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チンパンジー

「ねぇ、クレオ君。チンパンジーに耳を引きちぎられるなら左耳と右耳どっちがいい?」

「いつも通り突拍子のない質問ですね。そうですね確かに、これは迷いますね。

人によって利き手と同じように利き耳があると聞いたことがあります。」

と、御伽さんは僕の精一杯のウンチクを遮るように

「はい、タイムオーバー。今、あなたは両耳引きちぎられました。」

「急に大きな声を出されたのでびっくりしましたよ。」

「はい終わりー、お前耳ちぎられたー、チンパンジーに、ウキウキ」

「御伽さんがチンパンジーだったてことですか」

「黙れ、バナナでいてこますぞワレ。」

「IQもチンパンジーになってるじゃないですか」

「ウッキー、もうええわ、ほなこちとら実力行使や。次のバス停で降りてタイマンや。」

その後、熾烈な戦いが始まった。

降りたバス停は、熱帯雨林のそばにあり、鬱蒼とした木々が目に入った。

冬服の制服もあいまり、熱帯雨林特有の湿度に汗が滴り始めたと

同時初めて人、いやチンパンジーと化したホモ・サピエンスとのタイマンに固唾を飲んだ。

チンパンジーの握力は人のそれを優に超える。

これは、樹上を移動する際に、自身の体重を手で支える必要があるから発達したとされている。

要は、掴まれた時点で重傷であるということだ。

先手必勝僕は、チンパンジーと成り果てた先輩に殴りかかった。

刹那、心の臓あたりに違和感を覚えた。胸元を見ると拳がめり込んでいた。

視界に拳が入った同時に意識が飛んだ。


目を覚ますと、いつものバスの中

隣には先輩がいた。決してチンパンジーではない。

「珍しいね。君がバスの中で寝るなんて」

「すみません。お話中に寝てしまうなんて」

「いいよ。疲れてたんだね。」

「はいなぜか眠気が突然襲ってきて」

「それはそれとして」

「なんですか?」

彼女はこう続けた。

「ねぇ、クレオ君。チンパンジーに耳を引きちぎられるなら左耳と右耳どっちがいい?」





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