君の義姉は見かけによらないね
「シャル」
「はい、ヴァレール様」
「君の義姉は見かけによらないね」
ある日、いつも通りにヴァレール様と過ごしていたら急にお義姉様の話になった。
「なにかございましたか?」
「いや、たまたま会う機会があって留学の話を聞いていたんだ」
「あら」
「色々な話を聞けていい刺激になったよ」
「それはなによりです」
お義姉様は将来お兄様と結婚した時少しでもお兄様の役に立ちたいと言って、様々なことを学ぶため留学した。
だからそれは納得なのだけど…見かけによらないとはどういうことだろう。
「留学の話を聞けたのはすごく楽しかったし勉強になったのだけど、シャルやシルヴェストルの話になったら様子が違ってね」
「まあ」
「特にシルヴェストルの話をする時なんてもうすごく恋する乙女オーラが出てたよ」
「ふふ、お義姉様ったら。本当に可愛らしいですよね」
「可愛らしいね。婚約者にはあれだけ愛されているなんて、シルヴェストルも幸せ者だ。僕にとってはシャルこそ一番可愛いけれど」
「も、もう!ヴァレール様ったら!」
思わぬ流れ弾にあたってしまった。
ヴァレール様は相変わらずわたくしに甘々なのだ。
「そうそう。今度彼女がシルヴェストルのところに行く日と僕が君のところに行く日が被ってるみたいだ」
「まあ」
「シルヴェストルの前の彼女が見られるかもしれないな」
「ふふ、とても可愛らしいですよ」
「普段のクールな彼女からは想像もつかないけれどね」
ヴァレール様ったら、興味津々の様子。
でもたしかにお義姉様の可愛らしいところが見たい気持ちはわかる。
お義姉様の普段のクールな面と違う愛らしい乙女のような様子はなかなか見られないから。
「それよりシャル」
「はい」
「はい、あーん」
「あ、あーん」
相変わらずわたくしに手ずからお菓子を食べさせるのが好きなヴァレール様。
「美味しいかい?」
「美味しいです…でも恥ずかしいです…!」
「ふふ、可愛い」
「ヴァレール様ったら」
「ほらあーん」
「あ、あーん」
もきゅもきゅお菓子を食べるわたくしに、ヴァレール様は心底幸せそうな表情を向ける。
そんなヴァレール様に、恥ずかしいと思いつつも幸せを感じてしまう。
「愛してるよ、シャル」
「ヴァレール様…わたくしもお慕い申し上げております」
今日もわたくしはヴァレール様に愛されてとても幸せですわ。