自害
わたくしが村に残された女性や子供たちへの金銭的支援をした結果、彼女たちは慎ましやかに生きれば一生困らない資金を得た。
それに感謝して、わたくしたちを襲った男衆はなんとか懸命にマインドコントロールを受けた相手を思い出そうと四苦八苦しながらも努力してくれた。
その結果。
「ヴァレール様、今なんて…?」
「実行犯である、マインドコントロールの被害者でもある彼らが全員毒杯を受け取る前に自害した」
「どうして…」
「それも、かなり酷い形での自害だった…おそらく、マインドコントロールをした連中が彼らに口外しないようなにかを仕込んでいたのだと思う」
「そんな…」
毒杯での死なら苦しむことも少なかっただろうに…遺体もきっと悲惨なことになっているだろう。
「可哀想、ですわ…ぐすっ、うっ…」
「シャル…」
「彼らのことは許しませんわ、でも…そんなのあんまりですわ…うぅ…」
感情がコントロール出来ず、ぼろぼろと泣いてしまう。
そんなわたくしにヴァレール様はハンカチで涙を拭ってくれる。
「シャル…」
「遺体は…家族の元へ戻りましたの?ぐすっ」
「うん、シャルの支援のおかげで葬儀もできて埋葬できたそうだよ」
「そうですの…すんっ、うぅっ」
「みんなシャルに感謝してる。だから、シャルは泣く必要ないよ」
ぎゅっと抱きしめてくれるヴァレール様。
「ええ、そうですわね。でも、悲しいんですの。ぐすっ、ぐすっ」
「シャル」
「せめて彼らのためにも、なんとか黒幕を突き止めなければなりませんわね…ぐすんっ」
「そうだね。罰を与えて二度とシャルに手を出せないようにしないと」
黒幕を突き止めなければならない。
けれどそのための手段がない。
ヴァレール様に涙をもう一度拭われて、やっと涙が止まる。
「どうしましょう。何か有効な手段はないかしら…」
「今のところ、どうしようもないが…」
「うーん…」
悪党を野放しにはできませんわ。
隣国の件も含めて考えると、これは我が国だけでなく大陸全土の問題。
今もわたくしの知らないところで、悪い組織が暗躍している可能性もありますわ。
それを考えれば早急に手を打つ必要がある。
でも今は手詰まりですわ…何かできることは…。
「そうですわ、ヴァレール様」
「どうしたの、シャル」
「大陸で変なことが他にも起こっていないか調べれば、何か出てくるかもしれませんわ」
「…なるほど。調べてみるよ」
「ありがとうございます、ヴァレール様」
わたくしがお礼を言えば、ヴァレール様は頭を撫でてくれる。
「大丈夫、こちらこそ考えてくれてありがとう。それでなんとかわかることがあるといいのだけど」
「ですわね…」
どうか、何かわかることがありますように。




