表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/48

体育祭一日目①

 体育祭一日目。肌寒さはあるものの、澄み渡る青空と降り注ぐ日光が気持ちよく、思わず叫びそうになる。ちづるはうきうきとした気持ちのまま、姉妹たちと学校へ向かう。衣装、ユニフォームに着替えるための更衣室として用意された教室で衣装に着替えていると、その気持ちはさらに高まった。思わず叫んでしまい、隣で着替えていたいおりに叩かれる。ちなみに、衣装は各自で持ち帰って手作りしたものなので、クラスメイトと作った感想や実際に着てみての感想を伝え合う。ちづるは作るのにかなり苦戦し、ある"力業"を使ってようやく完成にこぎつけたのだった。


「わー、四人ともめちゃくちゃ衣装似合ってる!」


 廊下に出ると、先に登校して着替え終わっていた真野兄弟に出会った。かなめの開口一番の言葉にちづるたちはまんざらでもない顔をする。


「かなっぺも似合ってるで!」


 かなめは黒字の布地に赤色のサテン生地がアクセントになった衣装を着こなしている。所々に和柄の生地が使われていて、和風をうまく現代風衣装と融合させてさらにパワーアップさせたかのような、衣装で煌びやかだ。同じクラスのまひろも、同様の衣装を着ている。二人の衣装のテーマはシンプルに"和"らしい。

 いろは高校の体育祭は三学年ごとにA組、B組、C組、D組の縦割りクラスで団が結成されている。基本的に競技や教師の審査によって賞を決めるダンス発表は団対抗で競う。団ごとにそれぞれテーマやコンセプト、イメージカラーなどが決められていて、それらを決めるのは三年生だ。衣装などの原案、衣装を作成するための生地の発注・配布、ダンスの振り付け、指導等を幅広く行う。そして何より、団長と副団長はみなの憧れの的だった。


「三年になったら団長なろっかな」


真剣な表情で呟いたちづるが着る衣装は、D組改めD団のものとは打って変わり、何やらファンシーなものだった。テーマが"妖精のお茶会"ということもあり、団のイメージカラーである緑はパステル調の色彩で表現されている。振り返ると光に反射してキラキラして見える羽をイメージしたデザインがこの衣装のポイントであり、作る際にもっとも苦労した点であった。


「つっきゅんは睡眠の妖精やな!」


 今もなお、立ったままで寝かけている妖精の衣装を見に纏ったつくもにしぐれが言う。気ままで姉妹ながら謎めいている、しぐれこそ"妖精"というテーマに相応しいのではと、いおりとまひろと話していたが、そんなしぐれの衣装は


「そんなに寝てたら逮捕するでー?」


 警察官の制服をイメージしたものだった。団のイメージカラーが青色なこともあり、"警察"はテーマとしてぴったりだった。同じくC団ののぞみも同様、青のサテン生地がよく映えた警察官風衣装を着用している。普段の生活においてほんわかしている二人からはビシッとした"警察"はあまり想像がつかないテーマではあったが、二人ともよく似合っている。

 そして、しぐれとまひろの影に隠れるようにして、息を潜めていたいおりにのぞみが何で隠れてるのか問いかける。


「似合ってるのに」


 そう続けたのぞみの肩を軽く叩いたいおりがその身に纏う衣装は、一言で言うならドレスだ。テーマは"ひまわりの舞踏会"とのことだ。いまいちピンと来なかったのだが、いおりから聞いた説明によると、ひまわりのように明るい舞踏会があってもいいじゃないか、というコンセプトらしい。結局のところ、団のテーマカラーを黄色にしたかった団長と、衣装をドレスにしたかった衣装係の折衷案ということだった。あゆむは黒字に黄色の模様でタキシード風に仕立てられた衣装を着用している。何やら布地で作られたひまわりのコサージュが左胸に付いていた。あゆむも、いおりと同様に衣装を着ることに抵抗があるのか、今までもあまり話に入って来ようとはせず、黙って聞いたままだった。そんなあゆむに、ちづるとしぐれ、"騒音コンビ"が絡みまくると、あゆむも頭の調子を取り戻したのか、うるせえと二人をあしらっている。ちなみに、ちづる、そしていおりの不器用な二人が、衣装を完成させるために使った"力業"というのはあゆむからレクチャーを受けることだった。おかげであゆむの衣装同様、綺麗に仕上げることができた。


「じゃあせっかくだし記念撮影〜!」


 テーマに沿ったポーズを取るようかなめからの指示を受けた七人はノリノリ、はたまた渋々応じる。


「はいらま鉢ーズ!」


 いつもと同じかなめの掛け声を合図に各々が表情とポーズをとる。撮影した写真を見て、なかなかいいねと笑うかなめの言う通り、八人はそれぞれテーマに沿った写り方をしている。


「いつもは友達やけど今日はライバルや!負けへんからな!な、つくも!」


 そう言って俄然、やる気の入ったちづるが意気込む。それに対してつくもはまあ、いつも通りだ。

 三十分後の開会式に向けて、生徒は体育祭の舞台である校庭に集まるよう校内放送にて指示が出された。グラウンドにはすでに衣装を見に纏った生徒たちが大勢いて、かなり派手な印象を受ける。団ごと、学年ごとに並ぶので八人は同じクラスの二人ずつで分かれると、列は並ぶ。やがて開会式が開かれた。校長先生からの粋な挨拶から始まり、準備体操、開会宣言と、着々と式は進んだ。

 そしていよいよ競技にうつる。最初の競技は早速、団ごとに練習してきたダンス発表だ。開会式前の登校直後に衣装に着替える必要があったのはそのためである。準備までの間に時間があったので八人で話していると、八人の両親が近付いてきた。


「今日も仲良しやな!みんな衣装似合ってるわ!」


 さくらが笑いかけてくる。あきらは様々な画角からちづるたち四人をカメラで映すのに必死な様子である。そうまはそんな様子に苦笑いをしてしまい、あきらから怒られている。


「八人とも怪我しないように頑張ってね」


 ニコニコしながらそう言うえまに、分かったと八人が返事をした。


「D団の生徒は校庭に集まってください」


 いよいよだ。先程から頬がにやけてしまうのを止めるで精一杯のちづるの口角がこれでもかと言うほど上がる。八人はそれぞれ、集合場所へ向かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ