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文化祭二日目②

 ブーっとブザーが鳴り、幕が開く。隣の席に座っているしぐれが小さな声でわあっと呟く。

 出てきた演者たちの衣装は細部までこだわられて作り込まれている。表情は生き生きとしていて見ているだけで引き込まれてしまう。演目はロミオとジュリエットを題材に、アレンジ部分を加えてコメディ調にしたものであった。シリアスな部分も上手く残されているので飽きが来ない。オリジナルとは違ってコミカルにまとめ上げられて物語は終了した。

 演劇を終えた役者たちはナレーションからの紹介の声とともに、もう一度順番に舞台に出て来て礼をする。そして、全ての役者が舞台に集うと、全員で手を繋ぎ、先程より深くお辞儀をした。

 ちづるたちも、他の観客と同じように、演者、そしてスタッフたちに対して惜しみなく拍手を送る。演劇自体は約二十分くらいの内容であったが一瞬で過ぎてしまったかのように錯覚してしまうほど楽しむことができた。

 八人は演劇を一クラス分だけ見て、その後は飲食ブースに行こうと話していたのだったが、急遽予定を変更し、もう一クラス分の演劇を見ることにした。期待に胸を躍らせていると、お待たせしました、と言わんばかりにブザーが鳴る。そして、幕が開いた。



    







 八人は体育館を出ると、先ほど見た演劇に対して早速、感想を語り合っている。 もう一クラスだけ、もう一クラスだけ、と言って夢中になっているうちに結局全てのクラスの演劇を鑑賞することになった。


「うちらは、どんな劇するんかなあ。なんか楽しみやわ」


 来年、自分たちも劇をすることになる。この楽しい学園祭をまだ二回もできることにちづるは嬉しさを感じつつ、同じクラスであるつくもに言うが、


「学年上がったらクラス替わるから、次も同じクラスになるとは限らないけどね」


 というつくもの言葉に、ほんまや、と一本取られたかのような顔をする。来年はクラスが替わるのだった。だが、それも含めて楽しみと、気持ちを切り替えた。

 そうこうしている間に、時刻は十四時を回ろうとしている。八人の有志発表の本番まではあと一時間程度だ。だからといってリハーサルは済ませているので、三十分前にステージに向かえば問題はない。あと三十分程度何をしようかという話になり、飲食ブースと有志発表の屋外ステージの距離がさほど離れていないことから、軽食を買ってステージへ向かうこととなった。演劇に夢中になっていたので、八人はまだ昼食を取っていなかったのである。


「フランクフルトとアメリカンドッグ、ドーナツ、ポテトフライ、あ、肉巻きおにぎりも簡単に食べれるよな」


 そう言って昨日と同じく屋台に目移りしているまひろ。いおりが子どもに言う親のように、どれか一つにしておくように言っている。買い物を終えるとステージへ向かう。ステージでも、観客の数はやはり昨日よりかなり多かったため、ステージに立つ演者が認識できる程度の後方の席から見ることになった。


「やっぱり人多いな。けど案外後ろの席からでもステージって見えるもんやな」


 運動神経と視力だけはいいと自他ともに認めているちづるはステージでの内容が裸眼でもよく見える。反対に視力の低いあゆむはかなり目を細めてようやく、人が立っている、ということを認識できたらしい。目が良いことを羨ましがるあゆむに、いいやろと自慢しつつステージに目を向ける。

 ステージに立っているのはちづるたち、らま鉢の四つ前にパフォーマンスを行う三年生たちであった。彼女たちのステージが終わるタイミングと同時くらいに八人は軽食を美味しく食べ終えた。そしてステージ裏へと向かい、有志発表のスタッフたちへの挨拶を済ませる。


「やばい、まひろんがまた固まっちゃってる!」


ほんの少し、焦った様子のかなめが言う。ステージ裏に来て急に現実味を帯びたことにより、プレッシャーを感じてしまったのであろう、まひろは動かなくなってしまった。


「あんなに何食べるか迷ってたのに」


 つい先程まで食べ物に執着していたというのにも関わらず、緊張してしまっているまひろを見てつくもがそう言いかける。だが、またあゆむがつくもの口を抑えて言葉を遮った。そんなやり取りを見て笑い声を上げつつ、大丈夫やって、としぐれが笑顔でまひろに声をかけると


「円陣組もう!もちろん、掛け声はまひろで!」


 と提案した。驚いているまひろにちづるも、


「姐さんお願いします」


 と続け、他の六人も姐さんと言ってまひろの方を向く。やるしかないと感じたのか、はたまた姐さんモードが発動したのか定かではないが、まひろが自分の両頬を両手でパチン、と叩く。円陣を組み、中央に重ねた七人の右手にまひろは自身の右手を重ねると、すうっと息を吸う。そして普段のまひろの声量よりも五倍程、大きな声で叫ぶ。


「らま鉢ぶちかましていくで!」


「おー!」


 白い歯を見せた七人の声が揃う。そんな中、らま鉢さんお願いしますと、スタッフの声がかかり、八人はステージへ続く階段を一段一段、駆け上がる。さあ、いよいよだ。









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