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(不本意ながら)悪魔になりました  作者: 四藤葉 美優
4/5

悪魔の仕事

「はぁぁぁぁぁああ」

「デジャヴ」

「...アンジェル公爵家に行くことになった」

「ふーん......は!?」



 本を読んでいた彼は、馬耳東風ばじとうふうをすることができない単語に大きく反応して、顔を上げた



「ちょっと...本読んでる時の強いままの目力で見ないでくれない?」

「いやいやいやいや、だって...なぁ?」



 わかってるだろう、とでもいうような顔でこちらを見る



「ルーナベルクだろ、その公爵家があるの」

「ってか、あんたの家でしょ」

「あぁ、まぁ、英雄...? みたいな扱いだったから騎士爵になって、で子孫がなんか公爵に...って違う。そんな話じゃなくてだね」

「うん...アルの国」



 ポツリと呟くように言う



「え...、あってるんだけど...いや違うんだけど。あれ、気づいてない...?」

「何が? あぁ、アルは結婚したんだっけ、まぁ、子供には恵まれなかったみたいだけど」

「......いや、ん? あれ、なんか...?」



 何か変なことを言った覚えはないが、目の前の一応、兄な男は首を傾げまくる



「...なぁ、お前、さ......。前世、どうやって死んだ?」

「え? なんで?」

「いいから!」

「...私の死に際、一番知ってるじゃない、共犯者なんだから」



 何を怒っているんだ、と思いながら、正直に答える



「心臓を一突きだよ、特注の剣で」

「お前の?」

「当たり前でしょ」



 わけが分からないとでもいう顔をして、しばらく考え込むと、顔を上げて、次の質問をする



「...アルベルト様は?」

「えーっと、確か、テオール...じゃなくて、英雄様と事前に目線の合図を決めたでしょ?」

「英雄様とか...つくられた・・・・・英雄だし...。ていうか、俺の名前テオールって今、自分で言ったよね? テオールお兄様とでも呼びなよ」



 何を言っているんだという目で思わず見てしまったが、思わず彼の名前を言ってしまった私に完全な責任がある

 そう、この一応、兄なこの人の名前はテオールなのだ


―――まぁ、取り合えずその要望は拒否しとこう



「待って、なんか話が食い違っている気がするんだけど...?」

「話を戻すと、その合図をもとに、アルは逃がしたじゃない」

「無視しないで? まぁ、うーん?」


 心底わからないとでも言うような表情をされても、こっちも分からないと、一緒になって首をかしげる



「どうした―――」

「あーもう...だぁぁぁぁあああもぉぉぉぉおおおお!!!!」

「うわぁぁああ! な、なに? 本当にどうしたの?」



 しばらくの沈黙ののち、彼――テオールは声を発する



「最後の質問」

「う、うん...?」



 真剣な顔でこちらを向きながら、彼は言う



「前世の名前は?」

「アイリス」

「...」



 無言でポンっと肩をたたかれると、彼はうなだれた



「うん、そうだよね...なら気づかないよね...。お前は一割の方だったか...。いや、うん、そうだ、俺が悪かったな、あぁ、そうだな、うん、きっとそうだ...」

「だ、大丈夫?」

「あぁ、まぁ、そうだな、うん...」



 ふらふらしながら、彼はどこかへと消えていった

 変な人だと思いながら、ワンジェル公爵家へ行くための準備を始めるのだった



 *****



「マオー!!」



 本の都とでもいうべき図書館で大声で叫んだため、何人かに睨まれる

 おっと、とでもいうように口元に手を持っていき、軽く頭を下げる



―――今日はいないのかな...?


 少しがっかりしながら、ふと目についた本をとる

 ココにある本は天使の全適と悪魔だけ閲覧可能で、全適でない天使は個人的に本をゲットして読んでいるらしい

 本は大抵が、誰がいつどこでどのように死ぬのかが書かれた本が大半で、後は、悪魔の仕事の詳細などが書かれている本ばかり


 要するに今、図書館にいる悪魔は誰をどのルートで殺していくのかの計画を立てているん者たちだ


―――天使といえど、私も悪魔の仕事をしないといけないのよね...


 思わずため息が出ると同時に、女神との会話を思い出す



「なにが『全適は悪魔の仕事もやるのが役目だ』よ」



 そんなことを天使であり、全適である私に言うということはそういうことだ


―――別にさぼってたってわけじゃないもの


 そう、たんに都合が悪かったのだ

 ある時は、テオールの恋人もとい奥さんに出会ってからは、彼女の手作り料理を食べるように言われる【※もちろん強制であり、恋人の二人がかりだ】

 そのまたある時は、天使の仕事が多くなる満月の日だったり...

 とにかく忙しい


―――それに私は『気まぐれの天使』!


 しかし、言い訳などを女神の前で言うわけにもいかず、私のワンジェル公爵家行が決定した


 ワンジェルは天使ゆかりの家で、現在の公爵は実は私の従兄だ

 子供は一人娘がいる、というより、つい数秒前につくられた


―――どうせ、戸籍をでっちあげたんだろうな、公爵だし...


 実は腹黒い一面を持つ彼は公爵なのもあり、悪魔などと言われている

 が、そんなことを言った奴は問答無用で、精神的に亡くなっているらしい

 全適の彼の、悪魔の仕事で亡くなる人もいるが...



「にしも、悪魔の仕事って意外と面倒ね。時間ぴったりに狩っていかないといけないなんて...」

「...ア...――」

「亡くなる人のいる場所から百メートルほど上にある砂時計の中の砂が落ち切ったと同時に、それを割ると...」

「―ア..ア......リス」

「割り方は物理的...。要は殴って蹴れと...」

「―アイリ..、アイ......イリス...!」

「バリンっと、ガラスが割れたような音がするのが、壊した証...」

「――...アイリス!!」

「はいぃぃぃぃいい!!!」



 大きな音に、読んでいた本を落とし、椅子がどこかに吹っ飛び、図書館にいる悪魔に睨まれる

 ペコペコしながら、後ろを振り向くと、探していた人物がいた



「マオ...、じゃなくて......、お、お姉ちゃん」

「...あれ、もしかして誰かに教えられた?」

「あ、女神に...」



 そういうと、ニコッと笑た彼女は、頬を膨らます



「もう、知られていないままがよかったのに」

「え...?」

「いやでしょ、姉が『死神』なんて言われているの」

「いや? 私は『気まぐれ天使』なんて言われてるし...」



 一瞬の微妙な沈黙がうまれる



「...よし、お姉さんが、悪魔の仕事を教えてあげよう!」

「あ、もしかして女神からなんか指示出された?」

「えぇ、あなたの仕事は私がばっちりするわよ。私が悪魔の仕事ばかりする理由やらもいろいろ教えられたでしょうし...」

「だったら私の前世も...」

「もっちろん!」



 胸をたたいて肯定する姉に、敬語は必要ないだろう、と今までのため口に言い訳をしつつ、悪魔の仕事を落とした本とともに、教わるのだった



 *****



「大丈夫かしら...」



 前世の妻で現在は(仮)恋人となったリズが、俺の隣に座って、ルーナベルクに行く準備を慌ただしくしているアイリスを見て、心配そうな顔をしながら、見つめている

 女神から、なぜアリシアをルーナベルクに行かせるのかを、リズは尋ねたらしい


―――無意識だけど、アイリスを前にすると若干、警戒態勢をとっているのに...


 もちろんアイリスは気づいているのだろう

 リズがつくった食べ物をもらうときなどは、気を使っているのが分かる

 もちろん勘だが、前世からこの『勘』だけはよく当たる

 そして、今回の件も...



「テオール?」



 愛しいが俺の顔をのぞき込む

 アイリスが聞いたら、『恋人。しかもカッコつき』でしょ、と笑うだろうから、俺の心の中に今はとどめておく

 女神さまは何を考えているのだろうか...?

 窓から顔を出して、広大な広さの花畑を駆け回るアイリスを見る



―――女神が勝手にやるわけがない

―――あそこまで、あれ・・をいじられているのは...



「『本能的ほんのうてき魂の適正者』のアルベルト様をお前はすでに拒んでいる。だから...、お前が気づかないといけない、すべて...―――」










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