早速の約束/やっぱり
「そういえば、えまちゃん、うちの母と会う約束したんやっけ?さっきいおりに連絡先聞いてたやんな?」
ちづるが聞くと
「そうなの!けどまだ連絡先交換しただけで日程は決めてないのよね」
えまが答えた。
「じゃあさ、明日は?」
「明日?」
「明日ならさ、うち両親二人ともいるし!もちろんのぞぴよ、あゆりん、かなっぺ、つっきゅんたち四人も!」
「それいいな!」
しぐれの提案にちづるがはしゃいだ様子で言う。
「もうあんたらは勝手に話進めて!ごめんなさい、予定あったら断ってくれて全然大丈夫ですし……!」
いおりが盛り上がっている二人を宥めてから、そうまとえまに言う。
「いえ、全然いいのよ。むしろお邪魔じゃないかしら。ご両親とも誕生日パーティーの予定考えていらっしゃるだろうし。」
「それは大丈夫!わりと毎年いろんな人来たりもするから!友だちとか親戚とか!」
「じゃあお言葉に甘えて少しだけお邪魔させていただこうかしら?」
「やったー!」
「あとはそうちゃんの心の準備次第……ではあるかな?」
しぐれが笑ってそう言うと
「う、うん、もちろん行かせていただくよ」
と明らかに動揺しているそうまが取り繕ったような笑顔でそう答えた。
「あはは!わたしたちがいるから大丈夫だと思います!そんなに緊張しなくても」
「でもね、まひろちゃん。確かに君たちには甘々そうだけどね、いや、やめておこう。思い出しただけでも恐ろしい……!」
そうまが身震いしながら言った。
「あ、次ので信号曲がってすぐ右が家です」
いおりがそう言い、間も無くして四人の住むマンションに到着した。
「今日はお邪魔してしまった上に送っていただいて本当にありがとうございました。母を呼んで来ますので少しお待ちいただけますか?ちづる」
「おけ!待ってて待っててー!呼んでくるー!」
いおりが言うとちづるがダッシュでマンションに入っていった。少しして二人が出てきた。羅野姉妹の四人の母であるさくらがそうまとえまに挨拶をする。
「初めまして。四人の母の羅野さくらといいます
。今日は四人がお世話になって本当にありがとうございました。ご子息にはいつも仲良くしていただいてるみたいで……!」
「初めまして。私、真野えまといいます。こちらこそいおりちゃん、ちづるちゃん、しぐれちゃん、まひろちゃんには息子四人と仲良くしていただいていて感謝しております。さくらさんにも会ってみたかったのでお会いできてとても嬉しいです。こちらは夫のそうまです」
「初めまして、真野そうまといいます。息子たちが友だちとあんなに楽しそうにしているのを見るのは久しぶりでなんだか嬉しかったです」
えまとそうまも挨拶を返す。
「ちづるから少し聞いたんですが、明日うちに来てくださるとか」
さくらが言うと
「あ、さっき四人が誘ってくれて。お邪魔でなければなんですが……!」
えまが答えた。
「もちろんぜひ!最近ようやく片付けも終わりましてお招きできるので、お待ちしておりますね。私も四つ子を持つ方たちにお会いできるなんて思ってもみなかったからお話ししてみたいですし!」
「そう言っていただけるとうれしいです。では四人ともお話ししていましたがお昼過ぎに少しだけ伺いますね」
「わかりました!夫にも伝えておきます」
「あきら、さん」
「あれ、夫をご存知で?」
そうまが呟いたのをさくらが少し驚いた様子で聞き返す。
「あんなあんなー!そうちゃん、とーちゃんの高校時代の後輩やってんて!」
「え、そうなん?」
ちづるの言葉をさくらが聞き返した。
「あ、はい。実はそうなんです。よくしごかれてました」
そうまが苦笑いしながら言った。
「そうだったんですね、じゃあ夫も会えるの喜ぶと思います。仲良くしてる後輩がいたってよく聞いてたし、そうまさんのことかも」
「な、仲良く!?い、いやそれ僕のことかなあ」
「明日聞いてみましょう。そろそろ帰りましょうか」
動揺するそうまにえまが笑いながら言った。
「あ、では、本当に娘がお世話になりありがとうございました。また明日お待ちしておりますので、どうかお気をつけて」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
「バイバーイ、そうちゃん、えまちゃーん!」
「ありがとうございました」
五人は頭を下げ、そうまとえまの車を見送った。
「ハッピー!バースデー!愛しの娘たちよ!そして妻よ!ただいまー!」
玄関のドアが開いたと同時に陽気な声が家に響き渡った。
「ちょっと!もう夜中やねんからご近所迷惑やろ!」
さくらが浮かれて帰ってきたあきらに静かに怒り声で伝える。
「ご、ごめん。つい。あれ、愛しの四人は?」
「あ、お父さん。おかえり」
「おかえりなさい」
父の帰宅に気づいたいおりとまひろが玄関まで来て声をかける。
「ただいま!そしてお誕生日おめでとう!いおり、まひろ。あれ、ちづるとしぐれは?」
「ありがと。二人とももう寝てる」
「しぐれはしょうがないとしてもちづるまで……?」
いおりの返答を聞いてあきらが肩を落とす。
「あ、でも二人は起きてくれてたんやな!ありがとう!」
「うん。今日は真野くんたちの家に行って遊んでた。多分ちづるははしゃぎすぎてたから疲れてたんやろ。前遊んだ時もやったけど」
「おー、あの四つ子の子たちか。月一で遊ぶことになったって言ってたけど仲良しやな」
「あ、そうや。お父さん。真野そうまって人知ってる?」
「あ、そうそう、それ聞きたいんやった」
しぐれの質問にいおりも続けた。そんな二人にあきらは、
「真野そうま……?」
と静かにつぶやいた。
「高校の時の後輩なんやろ?」
さくらが聞くと
「そうやけど……。何で三人が知ってんの?」
と、不思議そうに逆にあきらが質問した。
「やっぱりそうなんや」
「すごい偶然があるもんやな」
「え、え、なになに?どういうこと?」
納得したような二人のやり取りにまだ、状況が掴めていないあきらは尋ねる。
「真野そうまさん、真野くんたちのお父さんやねん」
「え?……ええええええ!?」
「ちょ、うるさいて」
「ごめん、びっくりしてもーた。まさかそんな偶然があるとは」
「まあそりゃそーなるか」
「仲良かったん?そうちゃんは扱かれてたって言ってたけど」
「ひどいな。かわいがってたのに。いやそんなことより。そうちゃん?」
「そー。親しみ込めて」
「あいつ、ひさびさにしめるか」
「それ、過去の真相言ってしまってない?」
「あはは、冗談冗談。可愛がってたのはほんまやで。あそこまでついてくるのもなかなかおらんからよく付き合わせてただけで」
「あんだけビビってた理由絶対それやん……」
「あ、それでな、お父さん」
いおりとあきらの会話を聞いていたまひろが口を挟む。
「明日真野くんたちと、お父さんのそうちゃん、お母さんのえまちゃんをうちに呼びたくて」
「あー、そーやねん。えまちゃん、お母さんに会いたがってたし」
いおりも思い出したように言った。
「そうなんや!いいな!盛大に誕生を祝えるし」
「なにそれ、程々でいいで?」
「まあまあ。てか二人もそろそろ寝な?明日来てくれるんやしさ」
さくらが時計を見て言うと
「あー、そやな。あたしもさすがに眠いわ」
「おやすみ、二人とも」
いおりが答え、それにまひろも続く。
「ああ、おやすみ。起きててくれてありがとな」
「はーい。おやすみ」
いおりとまひろが部屋に戻る。
「やっぱり後輩やってんな、そうちゃん」
「な、実はちょっと信じてなかった。さすがにそんな偶然あるか?みたいな」
「わかる。それにお父さん厳しかったって、そうちゃんら言ってたし信じれんかったよな」
「まあ最近はないけど昔はたまに、本気で怒ってるの見たことはあるけどな。まひろが姐さんモードになった時とそっくり」
「い、いお姉!」
「あはは、ごめんごめん。でもほんまのことやで」
「う……」
「さあ、そろそろ寝よ!見てよしぐれ。あほみたいにしあわせそうに寝てる」
「ほんまや。動物に囲まれてる夢でも見てるんかな」
「かもな。さ、おやすみ」
「うん、おやすみ!」
ちづるが気持ちよさそうに寝息を立てていた。それに続くようにすぐ、二人も寝息を立てた。




