それぞれの受け止め
私はこの国の国王。
息子は優秀な子で、それ故に油断していた。
息子がある日から突然変わった。
あれだけ国を想い民を想う優秀な子であったのに、突然男爵令嬢などに目移りした。
問題を起こすならば廃嫡することも考えた。
「だが、シャルロット嬢が救ってくれた…」
魅了の呪いを受けていたという息子。
その息子が自分の誕生日パーティーの席でやらかしたというのに、息子の婚約者であるシャルロット嬢は命をかけて息子を救ってくれた。
正気に戻った息子を叱りつつ、聖魔力を持つ者だけの使える魅了の呪いを研究し対策するよう宮廷魔術師に指示を出した。
シャルロット嬢の親御さんである公爵たちには後日改めて正式に謝罪をし、息子の婚約破棄宣言をその場で撤回した。
しばらくは息子もシャルロット嬢も大変だろう。
けれど、今回のことで二人の仲が深まってくれれば…私はそう願った。
娘が幼児化した。
記憶と知識は繋がっているらしいが、言動が見た目同様の幼いものになっている。
だが、記憶と知識は繋がっているのでヴァレール殿下を心から心配していた。
「お父様、ヴァレール様は?」
「もう大丈夫だよ。シャルのおかげだよ」
「本当?」
「本当」
「よかったぁ」
このやりとりを日に何度も繰り返す。
娘がヴァレール殿下を心から慕っているのも、それが献身的な愛であるのも知っていたが…命すら懸けるとは。
公式な謝罪と婚約破棄宣言の撤回をきちんと受けておいてよかった。
妹贔屓の息子は、いっそこちらから捨ててやれば良かったのにと言って幼児化した娘に殴られていたから。
幼児化した娘のパンチなど多分痛くないと思うが、息子は泣いていた。
「そんなに殿下を愛しているのなら、せめて幼児化している間は殿下に会わせてやりたい」
週に一度の約束を取り付けた私の妻は流石過ぎる。
グッジョブ。
私はエマ。
男爵令嬢である私は、しかし聖魔力を持つ勝ち組。
そのはずだった。
もう一人の聖女候補は公爵令嬢。
なんでも持っている恵まれた娘。
「ムカつく…」
だから婚約者を奪ってやった。
なのに取り返された。
「ムカつくムカつく!!!」
けれど、さすがにあの女では私の聖魔力に勝つためには命を差し出す必要がある。
あの女を殺してやったのだ。
そう考えるとスッキリした。
なのに。
男爵であった父は賠償金を払って借金まみれになり、爵位も取り上げられた。
私はそのせいで両親から捨てられた。
おまけにあの女は生きているらしい。
「ムカつくムカつくムカつく!!!!!」
どうして?
どうしてこうなるの!?
私は今、聖魔力を封じられている。
だから呪うことももう出来ない。
最初からあの女を呪殺するべきだった…!!!
私はただただ、後悔し続けることしか出来ない。




