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短編・ショートショートシリーズ

鳴かず飛ばず

作者: 古野ジョン
掲載日:2023/10/16

 彼女はいつも泣いていた。

自らの運命を恨み、生を授けたこの世界を呪った。

彼女の口癖は、「鳥になりたい」だった。

学校の屋上で地面を見つめては、そう呟いていた。


 俺は、彼女が何を願うのか察していた。

けど、それを止めようとは思わなかった。

そんな権利、俺には無いと思ったから。

何より彼女にとっては、自分で決められる唯一の選択肢だったから。


 彼女はいつも泣いていた。

自らの家を恨み、生を授けた両親を呪った。

彼女の口癖は、「鳥になりたい」だった。

校庭を飛び交う鳩を見つめては、そう呟いていた。


 俺は、彼女が何を求めるのか察していた。

けど、それを叶えようとは思わなかった。

そんな度胸、俺には無いと思ったから。

自由に飛び立つ彼女を、見送ることなんて出来なかったから。


 止めはしないが、送り出しもしない。

優柔不断な自分に、やきもきとしていた。


 だがある日、俺は翼を見た。

屋上に上がると、白い翼を揺らす彼女がいた。

その翼はどうしたの。

分からない。神様がくれたのかしら。

彼女はそう言って、微笑んだ。


 鳥になれたんだ。

俺は自分のことのように喜んだ。

この屋上から、彼女は飛び立つ。

もう泣くことはない。

墜ちることなく、その翼で飛んでいく。


 彼女も微笑んだ。

愛おしく、自らの翼を眺めた。

けど、俺の喜びとはどこか距離を置いていた。


 彼女は屋上の端に立った。

ありがとう。けど、私は鳥になれたわけじゃない。

そう言って、翼を広げた。

人間が翼を持ったって、太陽に溶かされちゃうのよ。


 待って。

俺がそう言う前に、彼女は飛び立った。

高く高く、天まで届くくらいに。

太陽にだって、手が届きそうなくらいに。


 彼女はもう泣かない。そして、飛ぶこともない。

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