隣国の魔女
隣国の魔女の残した傷跡は大きかった。
あの魔女は、ほかの貴公子たちにも手を出していたらしい。
それどころか、手当たり次第に惚れ薬入りのクッキーを配っていたので魅了の被害の把握すら難しい。
ということで、隣国にはまだ正式な聖女がいないためわたくしが派遣された。
今まで貯め込んでいた魔力石を全て使い、あとちょっと無理もして隣国の全土に魅了の被害を回復する力を使った。
「シャルロット様、この度はありがとうございました!」
「いいのよ!わたくし、みんなの役に立てて嬉しいわ!」
結果、隣国の民に広がった魅了は解けた。
その代わりわたくしはまた幼くなってしまった。
でも、わたくしはわたくしのままだから大丈夫!
今は小さくなったついでに、ミーシャ様に会いに来ている。
「それよりミーシャ様、大丈夫?大分傷ついたでしょう?」
「ええ…正直、かなり辛かった日々でした。ですが、わたくしはそれでも王太子殿下を愛しております。だから大丈夫なのです」
「それならいいのですけれど.」
「耐えてきて本当に良かった。また王太子殿下のそばに居られるようになって、私は幸せです」
「ミーシャ様ったら、健気ね」
そんなミーシャ様の頭をよしよしと撫でる。
「ふふ、小さくなったシャルロット様は本当にお可愛らしいですね」
「そうかしら?」
「大きくても素敵な方ですけれど、小さなシャルロット様もとても素敵です」
「ふふ、それは良かった!」
「シャルロット様には、感謝してもしきれません。我が国にとって、もはや英雄です」
そんなことを本気で言うミーシャ様に笑う。
「ふふ、そんなに褒めても何も出ませんわ!」
「もう既に十分に助けていただきました」
「ふふふふふ!」
褒められると言うのはやはり、良い気分!
だけど…。
「でも、実際魅了にかかって浮気をしていた貴公子の婚約者たちは辛い思いをしたでしょう?よりを戻すのかしら?」
「人によってはそのまま相手有責で婚約破棄した方もいますし…むしろ婚約破棄したのを魅了のせいだったからと復縁する方もいます。人によりますね」
「そうよね…ミーシャ様は、大丈夫?」
「私は本当に大丈夫です。ただ、王太子殿下がよりを戻してからもなんだかぎこちなくて…」
「なるほど、それは大変!わたくしがなんとかして差し上げますわ!」
「え?」
きょとんとするミーシャ様を立ち上がらせて、手を取る。
「王太子殿下のところに突撃ですわ!」
「ええ!?」
わたくしはミーシャ様と王太子殿下の仲を取り持つべく、王太子殿下のところに向かった。




