大切な人を助けるために
「シャルロット!聖女候補であるエマに嫌がらせをするとは何事だ!貴様には愛想が尽きた!貴様との婚約は破棄だ!」
ヴァレール様は、エマ様の肩を抱き寄せ私にそう宣言した。
この、ヴァレール様の誕生日パーティーの場で。
勝ち誇った顔で私を見つめるエマ様。
わたくしは…もう、諦めた。
わたくしの命を。
そのかわり、ヴァレール様は返してもらう。
「そうですか…わかりました」
「ふふ」
「それならば、わたくしも好きにさせていただきますわ」
エマ様がさらに笑みを深める。
だが、わたくしは負けを認めるわけではない。
肉を切らせて骨を断つ、という作戦だ。
わたくしの命と引き換えに、ヴァレール様を元の国を想い民を想う優しい王太子に戻す。
絶対に。
「ヴァレール様に掛けられた魅了の呪いを、わたくしの命と引き換えに解いて差し上げますわ」
「…は?」
「貴様、何を言って…」
戸惑うヴァレール様に微笑む。
エマ様は焦り出すがもう遅い。
「…」
わたくしは祈りの力を発動した。
エマ様は聖女候補ではあるが、わたくしも聖女候補。
エマ様ほど力が強いわけではないので、エマ様の掛けた呪いを解くならば命がけになるが…必ず成功させる。
そして、光がヴァレール様を包み込む。
ヴァレール様は目を覚ました。
「ああ、僕は一体どうして呪いなどに負けてしまっていたのか…シャルロット嬢。清廉な君が嫌がらせなんてするはずがないのに…騙されてごめん。婚約者である君を蔑ろにして、無実の罪まで被せようとしてしまった」
「いえ、いいのです」
「その上愛してもいない女性に愛を囁いていたなど、吐き気がする。助けてくれてありがとう」
「はい、お救いできてよかった…」
「…シャルロット嬢?」
愛する可愛いお方の無事を確認して、わたくしは意識を失った。




