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文化祭二日目①

「お疲れ様でしたー!」


 楽器を片付け、屋根付きのステージから降りると、先程よりさらに空が明るくなっているのが分かった。

 校舎の設備時計の針は八時を少しすぎたあたりを指している。そろそろ生徒たちが準備のために登校し始める頃だ。ただ、文化祭が始まるのは十時からなので、開始まではまだ二時間弱あるということになる。

 そんな中、らま鉢の八人が早く学校に来ていたのには理由があった。本日、文化祭二日目の有志発表で八人でパフォーマンスをするためだ。十三時から始まる有志発表は屋外のステージで行われ、らま鉢は十五時にステージに立つ予定となっていた。


「ちゃんと合わせたのは久しぶりやったけど、結構良くなってたな。個人練習の成果や!」


 そう言ってちづるはまひろの方を向く。有志発表に八人で出たいと言ったのはまひろだったからだ。全力でリハーサルに挑んでいたまひろの額の汗をタオルで拭ってやる。


「ほんまに!びっくりしたわ」


 ちづるにお礼を言い、七人の顔を順番に見回したまひろは、とても満足げだ。本番もこの調子で頑張ろうと鼓舞する。

 さて、リハーサルから始まった本日の八人の予定であるが、文化祭開始までの間はそれぞれのクラスで準備を行う。そして、目処が立ったらまた八人で集合し、十五時までの間は文化祭を、特に二年生が体育館で行う劇を見て回る算段となっている。二.三年生が多い中、一年生としては珍しく有志発表を行うこととなった八人はそれぞれクラスから午後の当番を免除してもらっていた。その代わり、開始までの準備と午前の役割りには全力を尽くすつもりだ。


「じゃ、一回解散やな!またあとで」


 ちづるが一年生の教室前の廊下でそう言い、六人と別れると、準備のためにすでに登校していたクラスメイトに挨拶をする。今日も元気だねと声をかけられるちづるに続いてつくもも小さな声でおはよと挨拶している。そんなつくももまた、クラスメイトからは今日も眠そうだねと声をかけられている。

 早速二人も準備に取り掛かる。実行委員のちづるは物品や配置、段取りの確認を行う。装飾兼メイク担当のつくもは装飾の補修やメイクの確認を行なっている。続々と登校し始めたクラスメイトたちも作業に加わり、いよいよ開始まであと二十分を切る。準備万端だ。

 担任が教室にやって来て、簡単に朝のホームルームを済ませると人差し指を唇に当て、ジュースと紙コップを配ってくれた。


「先生、ありがとー!」


 クラスメイトが沸き立つ。もちろんちづるも。しかも大好物、百%果汁のオレンジジュースだ。これこれ、と満足な気持ちで飲み干すと、一気に気合が入る。


「よし、文化祭二日目も楽しむで!」


 意気込んだちづるにクラスメイトは有志発表見にいくね、頑張れと応援してくれた。ちづるはみんなに向かってピースサインを向けると白い歯を見せた。つくももお礼を言う。


「あ、来た来た、つくつくー!ちづるーん!」


 あらかじめ決めていた集合場所に到着すると、人が多いため姿はまだ見えなかったが、かなめの呼ぶ声がする。ちづるも、おーいと返事をするとさらに、こっちこっちーと声を上げてくれるので、ようやく姿を発見することができた。


「ごめん、待たせた」


 B組の二人以外はすでに集まっていたようだ。のぞみが気にしないでと微笑む。ありがとうとお礼を言ってから、それにしてもと、ちづるがあたりを見回し、首を傾げる。


「なんか今日、人が多いな」


 昨日より明らかに人が増え、中にはちらほらと中学生くらいの客も見つけることができる。そんなちづるの疑問にいおりが土曜日やからなと、ため息をついた。

 なるほど、中学生は学校見学を兼ねて遊びに来ているのか。合点がいったちづるは、あることに気が付いた。


「てことは、うちらの有志発表見に来てくれる人も多いってこと……?」


 昨日ももちろん、有志発表は開催されていた。だが観客はあくまでも学校生徒と身内くらいの人数だったのだ。そのことまてまはいおりも気付いていなかったらしく、表情が硬くなっている。そんないおりの硬くなった両頬をちづるがつまみ、上下左右に動かしてみるとすぐさま振り払われ、睨まれる。


「なんにせよ、やることは変わらんけど!な、まひろ!」


 そんないおりの視線を感じつつも、まひろの方に体を向ける。そこにはいおりの両頬以上に、体を固まらせたまひろがいた。そうやった。


「まひろは緊張しいやから!」


 ちづるの心の声を代弁するかのように、しぐれがまひろの背中をさすりながら言う。そういえばと、かなめも自己紹介の時のまひろはかなり緊張しているというのが、初対面であってもひしひしと伝わってくるくらい、恐ろしく緊張していたことを話す。


「昨日からずっと緊張はしてたけど、いざ今日を迎えてリハーサルを終えたらさらに……」


 そう言ってまひろが座り込む。まひろに合わせてしぐれも座り、また背中をさすって大丈夫と伝えてやっている。


「あんなに大きいパフェ食べてたのに」


 そう言いかけたつくもの口をあゆむが塞ぐ。だが同意するかのように頷いて続ける。


「けど確かに指導はスパルタだったしな」


 まひろは、初対面の時こそ緊張してうまく話せずにいたが、仲良くなってからは真野兄弟には特に気負うことなく素の状態でいることが多くなっていた。つくももあゆむも改めてまひろの緊張している姿を見て新鮮に感じているのかもしれない。


「まあまあ、本番は十五時だしそれまでは文化祭楽しもうよ!」


 もちろん、本番はもっと楽しむけどねとかなめがウインクする。劇を見るために体育館へ向かっている途中、そういえばと言ったしぐれがのぞみ、あゆむ、かなめ、つくもの顔を順番に見回す。


「四人は緊張しーひんの?」


 あまり四人が緊張している所を見たことがない気がする。それどころか、かなめを除く三人に至っては感情をあまり表情には出さないタイプだ。しぐれの質問にちづるも確かにと頷いた。


「もちろん緊張してるよ。ね?」


 そう言って三人に笑いかけるのぞみの表情と声色からはそんな様子は一切感じられない。ちづるの顔から考えていることが分かったのか、のぞみは本当だよと言ってさらに目尻を下げた。


「頼もしいな!」


 豪快に笑うしぐれに、しぐっちもねと、かなめも笑った。そんな話をしているうちに照明を落とし次の劇の準備をする体育館に到着する。観客の数は前方の席から半分以上の席までは埋まっているくらい、多くはあるものの、そんなことを感じさせないくらいひっそりとしている。八人も話すのをやめて席に着く。少ししてからブザーがなり、幕が開いた。

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