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そしてふりだしに戻る

「さようなら~!!」


「ありがとうございました~!!」


「道中、お気をつけて~!!」


「筋肉は裏切らない!!」


「筋肉の御加護をお祈り致します~!!」


……最後の方は聞かなかった事にしよう。


深刻な雰囲気から一転、満面の笑顔で筋トレをしながら見送りをする町の人々。

そこにはポジティブさと生命力が溢れている。


「……これだけ皆が明るく前向きでエネルギッシュなら、死霊も寄り付かないどころか裸足で逃げそうだな?!」


「俺も逃げ出したいよ……。」


盛大に人々に見送られながら、俺はとぼとぼと町を後にする。

ああ……着いた時は辛気臭くてどんよりしていた町が、無意味に筋肉に活気づいてしまった……。

そりゃ死霊の脅威から助けたのは俺だし、陰気な俺でも別に人々の不幸を願っている訳ではないので、自分にできる事があるなら助けたいと思う。


助けたいとは思うけどさ?!

なんで方法がアレなの?!


自分の仕出かした小っ恥ずかしいパフォーマンスを思い出し、羞恥心が蘇る。

そして助けたいとは思うけど、別にこんなガラッと雰囲気を変えてしまいたいと願っている訳じゃないのだ。

なんでもっと静かに除霊して、静かになんとなく皆が救われて、なんとなく少し雰囲気が良くなって、なんとなく感謝されて静かに立ち去る事ができないのか……。


「……なんで毎回こんな事に……。」


「お前さぁ~、いい加減、自分の力に慣れろよ?!」


「慣れるかよ?!こんな能力!!」


「なんでだよ?!ここまで現状を一新させられる除霊能力なんて!!俺の知る限りお前だけだぞ?!」


「極端なんだよ!!1か0かぐらい極端なんだよ!!死霊に飲まれそうなくらい陰湿になっていたのに!!次の日にはこれだよ?!なんかもっとこう……ソフトな感じじゃないの?!除霊・浄化って?!」


「だから!!それだけお前の能力が強いんだっての!!除霊・浄化しただけでなく!人々の生命エネルギーにまで影響を与えて!人々や村や町全体を死霊が近づきにくい状態にまで一気に回復させるんだぞ?!普通なら何年も何十年もかかるってのに!お前はそれを一回の召喚除霊でできちまうんだよ!!そんな霊媒師!お前以外いないっての!!」


「俺だって好きでそんな大回復させてるんじゃない!!もっとソフトな能力がいい~!!パフォーマンスも恥ずかしいし!!だいたい何で?!何でマッチョ?!荒ぶる筋肉!怖すぎる~っ!!」


べそべそと半泣きになる俺。

それを呆れたように眺めるハック。


「もう嫌だ~!こんな能力、いらない~!!」


「……何でコイツなんだろうなぁ~。神様もよくわかんねぇ事すんよなぁ~。」


「だから!ハックにあげるってば!!」


「う~ん……。まぁ……貰えるもんはもらうけどさぁ~。」


「うぅ……早く神殿に行きたい……。」


うじうじ根暗な俺にハックはため息をつく。

そんな事言ったって仕方ないだろう?!

陰キャな俺には荷が重いんだよ!!


神様を召喚できるのはいいよ?!

でもなんでマッチョ限定?!

そして召喚の仕方も問題ありすぎなんだよ!!

なんで毎回毎回あの恥ずかしいパフォーマンスをしなきゃならない?!

何が悲しくて筋肉を称え筋肉を崇めなきゃならないんだ?!

絶対、俺!筋肉伝道師とか思われてるぞ?!

そしてなんで毎回、人々は筋肉に染まっちゃうんだよ?!怖いよ!!


そんな俺にハックの蹴りが飛ぶ。


「痛い!!」


「ぐじぐじ悩んだって仕方ねぇだろ?!しゃんとしろ!イチル!!」


「だからっていちいち蹴るなよ!」


そうやってまた、俺はいつものようにハックに追い立てられながら旅を続ける。

目的の霊峰神殿は、俺達の足ではまだまだかかりそうである……。






~Fin~

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