我が国は狙われやすいらしい
「でも、結局その後どうなりましたの?」
「…占い師は教会の守護騎士の協力を得て捕縛した」
「ふむふむ」
「国中の占い師による洗脳は解けたよ。お香の中毒症状もなくなったから安心して」
「それは良かったですわ!」
それを聞いてホッとした。
けれどヴァレール様とお兄様は難しい顔をする。
「どうしましたの?それ以上に何かありますの?」
「うん、それが…占い師がね、シャルの言っていた通り国家転覆を企てていたんだ」
「え!?」
「我が国はどうにも狙われやすいらしい」
「あの元聖女候補しかり、占い師しかり…隣国も魔女に侵略されかけていたし、なんだか最近おかしなことばかりだ」
我が国が狙われやすいのは仕方がないかもしれない。
聖女の加護が欲しい聖魔力に縁がない国もある。
聖魔力を置いておいても、気候が温暖で自然豊か、農業も漁業も盛んで芸術も花開く国とくれば喉から手が出るほど欲しい国もあるだろう。
あの占い師も、そんな国のトップになりたいと思ってしまったのだろう。
でも隣国もこの間魔女にちょっかいをかけられているし、最近たしかに世界の動きがなんだかおかしい…ように思う。
「…占い師をもうちょっと調べるべきではないかしら」
「裏に誰かがいないかどうか、ということだね」
「ええ」
わたくしはどうしても、一連の流れになにか得体の知れない存在を感じてしまう。
それが聖女の勘なのか、獣人の勘なのかはわからないけれど。
「わかった、再度拷問にかけてみよう」
「ご、拷問…」
「あ…大丈夫、シャルが気にすることじゃないよ」
拷問と聞いて恐ろしくなってしまう。
けれど、国を守るためには必要な犠牲…なのかしら。
「王太子殿下、シャルを怖がらせないでください」
「す、すまない…」
「あ、いえ、わたくしは大丈夫ですわ!ヴァレール様もお兄様も、どうかお気になさらないで」
わたくしがそう微笑みかければ、ヴァレール様とお兄様はホッとした表情。
このまま話題を変えてしまおう。
「ところでヴァレール様、お兄様。わたくしのこれ、似合うかしら」
そういって耳と尻尾をピクピクフリフリすれば、ヴァレール様もお兄様も頷いてくれた。
「シャルによく似合うよ」
「とても可愛いよ、シャル」
「うふふ、良かったですわ!」
ヴァレール様もお兄様も褒めてくださって、とっても嬉しいですわ!
わたくし獣人化した甲斐がありましたわね!
でも、できればもう無茶はしたくないですわ!




