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末っ子姐さん

「そういえばさ、父さんと、四人のお父さんって高校時代の先輩と後輩だったってほんと!?」


かなめが思い出したように訊く 。昨日、四人を送り届け、帰宅した父からその話を聞いたようだ。


「あ、なんかそんなこと言ってたっけ」


 ちづるも、そういえばと、昨日の車でそうまとした会話を思い出す。そんな反応のちづるを見ていおりは


「そっか、ちづるとしぐれは昨日お父さんが帰ってきたときすでに寝てたもんな。ほんまらしいで」


 そう言ったあと、あきらには聞こえないくらいの小さな声で、可愛がってたつもりらしい、と付け加える。


「そうやで。あ、あと、かなめくんたち。俺のことはあきらでいいよ」


「あ、私も私も!さくらでええよ!」


 四人のお父さんじゃ長いし他人行儀だからと、名前で呼ぶよう真野兄弟に促すあきらに、さくらも便乗する。


「やったー!じゃあ、さっくーとあっきー、」


仲良くなった相手に対してあだ名を付けて呼ぶタイプのかなめは早速あだ名を付けて呼ぼうとするが、即座にそうまに待て、かなめとストップをかけられる。


「なになに?父さんだっていおりんたちにそうちゃんって」


呼ばれてるのに、なんでと言いかけたかなめであったが、必死な形相で激しく横に首を振る父の姿に何かを察し、


「……あきらさんで!」


 と言い直した。ほっとした表情を浮かべるそうまに対し、あきらは


「お前の中の俺ってどうなってんの?」


 となかば呆れたような、でも悲しんでいるような顔をしながら訊いた。


「そうちゃん、ぱぱのこと怖がってたもんなー」


 しぐれがふふふと口を手で覆い、笑うと、そうまは当時のあきらを思い出しながら答える。


「やっぱり、とにかく、厳しいっていう印象が強いね。まあ、それは今もだけど」


「そうちゃん?」


可愛がっていたつもりの後輩からのあまりの言われように、眉間をぴくりと動かしてあきらが言う。だがそんな父の様子には気づかず、


「けどー、昨日も言ったけど、しぐはぱぱが怒ってるとこあんまし見たことない!」


 としぐれが考えるそぶりをしながら言った。いおりが自身でも認める通り、あきらは四姉妹をでろでろに甘やかしていたからである。


「逆に僕は怒ってるの見たことないって聞いてびっくりしたよ。だからこの目で見るまでは信じられなかったんだけどね。確かにあきらさん、君たち四人にはとても甘々だった」


 そうまが当時とのギャップに笑う。よっぽど当時は厳しく、そして今は甘いらしい。


「お前な」


 一言、あきらがそう言うと、我に返ったそうまは姿勢を正して何事もなかったかのような状況を取り繕った。


「お前は白々しいとこ、変わってねえな……」


 そんな後輩を見て、まるで成長してない、鍛え方を間違えたか、とあきらはため息をつく。


「これもさ、昨日本人には言ってんけどさ」


 いおりが、そうまとあきらのやりとりをぼんやりと見ながら呟く。


「お父さんの今みたいなそうちゃんへの態度とか、昔ちづるが危ないことして本気で怒った時とかって、まひろが怒った時にそっくり」


「あ、いお姉!」

 

 昨日で終わったと思っていた話を蒸し返されてまひろは慌てふためくが、


「確かに言われてみればそうかも!」


「姐さんモードのまひろ!」


ちづるとしぐれも納得したように言うのでそれ以上何も言えなくなってしまった。


「それもさ、前から気になってたんだよね!まひろちゃんが姐さんって呼ばれてたって話!」


 しぐれの言葉を聞いてかなめがそういえばと真相を求める。


「前もそんなこと言ってたな。そん時はあんまよく分かんなかったけど」


「ファンクラブもあったって言ってなかったっけ」


 そんなかなめの発言にあゆむとつくもも、想像できないけど、と付け足して訊ねる。


「あーそうそう!どっちもきっかけは同じなんやけど……」


 当たり前のようにちづるが答えようとするので


「ちづ姉、何言う気?」


 もはや冷静になるしかなかったまひろは静かにつぶやく。しかし逆にこれがかなり効いたようで、はっと我に返ったちづるは


「大丈夫!変なことは言わんし!」


 と、慌てて末の妹、まひろを宥め始めた。そして相談した結果


「まあ、かいつまんで言うと、まひろはこんな感じで短気なところがあって」


 と話を続けることを許可されたが、


「……その話聞いて大丈夫そう?」


 怒らせると怖い(と聞いている)まひろからの全員に対する圧のこもった視線を感じ、居心地が悪いような気持ちになり、不安げな表情を浮かべてつくもが訊く。


「だから大丈夫やって!それに、まひろかっこいいねんから怒ることないやろ」


そんなつくもの様子を見てちづるは言い切り、逆に、まひろになんでそんなに怒る必要があるのかと問い詰める。


「……だって恥ずかしいから」


 姉の言い分に観念したように、まひろは三角座りになって顔を埋めてそれはもう、小さな声でつぶやいた。そんなまひろを見て大丈夫だと判断したちづるは話を続ける。


「まひろは短気な所と情に熱い所があって。中学の時なんやけど、上級生に絡まれて困ってる様子の同級生を見たまひろはすぐに割って入ったと思えば、『てめえ、何くだらねえことしてやがんだ?さっさと消えなぁ!』って言い放ったらしくて」


「その時しぐらは近くにいーひんかったからまひろが助けた子とか他の子、なんならその上級生から聞いたんやけどな」


「そん時ちょうど、お弁当忘れてお腹空いてたのもあったらしくて迫力がやばかったらしい」


 ちづるの話にしぐれといおりが付け加えるかのように言う。


「それで、その助けた子から感謝されただけじゃなくて、後日その上級生たちもまひろのこと慕うようになって」


 ちづるの話に加えていおりが、


「数日後の文化祭でまひろがギターかき鳴らして歌ってたの見たのが決定打やったらしいな」


 と言うので、ギターも弾けるのか、と真野兄弟が心の中で同じことを考える。


「んで、ついたあだ名が姐さんなわけ。文化祭のバンドも凄かったからそこでファンクラブは設立されるわ、私ら三人も注目されるわで一時は大変やったよな」


当時を思い出して面白そうに笑うちづるに対して、まひろはうーっとどんどん身を縮こめている。


「ま、そんな訳やから、まひろのこと、あんま怒らせへんように気をつけた方がいいかもな」


そう言ってにやりとするちづるであったが一番怒らせる可能性高いのはあんたやといおりに言われて


「ほんまや!」


 と、はっとするちづる。なんで心当たりあんだよとあゆむが苦笑して言うと他の六人もつられて笑う。


「てか、大丈夫やから!昔の話やし!」


「でもたまにー、姐さんモード、出てるで?」


しぐれが笑って言うとまひろはうっ、と言葉を詰まらせて、


「き、気を付ける……!」


  と意気込んだ。そんなまひろにかなめとのぞみは

程々でいいからねとフォローを入れる。


「さ、ご飯も食べ終わったことやし、しぐらの部屋に案内しますか!しぐのおともだちも紹介したいし!」


「おともだち?」


「そ!しぐのおともだち、シーズニングちゃんたち!」


 しぐれが笑顔で答えた。










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