ギャン泣き
わたくしはギャン泣きする。
感情をコントロールできない。
そんなわたくしをヴァレール様とお兄様は必死であやす。
「大丈夫、メアリーの頑丈さはシャルも知っているだろう?」
「ほら、シャル。大丈夫だよ、泣かないで」
「うわぁああああん!メアリー!!!うわぁああああんっ!」
泣き叫ぶわたくしに、武装蜂起した平民たちは今更とはいえ本当に後悔している様子だ。
縛られてまともに動けない様子だと言うのに、土下座の体制をとって頭を何度も床に打ち付ける。
「ごめんな、ごめんなぁ!」
「こんなちっこい子を泣かせてごめんなぁ!」
「殺そうとして本当にごめんなぁ!!!」
わたくしはそれでも泣き止まない。
「うわぁあああんっ!嫌いぃ!!!この人たち嫌いぃ!!!」
「シャル…そうだよね、嫌だよね」
「シャル、今メアリーを治療しているからそっちに行こうか」
「メアリー!!!うわぁああああんっ」
わたくしはヴァレール様とお兄様に連れられて部屋を出る。
メアリーのところに連れて行ってもらった。
メアリーの服は血まみれで、どれだけの攻撃を受けたのかもわからない。
失血死してしまわないかと怖くなる。
「メアリー!メアリー!」
メアリーの手を握る。
その腕も傷だらけだ。
「…お嬢、様…」
「メアリー!」
「…泣かないで、くださいませ。メアリーは、すぐ治りますから」
「うん、うん!」
止血はされているらしい。
輸血もされているらしい。
けれどボロボロの姿に、私は泣きそうだけれど。
メアリーが泣かないでというなら、泣かない。
「わ、わたくしへっちゃらですわ!泣いておりませんわ!だから、だからメアリーも治りますわよね!?」
「もちろん、です、お嬢様」
にこっとメアリーは笑ってくれたから。
わたくしも、笑顔を返した。
幸いなことに、メアリーは恐るべき頑丈さで一命を取り留めた。
まあ、療養とリハビリは必要なのでしばらくは侍女の役目は他のものに任せることになったが。
その子もメアリーの推薦で選ばれた子なので信頼できる。
でも、出来ればメアリーには早く復帰して欲しい。
だって、メアリーがいないと寂しいから。
「…はぁ、メアリーが助かって本当によかったですわ」
「メアリーが廊下で部屋を守ってくれたから家族全員助かったのだから、メアリーにはあとで褒賞を与えなくてはいけないね」
「ええ、お兄様」
お兄様の言う通り、メアリーのおかげで助かりましたわ。
でも複雑な心境。
わたくしが無茶をした時にも、ヴァレール様やお兄様はこんな気持ちだったのかしら?
「あのね、お兄様」
「うん?」
「いつも無茶してごめんなさい」
「…ふふ、そうだね。いいよ、反省してくれて助かる」
これからは今度こそ心配かけませんわ。
そのためにも大人に戻って魔力石をこさえなくては!




