襲撃
平和に過ごしていたある日のこと。
わたくしたちの屋敷が襲われた。
「お嬢様、こちらへ!」
「メアリー!」
「大丈夫です、必ずお嬢様は私たちがお守りします!」
武装蜂起した平民たち。
けれどおかしいことに、我が領の領民たちではない。
そもそも我が領は裕福で、武装蜂起するほど不満を溜め込んだ領民はいないはず。
彼らは貧乏な税金を払うのもやっとの村の人たちらしい。
自らの村の領主に武装蜂起するならばわかるが、何故わたくしたちに向けて刃を向けるのか。
「お父様、お母様…お兄様…」
わたくしは、流石にもう聖魔力も尽きて命を燃やすことすら出来ない。
どうしよう。
家族を守ることすら出来ない。
「大丈夫、大丈夫よ」
「メアリーがいるから、心配ない」
「メアリーの暗器の扱いはすごいからね」
メアリーはわたくしの侍女。
いついかなる時もわたくしを守る護衛でもある。
わたくしの一番信頼できる臣。
「でも、武装蜂起した平民たちは鬼気迫る勢いで我が家の騎士たちすら押されているのでしょう?」
「それでもきっと大丈夫、メアリーなら…せめてお前だけでも、守ってくれる」
「そ、そんなことを仰らないで!」
ぎゅっとお父様に抱きつく。
「大丈夫、大丈夫だ」
「お父様、お母様っ…ぅ、うわぁああああんっ!!!」
泣いてる場合じゃないのに、怖くて怖くて泣いてしまう。
そのうちどんどんと一つの足音が近づいてきた。
兄様がサーベルを抜く。
「…っ!」
「シャル、無事かい!?」
「…ヴァレール様っ!?」
兄様がサーベルを即座にしまう。
わたくしはヴァレール様に走り寄って抱きついた。
「ヴァレール様っ!!!」
ヴァレール様はわたくしを抱き締め返す。
「よかった…無事でよかった!」
「ヴァレール様、メアリーは!?」
「メアリーは…」
「…?」
「…大丈夫、今治療してるから。きっと大丈夫」
…つまり、大怪我をしていると言うこと?
「…ふっ…ふぇ…」
「…あ」
「うっ…うっ…うわぁああん!メアリー!!!」
「シャル…」
「うわぁああああんっ!!!」
ギャン泣きするわたくし。
いつのまにやらヴァレール様のおかげで参戦していた王家直属の騎士に捕縛され連れて来られた武装蜂起した平民たちは、そんなわたくしを見て虚ろな表情からハッとした表情になる。
「お、俺たちは…なんてことをっ…」
「あんなに小さな子供を、俺たちはっ…」
今更反省されても、もう遅い。
メアリーが、わたくしのメアリーが大怪我をしたなんて。
絶対に許さない、許したくない。
だってメアリーは、わたくしの侍女で、わたくしの護衛で、わたくしの乳姉妹なのだから。




