救出作戦
「なぁ…本当にやっちまったな…」
「どうする…?」
「とりあえず、口封じに王太子の婚約者を殺しておくべきか…?」
「でもよぉ、もし捕まったら…王太子の婚約者を殺したのがバレたらそれこそギロチンじゃ済まねえよ…」
「なんで俺たちはこんなことしちまったんだよぉ〜…」
彼らはそんなことを延々と話し続けている。
私は影武者としての役割を全うするため、余計なことは言わない。
たとえ殺されるとしても、聖女様を守れるならば構わない。
私に施された情報抹消、情報改造の魔術は完璧だ。
私が死んでも、しばらく…国が私が影武者だったと発表する頃までは私が影武者とはバレないだろう。
「とりあえず、殺すのはあとにしよう…」
「それより、こいつはここにおいてそのまま逃げる準備しないか?」
「そうだよな、身代金とか絶対無理だって…」
どうやらこの犯罪者グループは割と現実が見えているらしい。
事前の情報でマインドコントロールがどうこうと聞いていたので、こうなったのはおそらく彼らの意思ではないのだろう。
だからといって聖女様を誘拐しようとしたことは許さないが。
私は聖女様に恩があるから。
聖女様のおかげであのインチキ占い師におかしくされていた被害者の一人、大好きな兄が家に戻ってきたのだ。
だから聖女様は絶対に守る。
本当に、感謝しているから。
「おい、お前」
ちらっと彼らを見る。
意外なことに、申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「悪かったな、俺たちもこんなことなんでしたのかわかんねぇ…詐欺とか、そんな犯罪しかしたことなかったのに」
いや詐欺も十分重大な犯罪だよバカ。
「でもな、俺たちも死にたくねぇんだ。だからお前さんをここに置いて逃げる。上手く人に見つけてもらってくれ」
ご勝手なことで。
「じゃあな!!!」
彼らは結局、尻尾を巻いて逃げた。
…逃げようとした。
「…っ、な、なんだ!?」
「身体が勝手に、刃物を…っ」
ああ、そうだ。
彼らはマインドコントロールを受けている。
聖女様を殺さなければ逃げられない暗示…いや、逃げようとしても聖女様を殺してからという暗示をかけられているのかもしれない。
ここまでか。
「や、やべぇ…嬢ちゃん、逃げろ!」
「逃げろと言われても…」
縛られてるし。
まあ、役割は果たせた。
仕方がない。
聖女様には本当に、兄を助けられた。
だから…これでいい。
十分だ。
「…ぅわああああ!」
刃が私に向かってきたその時。
「そこまでだ!」
騎士団が、私の救出に来てくれた。
結果、私は無事解放された。
犯罪者グループは、全員捕まった。
犯罪者グループは全員、ほっとした顔をしていた。




