いやそんなベタな
「さて。これまた信じがたいことが起きてしまいました。うちら羅野姉妹。四つ子。それぞれがクラスメイトの真野くんを呼び出して、実際に来てもらったわけやけど……」
放課後。約束通り、四人はそれぞれクラスメイトの真野に頼み、昼休みにお弁当を食べていた中庭のベンチに来てもらっていた。
「いや、ほんまに四つ子っているんやな……」
「え、待って!めっちゃ似てる!やばい!」
「まさに瓜四つ……」
ちづるの言葉に続きいおり、まひろ、しぐれが、四人の真野を前にして、思い思いの感想を述べる。
どうやら本当に、彼らも四つ子だったらしい。
「いやいや、君たちもでしょ!?お互い様でしょ!」
「そんなそっくりな面並べて言われても説得力のかけらもねーわ」
「はは、すごい。君たちよく似てるね。ぼく、四つ子って初めて見たよ」
羅野姉妹の自分達に対する反応を二人の真野がほぼ同時に言及したが、あまり気にしていない様子の真野は呑気に、にこにこしながら呟いた。
「てかあんた!つくも!なんでまた寝てんの!!!四つ子やねんたら教えてくれてもよかったやろ!」
「……なんで呼び出されたのおれ……。眠いんだけど……。それに兄弟についても別に聞かれなかったし」
「この状況をもってしても眠いて……」
ちづるが今もなお眠りにつこうとするつくもを見て呆れたように言った。
確かこいつ、授業中もずっと寝てなかったっけ。ちゃんと授業聞いてるんかな。聞いても理解できん自分が思うことじゃないかもしれへんけど。
「つくもくんはいつもこうだよ。それよりぼくたちに何か用だった?」
「あ、すみません……!わたしたち全員隣の席の人の名前が真野さんやったから何か関係があるのかなと思って確かめたくて」
「まさかほんまに四つ子やったとは思わんかったけどな!」
真野からの質問に慌ててまひろが答え、それにしぐれが続けた。
「あー、なるほどね。そうだよ。ぼくたち四つ子なんだ。改めて自己紹介させてもらうと。ぼくが長男ののぞみだよ」
先程、呑気そうににこにこしていたのぞみはそう答えてから、少し目つきが悪く、明るい髪色をした兄弟に目配せをする。
「んー。オレが次男。あゆむだ」
ぶっきらぼうにそう答えるあゆむとは対照的に
「はいはーい!ボクはかなめ。三男だよ!」
とこれまた明るい髪色をしたかなめが自身も明るい調子で名乗った。
「そしてさっき分かってくれたとは思うけど。こっちの寝てる子がつくもくん。末っ子の四男だよ」
「う〜ん……」
三人が自己紹介をし終わり、のぞみが自分の代わりに紹介をしているにも関わらず、つくもは眠りについたままである。
そして、真野兄弟の自己紹介を聞いてもなお、呆然といった様子で四人を見たまま固まっている羅野姉妹に対して、
「ふふ、驚かせちゃったかな。でも君たちも四つ子だもんね。そうだ。自己紹介お願いしてもいい?」
とのぞみが穏やかに言う。
「あ、そうでした。ごめんなさい。ご丁寧に紹介してくださったのにぼーっとしてしまって。そして、ありがとうございました。あたしが長女のいおりです」
「うちは次女のちづる!」
「しぐれでーす!しぐって呼んで!三女!」
いおりに続いてちづるとしぐれが元気に答える。
「あ、えっと、わたしは四女で……まひろです」
そんな二人の影に隠れるかのようにしてまひろが振り絞って出したかのような小さな声で言った。
「まひろは初対面の人にはめちゃくちゃ人見知りでさ。慣れてしまえば全然そんなことないんやけど。真野くん…あ、全員真野くんか。かなめくん、やんな?呼び出しただけでもすごいんやで!」
しどろもどろで緊張しまくっている妹のことをしぐれがフォローする。
「あ、えっと、来てくれてありがとうございます、かなめさん!」
しぐれのフォローのおかげで何とかまひろがそう言うと
「あ、いえいえ、どういたしまして?」
と突然お礼を言われたかなめは少し驚いた顔になったがすぐ笑顔に切り替えて答えた。
「それにしても、ほんまに四つ子がいたからみんな耐性ついてたんやな」
「耐性?」
ちづるの言葉にかなめが尋ねる。
「実は今朝、ちづるが学校にすでに四つ子がいたりしてとか言い出して!ありえへんやろって言ってたんやけど、もしいたとしたらって話もしてて」
「ちづるちゃんすごい想像力。そしてほんとにいたね」
なぜか他人事のように呑気にのぞみが言う。
「それでな、四人もわかると思うんやけど、四つ子って知られると結構みんな決まった反応とか質問してきたりするやろ?しょうがないんやけど」
「ああ、まあそういうのはよくあるな」
と、よく覚えがあるのであゆむも頷く。
「やからザ・四つ子みたいな対応じゃなかったら新鮮でいいよなーって話してて。実際来たらほんまに、普通にただただ転校生、として扱われたからめちゃくちゃ驚いたんやけど」
「あー。ボクらで慣れちゃったんだね、みんな。確かに最初の方は驚かれもしたし、君たちが言う四つ子特有の反応だったよ」
かなめの言葉にのぞみも続けて
「ぼくたちが見た目以外はあまりにも似ていないからなのか、四つ子の一人から、一人の人間として見てくれるようになったのかもしれないね」
「そっか、だからあたしたちのことも最初から普通に受け入れてくれたんか」
そんなのぞみの言葉にいおりが深く理解したように言った。
「なんかうれしいな」
とまひろも言う。
「まあ、そうは言っても!せっかくそんな珍しい四つ子が二組も揃ったんやし!親睦と歓迎会を兼ねて今から遊びに行かへん!?」
「あんたはあいかわらず言うことが急やな……」
「自分で歓迎会開こうとしてるし。これやからちづるは」
ちづるの突然の申し出にいおりとしぐれがやれやれといった表情でそう言った。
「えっと、みなさん何かご用事ありませんか?部活とか……」
突然の姉の提案に対して真野兄弟を気遣うまひろに
「大丈夫だよ。ぼくたち全員部活には入ってないんだよね」とのぞみが答えた。
「そうなんですか?」
「なんといっても四つ子だからね……。両親は共働きとはいえさすがに頼りきりってわけにはいかないから、高校入ってからはみんな、それぞれバイト始めたんだよね。でも確か今日は全員休みだったよね?」
「ああ。今日はない」
「ボクも休み。つくつくも今日はなかったよね?」
「うーーーん、ないよ……」
「聞いとったんやな……ま、でもじゃあ決まりやな!ならこのまま行こ!近くに遊べそうなとこ、どっかある?」
「じゃあボウリング場は?かなめのバイト先だけど」
あゆむが提案するとかなめは、
「あゆあゆ、それいいねー!しかもしかも、割引券もあるよ〜!」
と得意げに言った。
「えーほんまに!?ボウリングいきたーい!」
しぐれも賛同した。
「じゃあそれぞれ用意でき次第、昇降口に集合ってことで!!一旦解散!」
ちづるが元気よく言った。




