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文化祭一日目①

読んでくださってる方、いつもありがとうございます。学園祭編です。よろしくお願いいたします。

「そういえばちづる、今日は『学園祭やー!』って叫ばないの?」


 いろは高校の学園祭、文化祭の一日目である本日。空は少し曇り、どんよりとしているが、学校中は浮き足立っている生徒たちにより、活気付いていた。そんな中、ちづるは俯き、何かを考え込んでいる。大丈夫かとつくもから声をかけられると


「いや、大丈夫!……とは思うんやけどなんか漠然とした不安に襲われててさ!」


 楽しんでもらえるかなといつにもなく、ちづるは小さな声で答えた。

 ちづるが珍しく不安になっていたのには理由があった。先程のホームルームでちづるの担任から聞かされたことについてである。


「もう知ってる人もいるかもだけど、学園祭は文化祭、体育祭ともに賞が設けられていて、獲得するとトロフィーと賞状が贈られるよ」


 文化祭は学年ごとにクラス対抗で、一クラスだけ賞がもらえることになっていると担任が説明した。そして、学園祭終了後、つまり体育祭二日目の閉会式の時に一緒に表彰式を行うらしい。クラスメイトたちはざわめき、ある生徒が言った。


「確か、文化祭と体育祭の両方で賞を獲ったら願い事が叶う、って言われてるんだよね」


「願い事が叶う……」


それを聞いたちづるが呟いた。もし願い事が叶うなら。もう一回部活やる勇気がほしい、なんて。

 九月の誕生日、七人に話を聞いてもらい、背中を押してもらった。あれから二ヶ月経つ中で、いくつかの部活の見学には行ってみた。どれも楽しそうで、そして、どの部活でも歓迎すると言ってくれて。ただ、ちづるは部活に入る、という結論には踏み切れないでいた。

 やってみなければ始まらないこと、前とは違うことも、辛いなら辞めておけばいいってだってもちろん分かっている。こんな風に長い間ぐだぐだしてしまっているのが、もったいないだろうってことも。

 しかし、他の七人はそんなちづるを何も言わずに見守ってくれている。それが何よりありがたかった。


「本当は入りたいと思っているくせに、弱いなあ」


 そう呟いたちづるに珍しく起きていたらしい、つくもが、何か言ったかと、そんな表情でこちらを見てくる。ちづるはなんでもないと微笑み、いつもの笑顔になるとクラスメイトに向かって


「よっしゃ、みんなやるからには優勝目指すで!」


 と掛け声をかける。クラスメイトも笑顔でおおごえでおーと返し、その後、誰からともなく拍手が起こった。


「羅野さんが実行委員でよかった」


 もちろん新田くんもと学級委員が言い、クラスのみんなが頷く。ちづるが新田と顔を合わせたあと、照れて笑った。






「さっき吹っ切れたような顔してたと思ったのに」


 文化祭の開催が宣言され、生徒たちはどこに行こうか、何をしようかと話しながら教室を出て行ったり、当番制のクラスの役割を務めようと張り切っていたり、誰もが楽しそうだ。そんな中、楽しんでもらえるかなと少し不安な顔をしてその場から動かないでいるちづるに、つくもが呟いた。

 

「優勝目指すと言ったものの、他のクラス見てへんから分からへんやん?勝てるかどうかなんて」


「……ちづるって結構繊細なところあるよね」


「悪い?それに、うちだって緊張するし」


「……ちづるがほんとに悩んでるのはクラスのことだけじゃなくて」


 うまく聞き取れなかったので聞き返したが、つくもは何でもないと誤魔化し、ちづるの心配を取り除くように、


「大丈夫だよ。みんな頑張ったから。でしょ?」


 そう言って微笑んだ。つくもの言葉にちづるの緊張が少し和らぐ。実行委員の責任、と言うと大げさだろうが、少し思い詰めすぎていたかもしれない。


「それに、そんなに気になるなら他のクラス見に行けばいいじゃん」

 

 つくもの言葉に、まあそうやけど、とちづるは口籠ったが、確かに他のクラスがどうかなんて見に行かなければ分からないし、何よりらま鉢で文化祭を回る約束もしていた。どうせ行くなら楽しもうと、ちづるは気持ちを入れ替えるために両手で軽く自分の両頬を叩いたあと、ニヤリと笑った。


「よし、行くか、つくも。偵察や!」







「いらっしゃーい!つくつく、ちづるん!」


 そう言ってかなめがD組に迎えてくれる。まひろも、他の四人ももう来てるでと教えてくれる。

 確かに、A組のいおりとあゆむ、C組のしぐれとのぞみの四人が何やら展示を見て回っているようだった。


「D組はモザイクアート、やっけ?大量の写真で大きな画像作るやつやんな?」


「そうそう!うちのクラス、ボク含めてカメラ好きの子たちが多くて!活かせることないかなって話し合ったんだよね。結果、クラスの風景とか、学校のお気に入りスポットとかみんなで撮りまくって」


 モザイクアートを作った、ってわけと笑顔で楽しそうにかなめが説明する。


「すごいな、これ一枚一枚が写真なんやもんな……」


 そう言ってちづるが感心していると、まひろが


「モザイクアートを展示するだけじゃ、って話にもなって実はあっちには」


 そう言って指を差した先にはフォトスポットと描かれた看板が立っているスペースがある。そこにはお面で合ったり、旅行先でよく見るような、なりきりパネルなど本格的なものまで置いてあり、既に写真を撮ろうと、生徒たちが列を作っている。


 なるほど、写真をテーマに色々な企画を立てたってことか。他にも教室を見渡すと、黒板にはD組の写真好きたちが撮ったのであろう、テーマ毎に撮られた写真がいくつか貼ってある。どの写真が良いと思ったか投票と感想をお願いしますとの文字が書いてある。投票箱も設置してあった。そこに用意されたアンケート用紙には投票の内容だけでなく、写真の感想や、展示自体の感想なども書き込めるようになっている。すでに箱には紙が何枚か入れられていた。


「これは、手強い……!」


 ちづるがわりと大きな声で言ってから地団駄を踏むような仕草をすると、近づいてきたいおりに頭を叩かれた。


「何してんねん、あんたは」


 呆れたように言ういおりに続き、あゆむが二人も来たんだな、と話しかけてきた。


「うん、偵察に!ってのは冗談やけど、なかなか賑わってるなあ」


 ちづるの言葉にのぞみが確かにと答えた。そして


「黒板にある写真の投票はもうやった?かなめくんの写真がすごく良くて思わず長文で感想書いたよ」


 先程投票箱をチラッと覗いた時に一部分が真っ黒な用紙があったような気がした。あれはのぞみが書いたものだったのか。


 相変わらずやなとちづるが笑った。黒板に貼ってある写真は公正をきたすためか誰の作品とは提示されておらず、かなめのものがどれかなんて分からないはずやのに。


「あ、せっかくだからパネルで写真も撮ってってよ!ほら、このお面とかちづるんに似合うと思うし!」


 そう言って差し出したのは猿がデフォルメされたお面だった。他にも数種類の動物がデフォルメされており、顔だけ動物になりきってそれっぽいポーズを取って写真を撮る、というのが目的らしい。前に並ぶ生徒たちも様々なポーズで撮影して楽しんでいる。


 何で猿なのかと思いながらもちづるがお面をつけてポーズを取ってみせると他の七人が写真を撮り出した。かなり似合っていた。


「いや、何でうちだけ!?あんたらもなんかやりーや!」


 そう言ってちづるがそれぞれにお面を渡した。七人はお面をつけると思い思いのポーズで写真を撮った。


「うわ、いい感じ!つくもとかもはやナマケモノの体ってこうなんじゃないかって思えるくらいナマケモノになりきれてる!」


 そう言って爆笑するちづるに、いや寝てるだけやんといおりがつっこむ。しぐれは動物のお面を気に入ったのか、並べてお面単体で写真を撮ったり、全ての動物のお面をつけたりと大いに楽しんでいる。

 

「いやあ、なかなかに楽しんだな!そろそろ次のクラス行こか!」


 どこに行くかとちづるが訊ねると、じゃあ、と二人が声を挙げた。

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