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濃い一日

「おかえりー。遅かったね。母さんもさっき帰ってきたところ。あゆむくんから、急に四人とも遅くなるからご飯作れないって連絡きてて何かと思っちゃった」


「ただいま。急でごめん。今から作る」


 仕事帰りの母を気遣い、あゆむが言う。


「ありがとね、あゆむくん。でも大丈夫よ。それより一体何してたの?」


「実は各クラスに女の子が転校してきたんだよね。それでボクのバイト先行って歓迎&親睦会してきたんだー!」


「半ば強引に開かされて半ば強引に連れてかれたって感じだった」


 母からの質問にかなめとつくもが答えた。


「まあ、そうだったの。って、各クラスに?一気に四人も転校してきたの?」


 不思議そうな顔をする母にのぞみが答える。


「そう、彼女たち、四つ子なんだ」


「四つ子!?四つ子って珍しいわねー!」


「その珍しい四つ子、母さんの目の前にもいるんだけど」


 四つ子に慣れているはずの母に対してあゆむが呆れたように言った。


「それはそうなんだけどね。珍しいことに変わりないわよ!まあまあまあ、四つ子の女の子が……!保護者の方はどんな方かしら。ぜひ仲良くなりたいわ」


 いくら自分の息子が四つ子であるとはいえ、そうそうないシチュエーションに真野兄弟の母はテンションが上がっていた。


「今度聞いてみるよ」


 そんな母の様子を見て微笑みながらのぞみが約束する。


「ありがとう、のぞみくん。お願いするわ。それで、その子たちはどんな子なの?やっぱり似てるのかしら?」


 すっかり羅野姉妹に興味津々な母が尋ねる。


「それはもう、瓜四つってくらい似てるよ。でも性格は全然違ったな。ぼくと同じクラスのしぐれちゃんは三女なんだけど、めちゃくちゃマイペースで。あと動物が好きでよく動物園とか水族館に行くんだって。」


「オレと同じのクラスのいおりは長女で、真面目なんだけどどこか抜けてるところがあったな。方向音痴だし。あいつらが言ってた通り、帰り道1人だけ反対方向に歩き出してたよな」


「ボクと同じクラスのまひろんはすっごい大人しい子だよ。末っ子ちゃんなんだけどね。でもめちゃくちゃ好奇心旺盛で、興味を持ったことはすぐに何でも始めちゃう行動家なんだって!あと、前の学校にはファンクラブもあったらしいよ!」


「おれと同じクラスのちづるは…次女で…とにかくうるさい。騒音。けど運動神経は良かった。しかも、がさつかで雑なのかと思ったけど実は几帳面らしい。いやでも正直まだ信じてない」


 四人はそれぞれ自分と同じクラスに転校してきた羅野姉妹の印象を先程の他己紹介の内容も踏まえて紹介した。


「ふんふん、いおりちゃん、ちづるちゃん、しぐれちゃん、まひろちゃんね。なんだか楽しそうね!」


 そんな四人の話を聞いて母も楽しそうに言う。


「うん!めちゃくちゃ楽しかったよー!そんでね、ボクのバイト先で遊んでからファミレスに行ってきたんだ!あ、これが今日撮ったプリクラだよ!」


「まあ、本当に似てるわね。女の子の四つ子ちゃんもかわいいわあ。らま鉢、爆誕…?この、らま鉢ってなあに?」


 プリクラを見て微笑み、母が尋ねる。


「ボクらのグループ名だよ。八人だから鉢で、らまは羅野と真野の頭文字でー……」


 かなめが答えていると


「らの……?」

 

 廊下から声がした。


「あ、父さんも帰ってたんだ。ただいま!」


 かなめがその声の主に反応し、声をかける。


「ああ、おかえり。風呂に入ってた。それで今、らのって言わなかったか?」


 父が五人の会話で聞こえてきたワードに対して何か思うところがあるようで、質問をする。


「うん、言ったよ。ぼくたちのクラスにそれぞれ四つ子の姉妹が転校してきたんだ。その子たちの名字が羅野っていうんだ。大阪に住んでたんだって」


 父の質問にのぞみが答えた。


「羅野、しかも大阪……。いや、まさかな。あの人なわけないか……」


 父は少し苦い顔をして一人ぶつぶつと呟いている。


「父さん?どうしたの?」


 そんな父の様子を不思議に思い、かなめが聞いた。


 だが、父は我に返ったかのように、


「いや、何でもないよ。それより父さんにも見せてくれないか?おお、すごくよく似てるんだな!さすが四つ子だな。珍しいもんだ」


と、かなり感心した様子で言った。


「だから、父さんの目の前にもいるんだけどね。」


 そんな父を見てつくもが呟いた。





「たっだいまー!」


 ちづるが元気よくドアを開けて叫んだ。その後三人も続いて家に入る。


「おかえりー。四人とも帰ってきたか。何や転校初日からどこ行ってたん?」


「この辺のことまだよく分からんやろ?学校はどうやった?ちゃんと通えそうか?何食べてきたん?」


 四人の騒々たる帰宅に負けないくらい、両親が矢継ぎ早に尋ねる。


「えっと、それぞれの同じクラスになった男の子たち四人と遊んできてん。実はその人たちも、」


「なんと四つ子やねん!信じられる?四つ子がおってん!」

 

 まひろの言葉を遮りちづるが答えた。


「四つ子の子がおった!?ほんまか!えらい偶然があるもんやなあ」


「写真ないん?写真!どんな子たちか見たいわ!」


 興奮する両親に


「あるで!ほら!」


としぐれがプリクラを渡す。


「いやあ、よー似てるな!」


「ほんまやわ。写真じゃ見分け付かんわこりゃ。父さんも母さんも実際会ってみたいし家が片付いたら呼んでや」


 プリクラを見た両親がそれぞれ感想を述べた。


「分かった」


といおりが答える。


「そんじゃ、順番に風呂入ってきー!さっき沸いたばっかやし、冷めんうちに!」


 母が言うと


「じゃあしぐが入るねー!お先ー!」


と、誰の返事も待たずしぐれがリビングを出ていった。それに続き、三人も自分たちの部屋へ向かいながら話す。


「ったく、自由人め。にしても今日はいろいろあったよな」


「ほんまに。まさかちづ姉の言ったとおり四つ子がいるなんて思わんかった」


 部屋に入り、それぞれのベッドに腰掛け、三人が話す。四人の部屋は四隅にベッドが置かれ、真ん中の机を境にテリトリーが定められている。


「それはうちもめちゃくちゃびっくりした。それに転校初日で他の人たちと遊びに行くとも思わんかったな。次、学校のみんなに会うのは二学期やけど、クラスの子たちと話すのも楽しみになってきた!」


「しぐもしぐも!」


 バタンとドアを開け、しぐれが部屋に入ってくる。


「いや相変わらず風呂出るの早っ」


 突然の音とあまりの早さに驚きながらちづるが言うが


「ちゃんと十秒数えたで〜?」


とタオルを髪に巻きながらしぐれが呑気に答える。


「たまにしぐれだけ違う次元を生きてるんちゃうかなって思うときあるわ」


 いおりの言葉にまひろも


「わかる」


と頷いた。


「何それ。みんなしぐのこと馬鹿にしてる?」


 そんな姉妹の様子を見て口を尖らせるしぐれだったが、


「ううん、褒めてる」


といおりが言うと


「ならいいけど!」


と笑った。


「にしてもバイトどうする?まだあと約一ヶ月くらいは夏休みやし今日もらった宿題やりつつ合間に探してみる?」


「真面目〜!」


「時間ある時にやらなそのままになりそうやし。明日履歴書買いに行くわ」


 いおりがそう言うとまひろも


「わたしも行く!」


と言った。


「えーならみんなで行こーや」


「うんうん!」


 それならと、ちづるとしぐれも行くことになった。


「あ、ならついでに、この辺にどんな店があるかとかも探してみーひん?」


 ちづるがいいことを思いついたとでも言うかのように顔を輝かせて言ったが、


「あんた宿題サボりたいだけちゃうん?」


といおりに睨まれる。


「ばれっ、いや、バイト探すなら何があるのか見ておくのは大事やろ!」


「ばれって言ったけど?」


 単純なちづるの思惑はお見通しであった。


「まあまあ、ちづ姉の言うことも一理あるしちょっと見て回ってみようよ!この辺に何があるかまだ全然分かってないしさ」


「はいはーい!じゃあ、しぐ服見にいきたい!」


「買い物行くわけちゃう…けどまあいっか。ショッピングついでにいろいろ回るってことで」


 まひろが、二人のいつものやりとりを宥めつつ、提案し、それにしぐれも賛同したのでいおりも渋々了承した。


「よっしゃ耐えた」


「耐えた?」


 ちづるの呟きにいおりがすぐさま反応する。


「なんも言ってないでーす」


 ちづるが知らんぷりを決め込んだところで、リビングから


「あんたら風呂入らんのー?入らんねんたら先入るでー!」


と母の声がする。


「入る入るー!さっ、順番に風呂入ってさっさと寝よ!明日に備えて!」


「ほんまやもうこんな時間か。しぐ姉くらいに風呂早く入ってかな日付変わるわ」


とまひろが時計を見て言った。


「んじゃお先ー!」


と言いながらちづるが風呂に向かう。


「もー、いいけど急いでや!」


 いおりがまたしてもマイペースに風呂に向かうちづるに声をかけた。












「さ、おやすみってしぐれとちづるはもう寝てるか。相変わらず寝るの早いんやから」


「いお姉、お風呂譲ってくれてありがと。ふふ、しぐ姉は遅くても二十二時にはちゃんと寝たい派やし、ちづ姉もボウリングめちゃくちゃ楽しんでたからなあ」


 髪を乾かしながらとっくに爆睡している二人を見てまひろが微笑み、そして話を続けた。


「そういえば、いお姉はどんなバイトしたいか決まってるん?」


「んーん、まだなんも決まってないなー。まひろは?」


「うーん、わたしもちゃんとは決まってないけど、やっぱり人見知り克服するために接客業か、それかやっぱり音楽に関わることができたらいいなーとはうすらぼんやりと……!」


「まひろらしいな。いいんちゃう?合ってそう。」


「よかった。明日いろんなとこ見て、いお姉もいいとこ見つけられたらいいな!」


「……そうやな。ありがとう。じゃ、そろそろ寝よっか」


「うん!おやすみ、いお姉」


「おやすみ、まひろ」


 そう言って二人も眠りについた。


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