感謝される
「王太子殿下!」
「あ、シャルロット嬢…ミーシャ」
ばつが悪そうな顔をする王太子殿下。
ミーシャ様もそんな王太子殿下にどこか居心地が悪そう。
「それですわ、王太子殿下!」
「え」
「ミーシャ様はせっかく王太子殿下のことをお許しになって、おそばに居たいと仰ってくれていますのに!」
「え」
「なのに肝心の王太子殿下がそんな態度では、ミーシャ様はどうしたらいいかわからないですわ!幼くなったわたくしだって、お二人の間の空気が気まずいのはわかりますわ!もっともっと王太子殿下から歩み寄りなさいませ!」
ぷんぷんとわたくしが怒ってそう言うと、王太子殿下は目をパチクリしたあと何故か笑う。
「ふは、幼くなった貴女はすごいな」
「わたくしよりまずはミーシャ様ですわ!」
「ミーシャ…本当に、今回の件はすまなかった」
「王太子殿下…私は、怒っていません。王太子殿下は被害者ですもの」
「でも、僕が油断していたから惚れ薬入りのクッキーなんかを食べてしまったのだし…」
王太子殿下の言葉に、ミーシャ様ははっきり言う。
「そうですわね。それはこれから気をつけてくださいませ」
「ああ…」
「ですけれど、それでも。私は、王太子殿下のことを心から愛しています。王太子殿下が、それまで私を大切に愛してくださったからです」
「ミーシャ…」
「だからもう一度きちんとやり直したいのです、王太子殿下」
ミーシャ様は王太子殿下の瞳を見つめて言った。
「今度こそ、仲直りしてくださいませんか?王太子殿下」
「ミーシャ…!」
ぎゅっと王太子殿下がミーシャ様のことを抱きしめる。
「え、え、王太子殿下!?」
「ミーシャ、愛してる…本当にごめん」
「王太子殿下…」
すっかりお二人の世界ですわね。
仲直りできたようでわたくし、ほっとしましたわ。
「シャルロット嬢…本当にありがとう」
「ありがとうございます、シャルロット様…!」
「ふふ、いいんですのよ!お二人が幸せそうでなによりですわ!」
感謝されるというのは、とても嬉しいことですわ!
ああでも、他の被害者の貴公子たちとその婚約者の皆様もなんとかうまくいっているといいのですけれど。
さすがにわたくしは全員のところに首を突っ込むわけにもいきませんものね。
「シャルロット嬢は本当に我が国の救世主だ。出来る限りのお礼は必ずさせていただく」
「さらに、私と王太子殿下のキューピッドでもありますね。私も個人的になにかお礼ができるように頑張りますね」
「そんなの気にしなくていいですのに」
二人とも律儀ですのね。




