お父様とお母様
お父様とお母様も、幼くなっていた間わたくしを溺愛していた。
『シャル、こんなに小さくなってしまって』
『お父様、大丈夫。わたくし幼くなってもわたくしのままよ?それにすぐに元に戻るわ!』
『そうね、すぐに元に戻れるわ』
『ふふ、ね、お母様!』
幼くなったわたくしを心配するお父様とお母様を励ますわたくし。
お父様とお母様はそんなわたくしの頭を優しく撫でる。
『シャルは頑張り屋さんだから、今回のことが少しでも休息になればいいのだが』
『そうですね、旦那様』
『ふふ、ヴァレール様の婚約者としてのお勉強や、聖女候補としてのお務めもないもの!十分な休息だわ!』
『シャル、大人に戻っても頑張りすぎる必要はないのよ』
『もう、お父様もお母様も心配性なんだから!』
そんなお父様とお母様も大好きよ!と言えば、お父様とお母様も笑ってくれた。
『今日はシャルの好きなご飯にしましょうね』
『いいの?わーい、お母様大好き!』
『今までシャルには苦労ばかりをさせてしまったからな、これからは少しでも甘やかしてやりたいものだ』
『ええ、そうですわね』
『ふふ、シャル頑張ってる?偉い?』
わたくしがそう聞けば、お父様とお母様はにっこり笑って頷いた。
『頑張り過ぎなくらい頑張ってるよ』
『偉いわ、シャル』
『ふふ、ヴァレール様に相応しい淑女?』
『もちろんだ』
『見た目も中身も最高の淑女よ』
お父様とお母様の言葉にわーいとはしゃぐわたくしに、お父様もお母様もまたわたくしの頭を撫でた。
『それでな、シャル。一つ聞いておきたいんだが』
『ええ、なにかしら?お父様』
『シャルはこれからも王太子殿下をお慕いし続けるのか?ほかの相手を選ぶ選択肢はあるのか?』
『そんな選択肢ないわ』
ぴしゃりと言い放つわたくしに、お父様は固まる。
『あ、ち、違うのお父様!わたくし怒ってないわ!』
『そ、そうか』
『でも…ごめんなさい。わたくし、誰に何度尋ねられてもヴァレール様を諦める気はないわ。わたくし、ヴァレール様の隣にいてヴァレール様のお役に立つことが夢なの』
『そうか…』
『でもわたくし、最近ヴァレール様に愛されてさらに幸せよ。だから心配しないで』
わたくしがそう言うとお父様とお母様がほっとした表情になった。
お父様とお母様もわたくしを溺愛するようになったヴァレール様を見ているから、それでだろう。
『でも、思うところがあれば一人で抱え込まないでお父様たちに言うんだぞ』
『ええ、わかったわ!』
わたくしが頷けば納得してくれたらしく、それ以降はヴァレール様とのことはなにも言われなくなった。




