3者が介入してきたことに、そのまま立ち尽くしている。


(あらまぁ…2人は自分より高貴な方への挨拶も忘れてるようだわ。今後が思いやられるわね。もう学生を卒業なのに。)


「ほぅ。。」

 デイビッド様の側にご学友の令息が一人近づき、今までの私達の経緯を耳打ちした。近くで見ていたようだ。


「ソフィア伯爵令嬢がメロディ男爵令嬢をイジメたとして婚約破棄された、と……そうなのか?」


「はい。そうですっ。デイビッド様。私、ソフィア様にイジメられて………」

 ここにきて初めてのメロディ嬢の声を聞いた。ウルウルと潤んだ瞳をして、さっきまでトーマスの後ろに隠れるように居たのに、今では前のめりにデイビッド様の前に踊り出た。


(………勇気あるわね。メロディ嬢。すごいわ。)


「はっ。何を馬鹿な事を言ってるんだ、君は。それに君に発言を許した覚えも、名前を呼ぶ権利も与えていない。」

 デイビッドの蔑むような態度に、メロディ嬢はビクっと震え、怯えた様子になっている。


(イケメンに拒絶されるのショックよね。まぁ。これも自業自得ね…)


 デイビッド様が、話にならないとばかりに今度は私のほうに話しかけてきた。

「ソフィア嬢。婚約破棄を了承したと聞いたが?」


「発言失礼します。先程、トーマス・ライダー様から婚約破棄の話があり、了承しました。今後ことは、両家で話し合いをとなっております。」


「……ソフィア嬢。貴方はそれで問題はないのですね?」


「はい。むしろ喜ばしいですわ」


「なっ!!!」トーマスから奇声が聞こえたが、今はデイビッド様と話てる最中だから無視だ。むしろこんなに無能な人を伯爵家の婿として迎え入れるなんて言語道断だろう。願ったり叶ったりだ。


「それならば、私が貴方の横を予約しても良いだろうか」


「キャーーー!!」今度は、様子を伺っていた周りの令嬢達から奇声が聞こえたが、これもまるっと無視だ。無視。

 (それよりも………今、彼はなんて言ったの?聞き間違いじゃなければ……私に交際を申し込んでる?)


「ソフィア嬢。そんな困った顔も可愛いが、出来れば良い返事を聞けたら嬉しい。」

「………いつから?」

「最初は同じ特待生のクラスメイトとしてだったのだが、毎日のように図書館で一生懸命に頑張っている君の姿が凛々しく、いつかし私も頑張らねばと、励まされていたのだ。君の婚約がなくなったのなら、そんな頑張り屋なソフィア嬢を支えていきたいと思ってしまった。」

 まったく気づかなかったし、図書館に通っていたことを見られていたのも知らなかった。


 ボボボっと、一気に顔が赤くなるのを感じた。





「はい。………謹んで。」




 その後すぐに両家は話し合い、すぐに私とトーマスとの婚約破棄が成立した。もちろんトーマス側の有責で、慰謝料も貰えるそうだ。当然だ。メロディ嬢へのイジメなんてない。ちゃんと情報の裏取りまですれば、簡単にわかることだ。なのに!卒業パーティーで皆の前での騒ぎを起こし、それも証人もいっぱいだ。

 そして、トーマスは子爵家から勘当されて、今は領地の端でひっそりと農作業しながら暮らしているらしい。そこにはメロディ嬢の姿はなかった。メロディ嬢はトーマスと結婚出来れば伯爵家の妻になれると思っていたそうだ。デイビッド様がメロディ嬢の男爵家に卒業式での無礼を抗議したところ、次の日にはメロディ嬢は修道院に入ったらしい。



そして、今日は私とデイビッドの婚姻パーティーだ。私の隣には、キラキラと眩しいくらいの笑顔の彼がいる。


「ソフィア。ずっと君の隣は僕だけのものだ」




「はい。……………悦んで。」

この話を書きながら、ずっとあの曲が頭の中をリピートしてて、むしろ!そのフレーズが書きたくて出来た作品かもです。

あなた方の為〜からのハッピ案も考えましたが、、悩んだ末に今回はこちらを…。

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― 新着の感想 ―
面白かったです。 が、‥バッタの改造人間(でも顔面はバタくさい笑顔の機関車)と太陽の牙なロボットが頭に浮かんでしばらく消えませんでした。消えた頃にはシャクれたあごの令息でてくるし。←全部違う。 そうい…
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