お待ちかね、プレゼント交換その②
「ちづるー、そろそろ起きろー」
「あんたいつまで拗ねてんねん」
しぐれといおりの言葉にちづるは
「だってー、なんでうちのプレゼント、のぞみが小学生の時の計算ドリルなん!?のぞみほんま許さん!」
と憤慨している。
「てか、のぞぴよ、もの持ち良すぎん?しぐ、小学生の時の教科書とか一個もないわ」
しぐれが感心したように言うと
「はは、なんか捨てられなくて」
とのぞみが答える。そんなのぞみにあゆむは
「お前、それだから部屋が片付かねえんだよ」
と、至極真っ当なことを言う。
「ふふ、でも、ちょうど当たったのがちづるちゃんでよかったよ」
「おいお前それどう言う意味やねん!プレゼント買うお金ないならないで言ってくれたらうちだって、」
そう続けようとするちづるの話をさえぎって
「まあ、計算ドリルは冗談だから許して。本当はちゃんと用意してるから。はい、これ」
とのぞみがちづるに袋を差し出す。
そんなのぞみの声を聞いてふて寝していたちづるがガバッと勢いよく飛び起きる。
「まじで!」
「こっちだったよね。ごめんね。はい、漢字ドリル」
「だからお前!ってこれ、ノート……?」
また同じようなものを、と言いかけたちづるだったが、のぞみに差し出されたものを見てつぶやいた。
「うん」
「あのさ、シンプルで、かわいいことはかわいいんやけど、何でノート?」
「そのノートに、ぼくらが集まって一緒に過ごしたり、遊んだらした記録を残せたらいいんじゃないかと思ったんだよね」
「記録を、残す……」
「写真はかなめくんがカメラとか今日買ったチェキで撮ってくれるでしょ。それを貼るのもいいし、文を書くのも、思い思いに何かメッセージやイラストをかくのだっていい。」
のぞみが続ける。
「そして数年後また、みんなで笑って懐かしいねって言いながら更新できたら……と思ったんだけど。あれ?ちづるちゃん、何で泣いてるの?」
「泣いてへん!嬉し涙や!」
「泣いてんじゃねえか」
あゆむが少し笑いながら言う。
「もちろん、ちづるちゃんだけじゃなくて、みんなでこのノートを作っていきたいんだけど、当たったのはちづるちゃんだから、管理してくれるとうれしいなって思うんだけど、どうかな?」
「うっ、任せとけー!」
「やっぱ泣いてる」
「悔し涙や!」
つくもの指摘にムキになってちづるが答える。
「なら、どういう情緒だよ」
「ほっといて!」
すかさずあゆむがつっこんだ。
「らま鉢を一番愛してるのはのぞぴよなのかもやな!よ!ダークホース!」
「なんか照れるな。」
のぞみがしれっと言う。
「あ、ちょっとそれ聞いて思ったんやけど」
「どうしたん?まひろ」
「この靴下!ちょうどわたしたちがすきな色やから、もし選んでくれたかなめくんがよければ、なんやけど、わたしたちでお揃いにして履きたいなって思ったんやけどいいかな?」
「えー!もちろん!逆にうれしいくらい!」
まひろの提案にかなめがよろこんだ。
「あ、それならしぐちゃん、ぼくらもお揃いにさせてもらってもいいかな?」
同じく靴下をもらったのぞみがしぐれに聞いた。
「もっちろーん!きっとみんな似合うよ!」
しぐれも快諾した。
「靴下とは言え、なんかお揃いって子どもの時以来だからちょっと恥ずいけどな」
あゆむがぼそっと言う。
「そんなこと言いながら、かなりうれしそうやな、あゆむ!」
「照れんなよ、あゆりん!素直になりなよ!」
そんなあゆむを見てちづるとしぐれがうれしそうに言うのであゆむは、
「お前ら騒音コンビのそういうとこほんと……!」
と言うが、相変わらずの二人は
「えーなになにー?だいすき、ですってしぐれさーん。」
「ずっと仲良くしてくれ、ですってちづる姉さーん!」
と茶化した。
「あーはいはい、言ってろ。ったく、普段ちづるのこと姉さんて呼ばねえくせに、お前らこういう時だけ結託しやがって」
「まあまあ、あゆむくん。はいお揃い」
そう言ってニコニコしながらあゆむに靴下を渡すのぞみ。
「うるせえ、ばかアニキ!」
そんなのぞみからあゆむは靴下を受け取った。
「あ、じゃあじゃあ、まひろんがくれたこのお菓子もみんなにおすそわけー!」
「あ、ならこの花束の飴もどーぞ!」
そんな流れにかなめとしぐれも続く。
「いおりがくれたバスボムも個包装だから分けっこ、する?」
「おそろーい!」
「使わねえのかよ!」
「そんでそんでー!ちづるんの選んだフェイスパックをみんなで貼って、早速記念写真撮っちゃおー!」
しぐれがはしゃいで言うが、あゆむは
「……ただでさえ顔も体型も似てんのに、そんなの貼ったら分からなくなりそうだな、オレらの場合」
と、ぼそっと言った。だがちづるは、
「大丈夫!ちゃんと分かるから」
自信ありげにそう言って笑う。
「あ?おう」
とあゆむは返す。
「しぐ今度はこの大仏のやつにする!」
「だから、しぐのセンスはどうなってんの」
またもや、個性的なパックを選ぶしぐれにつくもが言うが、しぐれは気にせず、
「さ、みんなも選んで選んでー!」
と促した。
「うわ、思ったより冷てえな、これ」
あゆむが早速顔に貼り付けて感想を述べるとかなめも
「確かに!けどお肌が潤う〜って感じ!」
と言って笑った。しぐれも
「分かる分かる、ほっぺたが喜んではるよな」
と言って笑う。
「なんで他人事なんだよ。お前のほっぺただろ」
「あゆりんがほっぺたって言うのなんかかわいいな!」
「思った!」
しぐれの言い草に思わずつっこんだあゆむだったが、騒音コンビは聞き流してはくれない。
「あーもうお前らとしゃべるとほんっと、」
「楽しい!」
ちづるとしぐれが声を揃えて言う。
「ちげえって!」
あゆむは盛大にため息をつく。
「はいはい、そろそろ撮るよー!あゆあゆ、カラフルフラワー真ん中で持って!」
そんなやり取りに笑いつつ、かなめが撮影の指揮をとる。
「何でオレが真ん中?こうか?」
「うん!そんで、しぐっちももうちょっと右に寄って、飴の花束見せて!」
「わかったー!これでいい?」
「おけ!他のみんなは靴下と、バスボム持って!ボクはこの鉢を、うん、この角度かな!じゃあみんな、撮るよ、はい、」
「ラマ鉢ーズ!」
「……だからこれ恥ずいって」
「でもでもー、あゆりんがちゃんと言ってたの、しぐ聞こえてたよー?」
「あゆむくん、今度はもうちょっと大きい声で言えるといいなあ!」
「あーもう!かなめ!撮れたんだろ!見せろ!」
「あゆあゆ待って待って、もうちょっと!」
「あ、うちにも見せてー!」
「しぐもしぐもー!」
「ほんとにお前らうるせえな!いおり、まひろ!見てねえでこいつら何とかしろ」
「ふはは、あゆむくん、照れてるくせにめちゃくちゃちゃんとラマ鉢ーズって言ってた……。あはは、ごめんちょっとツボった……!あは、あはあはははひはひひ」
助けを求めたあゆむだったが、ツボにハマっているまひろを見て冷静になり、
「なあ、いおり。お前の妹たち大丈夫か?」
と同情するかのような面持ちでいおりに聞く。
「ごめんな、全然大丈夫じゃないねん」
いおりが嘆いた。
「まひろ、ほんとにゲラ」
つくもが言う。
「こうなるとしばらく止まらんからほんま、ごめんな」
遠い目をして謝るいおりについあゆむも
「ああ、オレもなんかごめん」
と謝った。
「あ、できたよー!ほら!順番で見て!」
「わー!めっちゃいい!」
「ちづる、パックしてるのにあほな顔してるの丸わかり」
「あほな顔言うな!」
「かなめくんの表情いいなー。写真撮るのすきなのが伝わってくるって感じ」
「へへー!ありがと、いおりん!」
「つくもくん、あくびしてる?」
「あ、ほんとだね」
「な!言ったやろ!ちゃんと分かるからって」
そう言って得意げに笑うちづるを見て
「ああ、そーだな」
とあゆむも笑った。
「ちづ姉、さっきのノート!」
ようやく笑いが収まったらしい、まひろがちづるに言う。
「あ、そやな!じゃあこの辺にどーーーーん!」
ちづるは、先程のぞみからもらったノートの、大胆にもページのど真ん中に貼り付けた。
「あー、何でそんな真ん中に、しかもそんな向きで貼んねん」
いおりが嘆くとつくもも、
「ほんとちづる、センスない」
と、呆れた顔で言う。
「なんやとー!」
ちづるが憤慨するが、かなめが
「とりあえずなんか、かいてかいてー!」
と言うと、
「じゃあうちがこの辺に……!」
率先してペンを取ろうとするので、
「あんたは一番最後や。あほちづる」
「ちづるがかいたらノートの踏み場がなくなる。のぞみの部屋みたいになる」
いおりとつくもに言われ、
「なんやそれ!」
と言いながらも渋々引き下がる。
「それで思い出したけど、誰かがかいてるの待ってる間、のぞみくんの部屋覗きに行ってもいーい?」
「いいけど……ほんとにいいの?」
「のぞみくんのその言い方、なんかめちゃくちゃやばそう」
「しぐ、やっぱやめとこっかなー?」
「ふふ、それがいいかもね」
「お前がちゃんと片付ければいいだけなんだけどな」
「はい。かけたよ、次だれがかくの?」
「うわー!さっすがつっきゅん!らま鉢ちゃんかわいい!」
「そういえば、この子の名前もらま鉢なのかな?」
「特に決まってはないよな」
「うーん。じゃあ、ラー油withマスタードちゃんとかどう?」
「長ぇし、何でそんなに調味料を名付けるのにこだわりあんの」
「なんか、からそう」
「そこ?」
「わたしもかけたよ、次だれかどーぞ」
「あ、まひろん、みてみてー!さっきもらった鉢にあゆあゆのドライフラワー飾ったんだけど、なんかいい感じになったと思わない!?」
「ほんまや、なんかめっちゃおしゃれやな!」
「やったー!部屋に飾ろっとー!」
「のぞみくんと同じ部屋なんやろ?飾るスペースあるん?」
「ボクのスペースはちゃんと片付いてるもん!」
まひろとかなめも楽しそうに話す。
「こんな感じか、あたしもかけたで」
「いや、待て待て待て」
「いおりーん!」
「もちろん、かき方に決まりを作るつもりはないし、これはこれでいいんだけどね……」
「そういうとこでちづると四つ子であること、発揮してこなくていいのに」
「なにをー!」つくもの言葉にちづるが憤慨する。
「え!まずかった!?やばい?」
真野兄弟の反応に焦るいおりに
「ううん、だ、大丈夫だよ!」
とかなめがなんとかフォローする。
「しぐもかけた!ってか、あゆあゆはもういいの?シンプルだねえ」
「ああ」
「今後に期待、って感じやな」
「そんなお前は今からかくもんな?期待させてもらうわ」
にやりと言うあゆむに
「やば、自分でハードル上げてもーた」
とちづるが嘆く。
「はい、ちづるちゃん。ペンどうぞ」
のぞみからペンを受け取り何かをかき始めたちづる。しばらくして
「まあ、今日はこのくらいにしといたるわ!」
と言った。かき終わったようだ。
「えっと、これはヘドロの妖精が踊っているところかな?上手だね」
「のんのん、失礼だよ!ゴミ箱を漁ってたら宇宙人に顔の三分の二を吸い込まれちゃってぼう然としている猫ちゃんだよね!ちづるん!」
「どっちもちゃうわ!なんやヘドロの妖精って!?かなめのやつもどんな世界観やねん!……つくものやつを参考にして普通にラマ鉢の絵かいたつもりなんやけど」
二人にツッコミを入れた後、ちづるがボソっと言うと、いおりは
「うそ、全然わからんわ。絵心なさすぎやろ」
と言った。だが、あゆむに呆れたように
「そのツッコミ、いおりは言えねえからな?ブーメランってやつ」
と言われ、
「え、あたしのってそんなにひどいん?」
と、うろたえた。
「うん、どんぐりの背比べ」
そんないおりに容赦なくつくもが言い放った。
「まあ、でもとりあえずいい感じになったんちゃう?のぞぴよのアイディアほんまに最高やわ!これからもいっぱい埋めてこな!」
「それはよかった。もちろん」
うれしそうなしぐれにのぞみもうれしそうに言った。




