プレゼント紹介と他己紹介の続き
「たっだいまー!」
かなめが元気よく玄関のドアを開ける。
「おかえりー!」
えまが玄関で八人を迎える。
「再び、お邪魔します……!」
出迎えてくれたえまを見ていおりが言うと
「もういおりちゃん、そんな畏まらずただいまって言ってくれた方がうれしいわ!」
と笑った。
「え、あ、ただいま……?」
「はい、おかえりなさい」
戸惑いつつ、素直に言ういおりにえまが微笑む。
「あれ、父さんはー?」
父の姿がないことに気づいたかなめが聞く。
「今お店にピザ取りに行ってくれてる。あなたたちの帰宅に合わせて注文してさっき取りに行ったところだからそろそろ帰ってくると思うわ」
ガチャ
「あ、ほら」
「ただいまー。って帰ってたのか。おかえり。そしていらっしゃい」
「は、初めまして。お邪魔してます」
「そんな畏まらなくていいのに。今帰ってきたところかい?さーさー上がって上がって。ピザ出来立てだから冷めないうちに食べよう」
「やったー!ピザ!ピザ!」
そう言ってしぐれが謎の小躍りを披露しつつ、リビングに向かう。
「いただきまーす!」
大量のピザを前に、八人のうれしげな声が揃う。
「はーい。遠慮しないでいっぱい食べてね」
「わーい!うれしい!」
「四人は明日がお誕生日なんだってね。一足早いけどおめでとう。プレゼント買いに行ってたんだよね。何買ってきたんだい?」
「ありがとう!それぞれがほしいものと交換用のプレゼント買ったんだ!」
「ボクはねー!チェキ買ってもらったんだ!見てみていいでしょー!あとでみんなで撮ろうね!」
「うん!」
「じゃあなんかポーズ考えとこ!」
「……ラマ鉢ーズ?」
「え、それまたやんの?」
「わたしはウクレレを……音楽がすきでやってみたかったからめっちゃうれしいです」
「早く弾きたくてうずうずしてるな」
「うん、実はもうずっと頭の中で弾きまくってる」
「ははは、後で弾いてみてもらえるかい?」
「え、いいんですか?」
「そんな大音量じゃなくてちょっとくらいなら大丈夫だよ」
「ありがとうございます!」
「うちはみてみてー!ランニングシューズ!オレンジがかっこいいやろ!軽い素材やからもっと距離伸ばせそう!まひろじゃないけど早くこれ履いて走りたくてうずうずする!」
「静かだとしてもうちの中で走るのはさすがにだめだよ」
「走るかぁー!わかってるわそれくらい!」
「あはははは。やめて、つくもくんおもしろすぎる」
「……おれといおりは化粧品買ってもらった」
「高校生になって最近化粧してる子もちらほらいるなって思ってたし、つくもくんも見たいって言っててほしくなりました」
「へえ、つくも化粧品に興味あるのか」
「つくもくん、母さんにもやってみてー!」
「あ、ずるい、父さんにもやってくれるか?」
「なんで父さんにまで……?まあ練習台が五人に増える分には全然いいけど」
「五人ってまさかオレも入ってるのか?」
「うん、もちろん」
「まじか」
「あゆむくんは?何買ってもらったの?」
「オレはこれ。フォンデュメーカー」
「わー!チョコとかチーズがフォンデュできるってやつよね?」
「そう。これあれば時間ない時でもご飯すぐ準備できるし」
「何より〜!うちらが遊びにきた時楽しめるように、やって!」
「あ!ちづるお前!」
「だってえー」
「だってじゃねえってさっきも言っただろ!」
「……ってなんだよお前らその顔は!」
「あ、ごめん。あゆむくんあたしらのことだいすきなんやなって思ったらついにやけてしまった」
「右に同じく……!」
「あーもう!オレはもういいから!のぞみお前もにやけてねえで自分のやつ出せ!」
「ふふ、わかった。ちょっと食べちゃってるけど、北海道物産展がやっててね、すきなお店のお菓子いっぱい買ってもらったんだ」
「え、いつの間に食べたんや?」
「つい我慢できなくて」
「子どもか」
そんな兄にあゆむが呆れたように言う。
「しぐちゃんは?」
「しぐはねえ。じゃじゃーん!お家にいる鳥のしょうゆちゃんとケチャップちゃん用のおもちゃ買ってもらっちゃったー!これで遊びまくるんだー!あ、そうだ写真あるから、みてみて!かわいいでしょー!」
「まあほんとにかわいいわね」
「名前もセンスがあっていいな」
「へへーありがとうー!」
「あ、しぐちゃん、これ」
「ん、なにこれのぞぴよ?」
のぞみがしぐれにラッピングされた袋を渡す。
「だってしぐちゃん用のやつ全然予算足りてなかったから。追加でみんなでこっそり買っておいたんだ。」
「え!そんな、開けてもいい?」
「もちろん」
「わぁ!動物のペンケース!?」
「うん、普段使いできてかわいいかなって。みんなで選んだんだ」
「しぐ泣いちゃいそう。ありがとうみんな」
「それはよかった。どういたしまして」
「それぞれがいいのもらえてよかったわねえ」
「うん!」
「ごちそうさまでしたー!」
「お腹いっぱいー!おいしかったー!」
「みんな食後にお茶飲む?」
「あ、えまちゃんありがとう!」
「あれ、母さんみんなにえまちゃんって呼ばれてるの?」
「そうなのー。かわいいでしょ」
「そういえばお父さんのことはなんて呼んだらいーい?」
「名前、なんて言うん?」
しぐれとちづるが聞くと
「父さんの名前はそうまだよ」
と、のぞみが答えた。
「そうま……。じゃあそうちゃんは?」.
「こら、しぐれ!」
「へ?」
「失礼やろ」
なぜ怒られたか分かっていないしぐれをいおりが嗜めるが
「いや、全然いいよ。それくらいフランクに呼んでくれた方がうれしいし!」
と笑って言った。
「じゃあそうちゃんで!」
ちづるが早速そうちゃん呼びすると
「だからなんであんたらはそんなに順応が早いねん」
といおりがため息をついた。
「あはは、ちづ姉としぐ姉のよさ、やから」
「ダメなとこでもあるけどな……?」
まひろの姉へのフォローにさらにいおりはため息をつく。
「お茶入ったからかなめくん、運ぶの手伝ってくれる?」
「はいはーい。ありがとう母さん!はい、どーぞ」
とかなめがお茶を配る。
「ありがとう!はあ、あったまる〜!」
「いおり、こぼすなよ」
「うるさい、わかってる」
いおりにちづるが言うと
「ちづるじゃなくて?」
と、つくもが驚きながら聞いた。
「へっへー!こういう時こぼすのは意外かもしれんけどうちじゃなくていおりやねんなー!めちゃくちゃ意外やろ!」
「ちづる、自分自身のこともディスってるけど大丈夫か?」
なぜか得意げに話すちづるをあゆむが心配する。
「そういえば他己紹介の時も意外と抜けてるって言ってたっけ?」
かなめが思い出したように聞く。
「そーそー!結構抜けてるしわりと天然でアホなとこあるからさー!」
いおりの視線に気付かずちづるが呑気に笑いながら話す。そして、案の定、頭をはたかれる。
そんな二人に苦笑しつつ、かなめが
「へー!あ、他己紹介で思い出した!ずっと気になってたんだけど、なんかソフトクリーム?だっけ。途中まで話してたじゃん?あれなんだったの?」
と聞いた。それに対していおりは
「うっ。覚えてた」
かなめの言葉にいおりが顔を顰める。
「あーあれな!ソフトクリームの機械あるやん、レバー引いてソフトクリーム出るやつ。実は昔、あれをいおりが一人でやってたみたいなんやけど、なんか青ざめた顔でテーブルに戻ってきてさー」
「うんうん」
「はあ」
さすがに止めることができないと判断したいおりはため息をつく。
「それでうちに向かって『なんかソフトクリームがめっちゃ出た』って言ってきて。何かと思って機械のとこ見に行ったらまじでソフトクリームの渦が何層にも重なった塊みたいな状態になってた上にまだ機械は稼働しててさ」
「えー止まらなくなっちゃったのかな?」
何でだろうと言う顔をして、かなめが聞くと
「いや、レバー押せばいいだけやったのに、なぜか止め方わからんくなったらしい」
ちづるが首を振り、答える。
「あれすごかったよな。どんどんどんどんソフトクリームが出て来て……。まひろが全部食べたからよかったけど」
しぐれも思い出し笑いつつ、話に加わる。
「結局あの機械のソフトクリーム全部出し尽くしちゃったから機械に準備中って貼り紙が貼られてたよな」
「懐かしい」
ソフトクリームを大量に食べたことを思い出してまひろが幸せそうな顔をする。
「ああ、今思い出しても恥ずかしすぎる」
顔を手のひらで覆い、いおりが言った。
「あははは、なんか意外だけどいおりんらしいっちゃらしいかも」
「最初はわからなかったけど、最近はいおりって抜けてるなってたまに思うようになった」
かなめだけではなく、つくもも続けるのでいおりが恐る恐る質問する。
「つくもくん、ほんまに言ってる?」
「うん」
「まじか。本気で気をつけよ……!」
あっさり答えたつくもに、事実を突きつけられたような気持ちになり、いおりが気を引き締めようとする。
「そこまで気にしなくていいよー!いおりんらしくいてくれた方がいいって。無理しないでさ」
だが、そんないおりにかなめが言うので
「う、でもまじで気ぃ張ってへんとほんまにめちゃくちゃドジやで?あたし」
といおりがなぜか自信あり気に宣言する。
「これはまじ」
そんな姉の宣言に妹三人が深く頷く。
「ふふ、本人が気にしてるならしょうがないけどそこまで肩肘張り過ぎないで大丈夫だよ」
微笑みながらのぞみも言う。
「……じゃあ程々に気をつけることにする」
「うん、それがいいね」
いおりの言葉にのぞみが言った。




