わたくしが聖女となることになったそうですわ
「シャル、少し相談があるんだ」
「はい、ヴァレール様」
いつものヴァレール様との交流の日。
ヴァレール様は少し不安そうな顔をする。
だからわたくしは、ヴァレール様の手を両手で包み込んだ。
「シャル…?」
「わたくし、きっとどんなお話をいただいてもヴァレール様を嫌ったりしませんわ。だから大丈夫です」
「…ありがとう」
そしてヴァレール様は、少しの沈黙の後話し出した。
「君の前であの女性の話はしたくなかったが…エマ嬢が今どうなっているかは知っているね?」
「はい、牢に入れられているのですよね」
「そう。だから…彼女は明日、正式に聖女候補ではなくなる」
「はい」
頷く。
犯罪者は聖女にはふさわしくないとの判断だろう。
「君が聖女になるんだ」
「…はい」
「君にはこれから…僕の妃として、聖女として。僕とともに国を支えてもらわなければならない」
「………はい」
本当ならエマ様が聖女に選ばれるはずだった。
本来よりも、かなりの重責を担うことになる。
けれど元より覚悟は決まっている。
「やり遂げてみせますわ、ヴァレール様」
「…シャル。負担ばかり掛けてごめんね、愛してる」
頬へのキスを受ける。
嬉しい。
こんなにもわたくしはこの方が好き。
この方の隣に立てるなら、そのくらいの重責はきっとなんともない。
「それでね、今は牢にいるエマ嬢から聖魔力を奪って魅了の呪いの研究をしているのだけど」
「はい」
「聖魔力を奪うというのは、かなりの苦痛になるらしい」
それはそうだろう。
わたくしも聖魔力の使いすぎで幼くなったほどだから。
「もし、正気の彼女と話をしたいなら今のうちだよ」
「…!」
「どうする?」
ヴァレール様に問われて、わたくしは彼女と話をする機会を与えていただくことにした。