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(不本意ながら)悪魔になりました  作者: 四藤葉 美優
5/5

王太子

「さすが王立おうりつ図書館、この世界に数冊しかないような本ばっかりだわ...」



 これも、これも、と無我夢中で手に取った本を片っ端から読みまくる

 ここの本は、本来は持ち出し禁止なのだが、天使を父に持つ私は特別に許可されているらしい

 父という名の、従兄が言っていた


 私は、この国に来た時、なぜか私は五歳児だった

 しかも、すごく体が弱かった

 父という名の、従兄からは、天使や悪魔が住んでいるところと空気が違うかららしい


 前世のおかげで、マナーは完璧

 教養も、天使になってからも多少はやっていたので、完璧

 とまあ、そんなわけで、私についていた講師たちはことごとく退散

 その講師たちが、私のことをいろんな人に噂するように言ったらしく、『深窓の幻令嬢』などと、私は呼ばれている

 社交界などのイベントは体調を崩してしまうため、不参加ばかりで、王族主催の強制参加のも、発熱とかで行けなかったりと、私の顔を知っている人は少ない


 初めてこの王宮に来た時は、いとこときたため、そのあとからは顔パスになった



「はぁあ、にしても、ここにある本を持っていっても良いなんて、最高...!」



 司書さんは、王弟殿下だったこと以外は、感動まみれの図書館だ

 実はこの国、数百年前に会った革命の数年後から女性の人口が減っていて、まさかと思い世界的にみたが、減少していた

 一妻多夫の人々が増えてきていた


 また、魔法を使える人物の人口も激減している

 魔法はイコールで自然現象を意味する


 魔術というものがあり、それは一族に継承されるその一族以外が使えないもので、そういう(・・・・)一族は5家もないようだ



「...どっちも使える」



 実を言うと、前世で魔術を継承していた

 体が変わっても魔術が使えるようだったので、一安心したのはここだけの話だ


 王立図書館に来ているのは、前世で死ぬ前までに最終巻が出なくて読めなかった本を読みたいのだ

 現代では古いだろう本で、そういうものが、この王立図書館にあるのだ

 王立図書館は王宮にしかないので、登城の許可がないものは入れない


 貴族で良かったと思う

 そして、いとこが凄腕宰相のおかげだ



「『茨の貴公子の契約結婚』が、こんなにあるなんて!!」



 実は私が死んで2日後に発売される本が、最終巻だと思っていた

 しかし―――



「まだあと6冊もでてたの...!?」



 最終巻、と連呼していたのに最終巻じゃなかった

 膝からガクリと崩れおちると、前世を思う


―――ごめん、前世の時の宰相


 私のお墓にはお花を置くついでに言っただろう


―――『最終巻では...なかった、ですね...』


 絶対、哀れな人を見るような目をしていただろう

 いや、人ではなく、墓だったね...



「これは流石に全部、読めないし...」



 王立図書館は5冊まで、持ち出しができる

 一冊だけ読んで、あとは持って変えるという方向でいいだろう

 図鑑ほどの分厚さが一冊一冊あるため、腕をプルプルさせながら、6冊持って、机に置く

 目を輝かせて読んでいくと、登場キャラに違和感を覚えた


―――新キャラが、前世の私がもとになっているような気がするのは気のせいだろうか...

―――それに、この新キャラの側近...



「......」



 ふと考えこむと席を立ち、歴史分類でこの国の歴史の本を探す

 背表紙を指と目で追っていき、しゃがんでテクテク横歩きをしていく



「あ、あった...!」



 目的の本を引き抜き、目次をみてページを開く



「...知らない名前ね、気のせいかしら?」



―――ルーナベルク初代王妃の名前は...イベリス



 本をもともとあった場所に戻すと、席へと戻る

 椅子を引いてストンと座ると、続きから読み始めた



―――うーん、やっぱり似ている気が...



 コツコツという音がふと耳に入り、自然と顔を上げると赤色の、紅葉が似合いそうな髪が視界に入った

 緑交じりの海のような色の瞳は光の反射でなのか、きらきらと光っているように見える



「......」

「......」



 誰だろうか、と考えてぼーっと見ているも、相手も名乗る様子はない


 初対面の男女間において、互いの間を取り持つ人物がいない場合は男性から名乗るのが常識だ

 なぜ彼は何も言わないのだろうか



「あの...」

「っ...!」



 次の瞬間、彼は走って―――転んだ


 正確にはここの司書である王弟殿下に足を引っかけられて、転んだ

 驚いて立ち上がったまま、思わずポカンとしてしまうのは致し方ない

 転んだ彼はフラット立ち上がり、こちらへ歩いてくると私の前で止まるので、令嬢っぽく姿勢を正す



「初めまして、私はアレクシス・ハルト・ルーナベルク。一応はこの国の王太子だ」



―――王太子...!?


 今考えればわかる

 王立図書館は王族か、許可のあるもの以外は入れない



「っ...お初お目にかかります、ルーシャ・アイリス・アンジェルと申します」

「...君も神託名なのか」

「はい...」



 ここで沈黙が走る

 彼は話題を探すように目を彷徨わせている



「...さっきは逃げるようにしてごめんね、君があまりにもかわいらしかったから、恥ずかしくなってしまったんだ」

「な...!」



 なぜかこちらまで恥ずかしくなるようなことを、彼はサラッという

 右手で口元をおおってキッとにらみつけるも、クスっと笑うと私の右手をとる


―チュッ


 左ほおに、柔らかい唇の感触が...


―――『チュッ』!?


 思わず左手で口づけられた場所を覆うと、またも彼をにらみつけてしまう

 そして彼はやはりクスっと笑うと、とっていた私の右手を持ったまま跪く



「ひゃぁ...!」



 手首に口づけた

 彼は跪いていることもあってか、上目遣いでこちらを見ながら言った



「そろそろ行かなければいけなので失礼します。またお会いできる日まで...ルーシャ」

「よ、...」



 彼はすっと立ち上がると、今度は優雅に立ち去った


―――呼び方ーーーーー!!


 呼び捨てにされた

 王太子なので、致し方ないとはいえ...致し方ないのだろうか...?

 その時ふと、王弟殿下と目が合う



「あ...」



 さらっと目をそらされて、すべて見られていたことを悟る

 顔が真っ赤になっているのが、自分でもわかった

 両手で顔を覆ってしまうが、手首に口づけられたことを思い出して、話してしまう


―――ん? この跡は...



「きっ...!」



 心の中で絶叫する


―――キスマーク!?


 そういえば、チクッとした感覚があったような...

 お母様の言う通り、手袋をしてこればよかった...


 といっても、後悔したところで時すでに遅し



「はぁ...」



――そのあと、小説を読んでも内容が入る様子はなく、家へ帰る時間となった






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