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待ちに待った学園祭!

「学・園・祭やー!」


 無事にテストを終え、待ちに待った学園祭のための準備に取り掛かる、ちづるの叫び声がB組に響く。学園祭のために色とりどりに飾りつけられた学校は、準備のためにいそいそと、でも楽しげに取り組んでいる生徒たちによって活気付いていた。

 いろは高校の学園祭は計四日間で、金曜日と土曜日にかけて文化祭をニ日間行い、その勢いのまま、日曜日から月曜日の二日間で体育祭を行うこととなっていた。怒涛のスケジュールだが、当の生徒たちは皆、楽しそうだ。

 もちろんちづるもその一人で、先程からワクワクした気持ちが抑えきれず、教室中を見回してはにやける、ということを繰り返している。


「ちづる、それ取って」


 ちづるはほいと、つくもにペンキを渡す。つくもはその能力を買われて、クラスの装飾担当となっていた。もちろん、つくもの才能をクラスメイトに教えたのはちづるである。









「学園祭の準備を進めるにあたって、クラスから二人、実行委員を立てたいんだけど誰かやりたい人はいる?」


 十月下旬。朝のホームルームでちづるのクラスの担任が来月の中旬に行われる学園祭について話をする。

 今日の六限目の時間では学園祭の内容や、それぞれの役割を決める予定だという。

 いろは高校では、一年生が教室を大規模に使ってのクラス展示、二年生が体育館で劇を行い、三年生、そして教職員が飲食店を担当することとなっている。


「六限目のホームルームの時間で改めて聞くけど、実行委員の立候補・推薦とか、展示の内容、やりたいこととかがあればそれまでに考えておいてほしいな」


 担任の言葉にクラスがどよめき立つ。あれがやりたい、これがいいんじゃないか、それは無理そうだねなど、皆ワクワクした様子で近くの席の者と話し合っている。


「つくも、学園祭やで!」


 んー、と特にいつもと変わらない返事をするつくもにつれへんなあと、口を尖らせながらも、来たる学園祭についてちづるは思いを巡らせた。



 そして待ちに待った六限目、学園祭のことを話し合うホームルームの時間になると、


「とりあえず実行委員決めよっか。やりたい人、いる?」


 前に出ていた学級委員の生徒がクラスメイトに問いかけた。クラスメイトたちが一斉にちづるの方を向いたのでちづるは、うち?と驚いた声をあげる。


「でもうち、転校してきたばっかやで?学校のこともみんなみたいにちゃんと分かってないし、そもそもやりたい人もいるやろ?」


「大丈夫だよ!みんなでちづるちゃんが良いねって話してたから」


 もちろん、ちづるちゃんが良ければ、だけどとクラスメイトから言われると、ちづるはそういうことなら任しといて!と張り切った。実行委員会をやりたい気持ちはあったが転校して数ヶ月ということもあり、さすがのちづるでも遠慮していたようだ。


 「じゃあ決まりだね。あと一人はどうする?やりたい人いる?」


 黒板にちづるの名前を書きながら学級委員の生徒がまた問いかけるが、クラスメイトたちは静まり返った。意外と実行委員やりたがる人っておらんのかなとちづるが思っていると、ある生徒が声を挙げた。


「真野くんは?」


 だってちづるちゃんと仲良いでしょと、言う生徒に他の生徒たちもいいかもと頷き出した。ちづるは焦って立ち上がり、みんなに向かって正気か?と言ったあと


「よく考えてみ?うちとつくもの組み合わせで実行委員になったら、このクラスさすがに終わるで?」


 自分で言うのもなんやけど、と続けた。それを聞いた生徒たちははっとした表情になり、確かに大変なことになる、と気付いたようだ。渦中のつくもがいまだに机に突っ伏して寝ている様子を見たからだろう。

 ちづるの意見に賛同した生徒たちは責任感のある生徒から選ぼうということになり、新田という男子生徒がもう一人の実行委員を務めることになった。


「じゃあ、ここからは実行委員に参考任せるね」


 そう言って学級委員が自分の席につく。実行委員になった新田は書記するよと言い、チョークを持ったため、ちづるが進行を始める。


「じゃあ、うちらのクラスは何する!?一年生やから教室使っての展示やんな」


 ちづるがクラスメイトに問いかける。担任から朝のホームルームで事前に伝えられていたため、すんなりと案が候補として挙げられていく。新田がそれを黒板に書き留めていった。そして複数の案から多数決が行われた。


「よーし、うちらのクラスは定番、お化け屋敷に決定や!」


 クラスから拍手が起こる。圧倒的票差により、お化け屋敷をすることになったB組は、今度はクラスメイトがそれぞれ何の役割をするかと言う議題で話し合う。お化け役や衣装係等、クラスメイトの役割が決まっていく中で、もはやB組で扱いに少し困っているらしい、つくもをどうするか、と言う話になった。


「あ、つくもは装飾でいいんちゃう?」


ちづるが言うとクラスメイトは何を言ってるのか分からないといった困惑した表情になる。


「えっと、真野くんだよ?当日にあんまり動かないお化け役とかしてもらったほうがいいんじゃないかな?装飾ってかなり準備に忙しいと思うし」


「動かないお化けって何?テレビから出てきた貞子とか?」


「いや貞子がそのまま動かないのは変だし逆に怖いでしょ」


 クラスメイトが話し出すのを見て、ちづるもなぜみんながそんな反応になるのか分からず困惑する。


「え、みんなはつくもが絵上手いの知らんの?」


 ちづるがクラスメイトに訊ねる。クラスメイトはぽかんとした表情をした後、口々に知らなかった、そうなの?などと反応を示した。


「そうやで!ってあんたはまた!」

 

 ちづるはそう言って未だに寝たままでいるつくもを起こす。つくもが何?と眠そうな顔で訊く。


「つくも、あんたを装飾担当に任命する。学園祭実行委員として!」


「何それ職権濫用でしょ」


 ちづるの命令に対してあくびをしながら答えるつくもに、クラスメイトたちは次々に真野くん絵描けるの!?見たい!と話しかける。つくもはきょとんとした顔でちづるを見る。


「どういうこと?」


「あんたが絵上手いってことみんなに教えといた!」


 悪びれる様子はなく元気に言うちづるにつくもがため息をつく。そんなつくもにクラスメイトはごめん、勝手に決めちゃってと謝る。つくもはおれが寝てたのが悪いからと答えた。


「まー、そう言うことやから。てかあんた最近いつにも増して寝てへん?大丈夫?」


「大丈夫。……ちょっと練習してるだけ」


 寝ているのがデフォルトのつくもとはいえ。あまりの眠りようにちづるは心配になり、つくもにだけ聞こえるくらいの小さな声で訊いたが、またもや欠伸をしながらつくもがさらっと答えた。























「実はそう、七人に頼みたいことがあって」


 まひろがそこで言葉を切るとかなめは、なに、どうしたのまひろん?と優しく訊ねた。そんなかなめにありがとうと笑いかけたあと、まひろが意を決したように言葉の続きを口にした。


「実は、文化祭でみんなと有志発表がしたくて」


 そう言った後まひろは俯く。だがかなめはいいじゃん、やろうよ!と目を輝かせている。他の六人もやりたいと言ったり、できるかなと不安がる者はいたものの、反対する者はいなかったため、八人は文化祭で有志発表を行うこととなった。


「それにしても意外だったよ!まひろんが有志やりたいと思ってたなんて!」


 遠慮しなくていいのに!と言いながらまひろにかなめが笑いかけるとまひろは高校の文化祭で何かやるのって楽しそうやなって憧れてたからと照れたような顔で笑った。


「けど、何するの?おれ、楽器なんにもできないけど」


 つくもが言うと、オレもとあゆむも続けた。まひろは大丈夫!と答えて


「二曲発表しようと思ってるうちの一曲は死に物狂いでそれぞれの楽器練習してもらうし!あ、ちづ姉はダンスで!」


 先程まで躊躇っていたとは思えないくらいの笑顔のまひろに、了解!とちづるは元気よく言うが、つくもとあゆむはひえっと呟き、怯えた様子である。


「じゃあもう一曲はどうするの?」


 ぼくもカスタネットくらいしかできないんだけど、と微笑みながらのぞみが訊く。まひろは、もう一曲も楽器ではあるけど、と口にしてから


「ハンドベルをやってみたくて。あ、こっちも死に物狂いで練習してほしいな」


 笑顔を崩さずまひろが言った。こうして、文化祭で有志発表を行うこととなったらま鉢の八人は各々、死に物狂いで練習をすることになったのであった。

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