お兄様のお説教
ヴァレール様に送られて屋敷に帰る。
お兄様がわざわざ外で待っていた。
「お帰り、シャル」
「ただいま戻りましたわ!」
「で、わかってるよね?」
にっこり笑うお兄様から圧を感じる。
「えっと、そのぉ…」
「無理はしないでって言ったよね?」
「はい…」
お兄様に叱られる。
しゅんとする私をお兄様は軽々抱き上げる。
「王太子殿下、お手数をおかけしました」
「いや、可愛らしいシャルを堪能できたからこちらは問題ない」
「それは良かった」
「…あまりいじめないであげてくれ」
「いじめません。叱るだけです。では、ありがとうございました」
ヴァレール様は馬車に戻って王宮に帰る。
わたくしとお兄様はそれを見送ってから、屋敷に戻った。
お兄様は中庭でお茶とマカロンを用意していてくれた。
「とりあえずお食べ」
「いいの?お兄様ありがとう!」
「今回もとても頑張ったようだからご褒美だよ」
「わーい!」
「けどね、シャル」
お兄様を見上げれば、目がかち合う。
「頑張るのはいいけど、無理は良くない。わかるよね?」
「…はい、お兄様」
「もう、こんな無茶はしないで。シャルが無事に帰ってくるまでの間、お兄様は心配で心配で仕方がなかったんだよ」
「ごめんなさい…」
しょぼんとして反省すれば、兄様は優しく笑った。
「…わかってくれたならいいんだ。でも、これからは今度こそ無理はしないでね」
「はい」
「さあ、反省会は終わりだ。一緒にマカロンを食べよう!」
「うん!」
兄様は結局わたくしに甘い。
許されてホッとしたわたくしは、マカロンとお茶を味わい尽くした。
甘いものが疲れた身体に染み渡る。
頑張った甲斐があった。
でも、お兄様を心配させないように無茶はせずに済むように頑張らないと。
「お兄様、わたくし大人の身体に戻ったら無茶しない程度に魔力石をもっと作りますわ!それで、何があってもお兄様が心配する必要もないくらい備えを万全にします!ですから今度こそ大丈夫ですわ!」
「魔力石を作る段階でも、無理はして欲しくないんだけどね」
「無理なんかしませんわ!だからご安心なさって?」
ね、と首を傾げればお兄様は頷く。
「シャルがそう言うなら信じるよ」
「ふふ!」
そうと決まれば早く大人に戻りたいですわ!
でも子供の姿に戻っている間はなんだかとても少しのことで楽しくなってしまいますから、このままでいたい気もしますけれど。




