シャルの可愛らしさにノックダウン
今日は週に一度シャルロット嬢に会うという約束の日。
幼くなったシャルロット嬢は、記憶と知識はそのままらしい。
けれど、見た目に合わせて言動も幼くなったと聞いている。
どんな反応をされるか緊張しつつ、シャルロット嬢に会いに行く。
「ヴァレール様ぁー!」
「ああ、シャルロット嬢。走ったら危ないよ」
幼くなったシャルロット嬢は、僕を一目見て駆け寄ってきた。
シャルロット嬢はこんなにも素直な子供だっただろうか。
そういえば、僕は必要最低限の関わりしかシャルロット嬢と持っていなかったな。
立派な王になりたいからと、勉強ばかりに夢中になっていたが…もしかして、シャルロット嬢は本当は幼い頃もこうして僕と会いたかったのだろうか。
だとしたら、酷いことをしたかもしれない。
「むー、シャルって呼んでください!」
「…シャル」
「わーい!」
無邪気に笑うシャルロット嬢…シャルに、なんとも言えない気持ちになる。
思わず聞いてしまった。
「シャル、僕が好きかい?」
「はい、好きです!」
「僕は君に構ってあげなかったのに?」
「でも、ヴァレール様の頑張りはわたくし知ってますもの!」
シャルの言葉に驚いた。
「え?」
「たまにいただくお手紙で、立派な王になるため頑張っていると書いていたでしょう?なにをしたとか、なにを学んだとか。そんなヴァレール様だから好きなの!だから、構ってくれなくても大好きですわ!」
そんなことを言ってにこっと笑うシャル。
僕は、そんな幼い彼女にどうしようもなく惹かれるのを感じた。
そして、一途に自分を想ってくれていた彼女に酷いことをしたと反省した。
構ってこなかったことも、濡れ衣を着せるところだったことも。
全て取り返しがつかないことになるところだったのだ。
それを他でもない彼女がこうして助けてくれて、こうして教えてくれた。
だから、せめてこれからは彼女の献身に報いたい。
「シャル、なにか望みはあるかな?」
「じゃあ、一緒にお昼寝したい!」
「え?」
「お願い!」
そしてシャルのためにお昼寝した。
けれどそれも僕のためのおねだりだと知った。
横になるだけのつもりが、いつのまにか寝落ちしていて目が覚める。
「んん…おはよう、シャル」
「おはようございます、ヴァレール様。よく眠れましたか?」
「うん、頭がスッキリしてる」
「睡眠もお昼寝も大事ですよ!どうかご自愛なさってね」
にこっと笑うシャル。
僕の体調を気遣ってくれたようだ。
実際、シャルのことが心配で眠れなくなっていたから助かった。
「ありがとう、シャル。君はどうしてそんなにも…僕を慕ってくれるの?」
「だってわたくし、ヴァレール様に光を見たんですの」
「え?」
「国を想い民を想うヴァレール様は、この国の希望です。そんなヴァレール様の支えになりたくて…」
照れたように頬を押さえる。
僕はどうしてこの可愛らしい少女を顧みることなく自分のことばかりを優先してしまっていたのか。
「シャル」
「はい」
「これからは、君を大切にする。…ごめんね」
「ふふ、許して差し上げます!」
ああ、この子を僕は…守りたい。
今更、なのだけど。




