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前世は手榴弾ですか?

そんな俺など陽気なマッチョ兄貴ズは気に求めず、意気揚々とポージングを始める。

とりあえず何か召喚した事に驚きと希望のどよめきをあげる町の人々。



「よ!ナイスバルク!!」



そこにハックが掛け声をかける。

マッチョ兄貴ズはその声に色めき立ち、ふんすと鼻息荒くポージングに熱を上げる。


「ほら!教えただろ?!あんた等もマッチョに声掛けして!!」


ハックが急かすと、戸惑いながら町の人々が掛け声を言い始める。



「キレてるキレてる!」


「仕上がってるねぇ!」


「いい血管出てる出てる!!」


「デカイ!デカイよ!!」



人々の声にマッチョ兄貴ズのマッスルソウルは光り輝き、次々とポージングを決めていく。


見せつけられる筋肉。

ゴリゴリの肉体美。


始めは戸惑いながら声掛けをしていた人々もマッスルソウルの輝きに当てられ、段々とテンションが上がっていく。



「なんて素晴らしい上腕二頭筋!食べきれないわ!!」


「土台が違う!!」


「筋肉、贅沢特盛りすぎ!!」


「両肩に小熊飼ってんのかい!!」


「腹筋の部屋割り多すぎ!!」


「手羽先の完全最終形態!!」


「足がニンニク!!」


「パツパツ巨乳~!!抱きしめて~!!」


「背中に鬼の顔!!」


「筋肉の徳が高すぎる!前世で世界でも救ったんかい?!」



大盛り上がりの町の人々。

すでに森から現れた魑魅魍魎の事など眼中にない。

その声に応えるようにマッチョ兄貴ズは光り輝き、ノリノリでポージングを決めていく。

兄貴達の筋肉はパンプアップされすぎて、はちきれんばかりだ。

その体は汗でしっとりと濡れ黒々と輝いている。


俺はそれをげんなりと見つめる。

光り輝くマッチョ二人……。

自分で召喚したんだが、やはり慣れない……。

口の中に酸っぱいものがこみ上げてきているがそれをぐっと飲み込んだ。


マッチョ達の体が一回り大きくなり輝きが点滅する。

ノリノリな町の人々のお陰で十分なパワーが充電されたようだ。


俺は最後の気力を振り絞り、声高らかに叫んだ。



「さぁ!皆様ご一緒に!!……筋肉は裏切らない!!」


「「筋肉は裏切らない!!」」


「筋肉を崇めよ!言葉より行動で示せ!!」


「「筋肉を崇めよ!言葉より行動で示せ!!」」


「筋肉の扉は自らの筋肉で開けよ!!」


「「筋肉の扉は自らの筋肉で開けよ!!」」



町の人々は異様なハイテンション。

感極まって泣き出し祈っている人さえいる。


まるで先導者のように振舞っている俺だが、心の中は大寒波が吹き荒れている。

しかしそんな事はおくびにも出してはならない。

擦り切れそうな精神を無理やり引っ張り上げ、俺は叫ぶ。




「マッスルパワーッ!!」


「「パワーッッ!!」」




ハックが先に教えてあったのだろう。

俺の声に応えるようにパワーと叫んだ人々は、本当に力を送るようにマッチョ兄貴ズに向けて手を翳した。


そこで俺は能力を第二段階に切り替える。

光が瞬き、筋肉をパンパンにした兄貴達に人々の願いがこもったマッスルソウルを集めて入れ込む。


その瞬間、兄貴達の体は眩いばかりに光り輝き、暗い夜を瞬間的に真っ白くした。





「召喚変化!!金剛力士二王!神降!!」





光がおさまると、そこには神々しい2体の金剛力士が現れた。

お寺なんかを守る仁王様達だ。


ムキムキの肉体。

そして神々しい光に包まれたその姿に、町の人々は跪いて祈りを捧げる。

仁王様達は町の人々に目を向け頷いて見せると、呆然としていた魑魅魍魎達を颯爽と昇天浄化していく。

無駄のない筋骨隆々な腕っ節が夜闇を切り裂く。


俺の役目は終わった……。


がっくりと膝をつき項垂れる。

襲いかかる羞恥心に叫びそうになりながら、仁王様達が悪霊を消し去って行くのを眺めた。



そう、俺の能力は神降ろしだ。



この世界に引っ張られた際、世界神が俺に授けた能力。

俺は元の世界の神仏をこちらの世界に召喚できる。




……ただしマッチョに限る。




ただし、マッチョに限るのだ……。

(号泣)

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