隣国との友好関係
まだ隣国に滞在していたわたくしを、ヴァレール様が迎えに来た。
今は馬車で国に戻る途中。
「ヴァレール様!わたくし頑張りましたわ!」
「誰も幼い姿に戻ってしまうまで頑張れとは言ってないのだけど」
「だって、皆様可哀想なんですもの!」
ヴァレール様に抱っこされて、お説教されてしまう。
「だからって我が国の聖女が他国のためにそこまでしなくても」
「我が国は色々あって、聖女のお仕事は間に合ってますもの。穴埋めも必要ないでしょう?」
「そうだけれど」
ヴァレール様ったら心配性ですわ!
過保護に愛していただけるのも、それはそれで幸せですけれどね!
「ふふ、それに頑張った甲斐もありますわ!」
「隣国との友好関係かな?」
「ええ、わたくしが隣国の英雄となりましたもの!より絆は深まりましたわ!」
「恩を売る、というと語弊があるかな。でもそういう流れになったね」
「ええ!それで、それで!」
気持ちが逸る。
はやくヴァレール様に報告したい。
「それで?」
「なんと、わたくしへのお礼にと特産品を貿易してくださることになりましたの!」
「…まさか、あの鳳凰の羽根!?」
「そうですわ!」
鳳凰の羽根とは、その名の通り幻獣である鳳凰の羽根。
煎じて飲めばどんな病でも治るとされる。
鳳凰は隣国の山に腰を下ろして、移動する気配はない。
だから鳳凰の羽根は隣国が独占していた。
それを貿易してくれるとなれば、国にとってはありがたいことこの上ない。
「シャルは本当にすごいな…」
「うふふ。お役に立てましたか?」
「すごく役に立ってくれたよ」
ヴァレール様に褒められて気分が良くなる。
「うふふ、わたくしヴァレール様のお役に立てて幸せですわ!」
「もう、シャルはどうしてそんなに可愛いの」
ヴァレール様はそう言ってわたくしを抱きしめる。
「あら」
「愛してるよ、シャル」
「わたくしもお慕い申し上げますわ、ヴァレール様っ」
ぎゅっと抱きしめ返す。
「でも、あまり無理はしないでね。小さなシャルももちろん愛しているけれど、大きなシャルも変わらず愛しているのだから」
「ふふ、わかりましたわ!頑張りすぎない程度に頑張りますわ!…あ」
「ん?」
「お兄様と無理しないって約束したのに、怒られちゃうかしら…」
「あらら…」
ヴァレール様はわたくしの頭を撫でる。
「シルヴェストルがシャルを怒ることはないと思うけれど、叱られたり諭されたりはあるかもね」
「ふぇ…」
「まあでも、まじめに反省したら大丈夫だよ」
「うう…そうですわね、反省いたしますわ…」
しょんとしたわたくしに、ヴァレール様は苦笑い。
お兄様と会うのが億劫ですわ…でもわたくしが悪いから仕方がありませんわね…。




