二人の内心
「私たちの息子と娘は、どちらも頑張り屋さん過ぎるな」
「ええ、そうですわね」
妻と晩酌をしながら、そんなことを話す。
「ジズは将来爵位を継ぐからと言って勉強熱心だし、シャルは王太子殿下のために身を呈してまで呪いを解いたし」
「二人ともいい子なのですが、だからこそ心配ですね」
「まあシャルの方は、無理をし過ぎないようジズが注意しているからしばらくは大丈夫だろうけれどな」
「ジズのシスコンが過ぎるところはちょっと別の意味で心配ですが…」
「なに、ジズはアデール嬢と仲睦まじく過ごしているから心配いらないさ」
私たちのようなおしどり夫婦になるよ、と言えば妻は頬を染める。
「もう、旦那様ったら…」
「ふふ、可愛い」
「旦那様っ!」
妻が今日も可愛い。
「シャルも、最近は王太子殿下と上手くいっているようで安心したな」
「ええ、本当に…前の王太子殿下は、正直本当にシャルを幸せにしてくださるのか心配でしたから…」
「シャルの幸せを考えての婚約だったが、一時は後悔した日もあったな」
「ですが、今では良かったと思えるようになって本当に良かった」
「そうだな」
妻に尋ねる。
「ところで、どうして王太子殿下にシャルと会うようお願いしたんだ?」
「それはもちろん、シャルのためですよ」
「それはわかるが…」
「シャルが一番喜ぶのは、やはり愛する方と過ごせる時間を作ることだと思いましたし…身を呈してまで王太子殿下をお守りしたのですから、そのくらいのご褒美はあっていいと思ったのです」
「うむ」
妻の言う通りだ。
そのくらいのご褒美はあってもいいはず。
「結果的に、それが良い方向に進んで良かったです」
「そうだな。しかしまさか王太子殿下にそんな趣味があったとは…」
「いえ旦那様、さすがに王太子殿下はロリコンではないかと…」
「そうだろうか」
「きっと、多分、おそらく、めいびー…違うと思います。いつも以上に素直で可愛いシャルの本音に触れて心を動かされただけで…幼い姿にときめいたわけでは…」
まあ、大人に戻ってもシャルを愛しているあたり王太子殿下もロリコン趣味というよりシャルに惚れ直したと言った方が正解だろうか。
「ですが、シャルを溺愛するようになった経緯が経緯ですから王太子殿下も相当勘違いされるでしょうね」
「まあ、それもすぐに払拭できるだけの度量がある方だ。大丈夫だろう」
「そうですわね。王太子殿下にはしっかり頑張って、シャルを幸せにしてもらわなければいけませんし」
「そうだな」
どうか我々の娘が、これからもっと幸せになりますように。




