隣国との交流
今日は隣国の王家との交流がある。
我が国と隣国との間には色々な歴史があるが、我が国が他国からの侵略を防ぐための結界を張るようになってからは穏やかな関係が続いている。
今では隣国も聖女制度を導入して、他国からの侵略を防ぐための結界を張っている。
お互いに不可侵条約も結んでいるので滅多なことは起こりえないだろう。
異文化交流もかなり進んでいる。
「よく来てくださいましたね」
「楽しんでいってくださいね」
国王陛下と王妃殿下が隣国の国王陛下と王妃殿下を温かく迎える。
「またお会い出来て光栄です」
「よろしくお願いしますね」
わたくしとヴァレール様も隣国の王太子殿下を迎える。
だが、いつも王太子殿下とご一緒のはずの婚約者であるミーシャ様の姿が見えない。
代わりに、隣国の聖女に選ばれたという少女が王太子殿下の隣に立っていた。
「紹介します。こちらは僕の愛する聖女です」
「よろしくお願い致します」
にこっと笑う聖女様。
けれど、わたくしは王太子殿下の言葉に耳を疑ってしまった。
「愛する、ですか?」
「ええ。僕はこのルシアを心から愛しています」
「…」
おかしい。
だって王太子殿下は以前は、本当に心から婚約者であるミーシャ様を愛していらしたのに。
けれど、聖魔力を使った魅了の呪いの気配は感じない。
どういうことだろう。
でも、ここで口出しをするのは得策ではないことはわかる。
「…そうなのですね!よろしくお願い致します」
にこっと笑う。
敵意は見せてはいけない。
その上で、王太子殿下と聖女様をよく観察しよう。
もし本当に心変わりしただけというのなら、残念だけれど仕方がない。
でもそうでなければ…なんとか解決できないか、頑張ってみよう。
「さっそくですが、まずは我が国の料理を楽しんでいってください」
まずは昼食。
移動で疲れた身体には、美味しいものが一番効くだろう。
わたくしたちは部屋を移動して、料理を堪能することになった。
王家に仕えるシェフの出す我が国の郷土料理に舌鼓を打つ。
そこで様子を伺ってみたが、あちらの国王陛下や王妃殿下も聖女様の存在に対してマイナスのイメージはない様子。
「…シャル、魅了の気配は感じたかい?」
ヴァレール様にこそっと言われて、小さく首を振る。
ヴァレール様もあちらの様子に何かを感じたようだけれど、魅了の呪いの気配はないのははっきり伝える。
「けれど、なんだか様子が…」
「そうだね、とりあえず何か変なところはないか見守ろう」
「はい」
なんとか解決できるといいのだけど…。




